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星は昴?ーそれでも僕は彼女を守りたかったー  作者: 村松希美


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第3部 交差する運命  第1章 危うい夜の遭遇




夜の空気は、昼よりも正直だった。

人の気配も、視線も、欲も――


隠そうとしても、どこか滲み出る。

鈴は、それを知っている。


(……今日も)

駅前の明かりの下。

いつもの場所。

いつもの時間。

足を止める。


(大丈夫)

そう思う。

思うことで、立っていられる。

通り過ぎる人の視線。

興味のないふりをしながら、どこかで値踏みするような目。


(見ない)

見返さない。

関わらない。

それが、ここでのルール。


「……君」

声がした。

低く、少し湿った声。

鈴は一瞬だけ、眉をひそめる。


(この声……)

振り向く。

見知らぬ男。

だが、雰囲気で分かる。


(だめなタイプ)

距離が近い。

目が笑っていない。


「少し話、いいかな?」

「……急いでるので」

鈴は即座に距離を取ろうとする。


しかし――

「そんなこと言わないでさ」

男の手が、腕に触れる。

その瞬間、全身の神経が一気に研ぎ澄まされる。


(やばい)

頭の中で警報が鳴る。

(引き際、間違えた)

一歩、後ろに下がる。

だが、男は距離を詰める。


「ちょっとだけだから」

力が、思ったより強い。


(……逃げなきゃ)

でも、ここで騒げば――

(面倒になる)


警察。

質問。

学校。

頭の中で一瞬にして計算が走る。


その隙。

男の指が、さらに強く腕を掴む。


「こっち来なよ」

(だめ――)

そのときだった。


「離せよ」

声が割って入った。

低く、でもはっきりした声。


鈴の腕を掴んでいた力が、一瞬だけ緩む。

振り向く。

そこに立っていたのは――


「……昴?」

見覚えのある顔。

同じ学校の制服。

どこか頼りなさそうで、いつも眠そうで――


(なんで……ここに)

昴は、男の腕を掴んでいた。

その手は、震えていなかった。

「その子、嫌がってるだろ」

声は強くない。

でも、逃げていない。


男が眉をひそめる。

「あ? なんだお前」

昴の喉が、ごくりと動く。


(怖い)

自分でも分かる。

足が少しだけ震えている。

心臓がうるさい。


(帰りたい)

頭のどこかで思う。

(関わるなって)


でも――

目の前の鈴。

ほんの一瞬、見えた表情。

あのとき、列車で見た笑顔とは違う。


(……違う)

怯えを押し殺している顔。

必死に、平気なふりをしている顔。


(あれは……)

胸の奥で、何かが弾ける。

(放っておけない)

理屈じゃない。


「離せ」

昴はもう一度言う。

今度は、少しだけ強く。


男が舌打ちする。

「ガキが……」

腕を振りほどこうとする。


その瞬間。

昴の中で、何かが切り替わる。


――スイッチ。

幼い頃。

棒を握って、犬に向かって振り回したあの感覚。

怖いのに、体が前に出る。

逃げたいのに、手が止まらない。


(今だ)

男の手首を、強く捻る。

バランスが崩れる。


「っ……!」

男の体がよろめく。

その隙に、鈴を引き寄せる。


「大丈夫か!」

声が出る。

自分でも驚くくらい、はっきりと。

鈴は一瞬、言葉を失う。


(……この人)

さっきまでの昴と、違う。

目が、違う。

逃げていない。


「……うん」

小さく頷く。

男が体勢を立て直す。

「ふざけんな……!」

怒りに顔を歪める。


周囲の視線が集まり始める。

ざわめき。

(まずい)

昴は判断する。

(ここで揉めたら長引く)

鈴の手を引く。


「行くぞ」

「え……」

「いいから!」

半ば強引に、走り出す。



夜の街を抜ける。

人混みをすり抜ける。

後ろは振り返らない。


しばらく走って。

人気の少ない路地に入ったところで、ようやく止まる。

二人とも、息が上がっていた。

「はぁ……っ、はぁ……」


沈黙。

数秒。

鈴が、昴を見る。

その視線には、戸惑いと――

わずかな、違和感。


(なんで……)

助けられた。

それは分かる。

でも。

(どうして、この人が?)


昴は、肩で息をしながら言う。

「……ああいうの、危ないだろ」

言葉は、少し不器用だった。

でも、真っ直ぐだった。


鈴は、ふっと笑う。

少しだけ、皮肉を混ぜて。

「慣れてるから」


その言葉に。

昴の表情が、止まる。


(慣れてる……?)

その一言が、胸に引っかかる。

「……慣れるなよ」

思わず、口に出る。


鈴の目が、少しだけ細くなる。

「簡単に言うね」

静かな声。

でも、その奥に棘がある。


「じゃあ、どうすればいいの?」

問い。

責めているわけではない。

でも、逃げ場のない言葉。

昴は、答えられない。

言葉が出ない。

「……」


沈黙。

鈴は目を逸らす。

「助けてくれて、ありがとう」

それは本音だった。

でも、それ以上は踏み込ませない線引きでもあった。


「でも――」

少しだけ間を置く。


「これは、私の問題だから」

その言葉は、はっきりしていた。

昴は何も言えない。

ただ、立ち尽くす。


鈴は背を向ける。

歩き出す。

夜の中へ。

一人で。


(……なんだよ、それ)

昴の胸に、もやもやしたものが残る。

助けたはずなのに。

何もできていない気がする。


でも。

(放っておけるかよ)

その背中を、見つめながら。

昴は初めて、はっきりと思った。


(守りたい)

あのとき列車で見た笑顔。

そして、さっきの顔。

どっちも、同じ人だ。


(あいつは……)

女神なんかじゃない。

でも。


(それでも)

足が、一歩前に出る。

物語は、ここで本当に動き始めた。







草稿を入力してAIが書きました。

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