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あなたの結婚式、私が最高に幸せにしてあげる  作者: 雨宮 弦


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25/30

第25話 結婚式をしますか

 十一月三日、二人から戻った書類には、二人の名前があった。

 私は事務室で、変更後の内容と、確認された版を照合した。四十五名、総額二百二十万円。選ばなかった追加の項目も、紙へ残してあった。

 水野主任が、会社の担当から来た支払いの確認を開いた。

 残額二百万円の入金は、確認されていた。既に支払われた申込金二十万円を合わせ、式の費用として、二百二十万円になる。



「この内容で、正式に進めます」


 主任が言った。

 私は頷き、協力店へ出す変更の連絡を開いた。


 二人が選び、会社が確認した仕事を、ここから仕上げる。



 その午後、最後の内容を合わせるため、二人が来た。

 美緒は変更後の花の写真を持っていた。悠真は友人へ依頼した短い挨拶の返事を、会社の窓口へ送ってあった。

 私と主任が向かいへ座ると、彼は先に、来る人へ話しました、と言った。


「内容を少し変えて、食事と、みんなで話す時間を多くするって」


 私は承知しました、と答えた。

 誰が何と反応したかを、ここで尋ねる必要はなかった。

 美緒は写真を机へ置いた。


「私も、写真のことを、前に話した人には伝えました。大きい背景は、やめるって」


 彼女は一度、下を向いた。


「気にしなくていいよって、言う人もいました。楽しみにしてるからって」


 私ははい、と聞いた。



 主任が内容の確認を始め、私は進行案を開いた。

 食事の時間。友人の挨拶。二人が席を回り、話す時間。基本の範囲で撮る写真と、映像に使う言葉。

 どれも、誰かが後で隙間へ入れればよい物にはしなかった。



「雨の場合は、こちらの案です」


 私は別の図を出した。

 庭へ出る写真の案を、屋内の窓側へ変える。客を先に庭へ出してから戻すのではなく、案内を変える時点を進行へ入れていた。

 花店と撮影側にも、置く物と通る道を確認してもらっていた。


「外へ出られなかったら、港は、あまり見えないんですね」


 美緒が言った。


「晴れた時と同じ見え方には、なりません。窓側で、皆様と写る案を、ご確認いただいています」


 私が答えると、彼女は図の道を指した。


「ここから、私たちが行く。戻る人は、こっち。前に見た物ですね」


「はい。こちらが、確認した版です」


 彼女は小さく頷いた。

 悠真が、雨だったら、それでお願いしますと言った。

 私は美緒にも確かめ、はい、という返事を聞いてから、確認済みの印を付けた。

 彼が一人で答えたので、二人の返事として進めることは、もうしなかった。


 残りの項目も、同じように確認した。

 何もかも、二人が同時に話すわけではない。片方が先に答えたら、もう片方がどう思うかを待った。

 時間は掛かったが、前の打合せのように、答えのない同じところを回り続けることは、少なかった。



 最後に、主任が、実施する意思と費用の確認を読み上げた。

 親の援助を含まない、二人が確認した資金で実施する。追加の費用が生じる依頼は、今の総額へ、当然入るものとして受けない。

 新たな変更が必要な場合は、会社の窓口を通し、可能な範囲と費用を改めて確認する。

 悠真も、美緒も、了承した。


「この内容で、結婚式を実施されますか」


 主任が尋ねた。

 悠真が、します、と答えた。

 美緒も少し間を置き、します、と返した。

 私はペンを持ったまま、二人を見た。

 あれだけ言い合って、説明が食い違って、それでも今ここで式を選ぶ。

 私なら、同じ選択をしないと思った。

 だからといって、この返事を、なかったことにはできなかった。

 私は二人から受けた意思として、記録した。


 憧れの写真を並べていた時より、二人が何をするかは、はっきりしていた。

 それが、この二人の結婚だった。

 私の結婚式は、もう、どこにも混ざっていなかった。



 見送りの前、悠真が、当日はよろしくお願いします、と頭を下げた。

 美緒も同じようにしてから、少しだけ私を見た。


「きれいに、したいです。今の方でも」


 彼女は言った。

 私は大丈夫、絶対に一番幸せに見せるから、と返しかけた。

 以前なら、頼まれた物以上に、相手を安心させる言葉を足しただろう。


「確認した案で、準備を進めます。当日、どこで何をするかも、またご案内します」


 私は答えた。


 美緒は頷き、悠真と一緒に帰った。



 会社から協力店と各担当へ、正式な連絡を出した。

 小野さんは、花の範囲と搬入する時刻を確かめた。紙を作る店は、確認された原稿の最終の受渡しを示した。料理、写真、映像、それぞれに、次の返事があった。

 私はその予定を、一枚の進行へ合わせていった。

 自分が呼べば、誰かが夜中まで動いてくれるとは、考えなかった。

 返事が合わないところは、会社の担当と、時間を組み直した。


 高瀬さんからも、変更後の範囲を受け取ったと連絡があった。

 私は当日使う確認用の図と、撮影する位置の版をそろえて送った。

 返事の最後に、当日、始まる前に少しお話しできる時間があればと、書き加えた。

 何についてかを迷い、先日の話の続きを、短く、とした。


 必要な準備が終わったあと、難しければ別の日に話すつもりだった。


 彼からは、準備を終えてからなら、と返ってきた。

 私はその返事を、うれしく読んだ。

 次に会う時、どちらも同じ席で黙っていればよい、とは思われていなかった。



 帰る前、私は最初の企画書を開いた。

 三月に出した物と、今、実施する案を並べる。

 全部が同じではなかった。店の手間を聞き、会場で置ける場所を確かめ、二人の選ぶ範囲へ変えてきた。

 実施できれば、自分の考えた物を、取り戻せると思っていた。

 でも、三月の紙を、そのまま現実にしたいわけではなくなっていた。

 ここまで、ほかの人と直してきた案を、仕事として仕上げたかった。


 主任が、当日の現場の責任を持つスタッフへ、共有する内容を確かめた。

 私は自分の担当と、ほかの人へ渡す役割を読み上げた。

 当日の全てを私が決めるわけではない。見えたことを伝え、判断を受け、決まった担当が動く。

 その中で、自分ができることを、準備しておく。

 最終の連絡を送る前に、古い進行案へ、使用しない版と印を付けた。当日の机に違う予定が二枚並び、スタッフが迷うことは、ここで減らせた。


 それから一週間後、私的な精算を相談している窓口から、双方が了承した文面が届いた。整理する内容と金額、支払う期日を、別の経路で確認した物だった。

 私は自分の控えを確かめ、式の書類とは別に保管した。式を続ける返事の代わりに、精算の返答をもらったわけではなかった。

 その確認を終えてから、手帳の十一月十六日を開いた。

 相手が後悔する日、と書いたことは、一度もなかった。

 でも、頭の中では、そういう日になればよいと望んだことがあった。

 今日は、式の開始前に確かめる物を、順に書いた。

 最後の行に、持ち帰る物を確認、と入れた。

 終わったあと、私は自分の仕事を持って、帰る。

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