傭兵認可証
都市ロセウス。連れてきてくれたレヴィア曰く、最前線の街の一つ。
見上げる外壁は、建物の高さで言うと十階建てに匹敵するんじゃないかというほどの、常識外れの高さを誇る。
正直、そこまで高い外壁の必要性や有用性は大いに疑問だったが――この世界における敵、つまりモンスターの中には空中を飛行するものや、下手な外壁なんかよりも巨大なものがいるのだとか。
そういった敵に対応するために、外壁は高く、堅牢な物を必要とする。
その外壁の高さに比例する巨大な門は、開け閉めの困難さから、平素は開放されっぱなしになっている。
ただ、門の脇の詰め所のような建物付近に、当然のように武装した集団がたむろしている様子が見て取れた。
街の出入り口防衛を担う傭兵たち。
加えて、巨大な牛のような動物の姿もある。有事の際、門を閉めるために働かせる存在らしい。
……緑の光をまとっていることから、木属性による強化を使うみたいだな。
聞くところによれば、単なる動物ではなく、歴とした妖精種だとか。
外部に対する、徹底した防衛思想が表れている都市という印象を受けた。
すべては最前線の名が示す通り、近場に迷宮が山ほど存在することに由来する。
俺がレヴィアに拾われた迷宮も、迷宮群の中の一つ。
荷車でのんびりと目指しても、数時間とかからない距離に、そんな迷宮がいくつもある。とんでもない危険地帯だ。
「着いたわね。お疲れ様」
「はあぁ……やれやれ、やっと着いたニャ」
「っ」
驚いた。
荷車に乗ったまま門を抜けたばかりのところで、いきなりレヴィアが腹話術を始めた……わけではない。
レヴィアの声はしっかりと隣から。後に続いたもう一つ、子供のように幼げで高い声は、前方から。
はっきりと言葉を発したのは、ここまで荷車を引いてきた、大きな猫のような四足動物だ。
真っ黒なその動物は、自力で荷車と繋がる縄を解き、俺とレヴィアが座っている荷台部に寄ってきた。
「ほらレヴィア、もうロセウスに着いたニャ。はやくお金を払うニャ」
「わかってるわよ。ちょっと待ちなさい」
「急ぐニャ。次の仕事が待ってるニャ。あと、そっちのデカブツドワーフの兄さんは重かったから、色を付けてほしいニャ!」
「ちゃっかりしてるわね……」
前足で荷台を叩きながら、金をせびる大きな黒猫の姿は、なかなか斬新だ。割増要求までしてきやがる。
レヴィアが苦笑しながら幾ばくかの硬貨を差し出すと、事も無げにそれを受け取る――黒髪の少女。
黒髪に、黒い衣装。銀の瞳だけが黒一色の中で異彩を放ち、喜色に輝いて、受け取った硬貨を数えている。
「毎度ありニャー! さあ、さっさと荷台から降りるニャ。次の仕事に行かなくちゃいけないんだニャ」
「リミット」
「……ああ」
驚くことが続くが、それに反応する暇もなく、レヴィアに促されるままに荷台を降りる。
揃って地面に足を下ろした時には、黒い少女の姿は既に無い。
大きな黒猫が、今しがた入ってきた門の方へ、荷車を引いて走っていく後ろ姿だけが見えた。
「今のは……?」
「猫の妖精よ。ああやって猫車をやったり、露店を開いたりしてお金を稼いでるのをよく見るわね」
「妖精、か」
馬車でも牛車でもなく、猫車、ね。
あんな妖精もいるんだな。門のところにいた巨大な牛といい、いろんな妖精がいるものだ。
妖精種。NPCの代名詞でもある。フォース曰く、このゲームの世界の住人たち。
連中は俺たち人間と比べて遜色ない感情を表現し、反応を見せ、活動している。
情報としては知っていたが、予想以上だ。初めてこのゲームの世界に足を踏み入れた時も、俺はこんな思いを抱いたのだろうか。
妖精種については、そう多くを学んでいない。
非常に多くの種類が存在する上、フォースや仮想空間に公開されている情報ですら、その網羅には至っていなかった。
一応、絶対に敵対してはいけない妖精種、というやつだけは覚えてきたが。
「ん。リミット、あまり驚いてないわね」
レヴィアが何故か少し不満といった様子で、覗き込むようにこちらを見上げてきた。
どうして不満げなのかは謎だ。
「十分驚いてるぞ」
「うそね。予想通り、みたいな顔してるわ」
そんな顔をしてるつもりはない。狼の顔だから分からないだけじゃないのか?
「なんか悔しい……もっと驚くような物を見せてあげるわ。こっちっ」
「あ、おい」
言うが早いか、猫耳娘が俺の手を引いて歩き出す。
門を抜けたところから、真っ直ぐに伸びる大通りを、早足に進んでいく。
ファンタジーの街並みを割るその幅広い街路で、様々な種族とすれ違った。
プレイヤーが扮する人間種、それに酷似した妖精種も多いという話を思い出す。
鬼人が持つ角。
森人や小人に見られる尖った耳。
獣人の獣耳や尻尾。
この辺りは人間種に限らず、多くの妖精種にもありふれた特徴だ。
つまり、傍目に見る限りでは、プレイヤーとNPCの区別は非常につきにくい。
会話をすれば分かるものの――会話をしても、種族的にNPCに属すると判るだけとも言える。異常なゲームだ。
「考えすぎるな、か」
ゲームを始める前、先達たるパートナー殿に言われたことを思い出す。
リソースの概念を無視したようなゲーム。何か大きな理由と理屈があるのは確かだろうが、今のところはその理屈の検討なんてまるで思い至らない。
考え過ぎず、割り切って楽しむことも大事だと、フォースは笑って言っていた。
今なら、言っていた意味がよくわかる。
どの道、一傭兵が考えるべきことでもないだろうしな。かと言って、ゲームを楽しみに来たというわけでもないが。
「何か言った、リミット?」
「どこに向かってるんだろうなって思っただけだ」
「もうすぐそこよ――っと、着いたわ」
レヴィアが立ち止まる。のに合わせて、手を引かれていた俺も止まる。
辿り着いたのは、十字路だ。真っ直ぐの大通りに対して、もう一つの大きな道が交差している。
広場のような場と化した中央には、噴水が設置されている。
――随分と、騒がしい。
道というのは、人や乗り物が通るための物だったはずだが、この場所はどうやら違うらしい。
屋台のような出店が開かれていたり、路面に布を敷いて品物を並べていたり。
左右に伸びる道を覗けば、遥か先までなにがしかの店が連なっている。それらの店を巡るように、多くの人が行き交う姿もある。
買い物をしたり、立ち話をしたり……所によっては諍いが起きていたり。
店の数も、集まっている人々の数も尋常じゃない。騒がしくもなるというものだ。
「武器の製作を頼みたい! 金属性で自信があるなら、種族不問!」
「霊光石採掘任務パーティでーす。場所はイーロ鉱山。期間は一週間で、あと二名募集中~」
「ギルド【くろいはおと】ですっ。メンバー募集中の、アットホームなギルドですっ!」
「安いよー、とにかく安いよー、見てってくれー」
「おい、俺のズボンにアイスぶつけた奴どこいった!?」
売り込みや呼び込みの声も、絶えず飛び交っている。
さながら祭り会場だ。
「すごい活気だな」
そんな独り言が、誰にも届くことなく掻き消えてしまいそうなほどの賑やかさ。
「最前線の街のマーケットはどこもこんな感じよ。驚いた?」
すぐ傍に立つレヴィアは、俺の呟きを拾い上げたようで、機嫌良さそうに頭の猫耳や尻尾を揺らす。
マーケット。オンラインゲームにおいて、プレイヤーが構築する取引市場のことだ。
本来はプレイヤー間の取引のみで成立する市場であるが……このゲームの場合、売り手にも買い手にも平然とNPCが混じっていると聞いている。
ただでさえプレイヤー人口が多いゲームだが、NPCがプレイヤーと同等の活動をすることも、この賑やかさと活気の要因だろう。
「ちなみに、私たちの目的地の一つはあそこね」
レヴィアは、マーケットが展開されている十字路の更に向こう側を指し示す。
広い十字路の向こうには、大通りの続きが伸びている。その遥か先の突き当り、行き止まりのようにそびえる建物が見えた。
街の外壁ほどとは言わないが、遠目にもよく見える、十分に大きな石造りの建物だ……まさか、あれが占術師の館とは言わないだろう。とすれば、もう一つの目的地――傭兵協会の支部に違いない。
しかし、難儀な場所だな。
「この雑踏を掻き分けていくのか?」
「まさか。こっちに良い道があるの」
マーケット広場に背を向け、今まで進んできた大通りを戻り始めたレヴィアに続く。
少し戻ったところで、建物と建物の間に伸びる小道へと進んでいった。
人気が皆無とは言わないが、かなり少ない。二人並べばいっぱいになりそうな程度の幅の道だから無理もないが。
先導するレヴィアに付き従うまま、何度か曲がったり、ひたすら真っ直ぐ進んだり。
それなりに歩いたと思ったところで、細道が大きな通りに合流した。
喧騒が遠くに聞こえる。左側に視線を向けると、かなり遠くに店が連なり、人が群れる光景が映る。さっき見たマーケット広場だ
どうやら迂回に成功したみたいだな。
「近道になるし、このまま行きましょっ」
レヴィアが満足気に俺を振り返りながら、通りの反対側へ駆ける。再び建物の隙間に潜り込むように、裏道へと入っていく。
「街に詳しいんだな」
その後へ続きながら、前を往くレヴィアに声をかける。
マーケットも見慣れているようだったし、いわゆるベテランなプレイヤーなのは間違いないだろう。
加えて、こんな裏道まで知っているのは、この街のことをよく知っている証拠だ。
「ここに来てから、半年近くになるわ。迷宮攻略しようって決めてから、ずっとこの街でやってきたの……家も買っちゃったしね」
少し照れたような響きの返答。半年と言えば、このゲームが正式サービスを開始した頃になる。
ということは、レヴィアもうちのパートナー殿と同じく、サービスが始まった頃からこのゲームをプレイしているプレイヤーか。
それにしても、何気ない言葉だったが、重視すべき点が一つ。
住居という代物は、ゲーム内における高額な買い物の代表格だったはずだ。
大半のプレイヤーは金を払って宿に泊まったり、賃貸を利用したりする。野宿生活を営む剛の者もいるという話だが……。
とにかく、自宅なんてものを買えるプレイヤーは非常に少ない。
図らずも、レヴィアが相当な上位プレイヤーであることが証明されたな。
もっとも、顔を合わせた時から、決して弱くはないと思っていた。
このゲームのアバターは性能的に、本来の仮想空間で動かす電脳活動体にかなり近い。
おかげで、ある程度の強さや能力が推し量れる。そして、レヴィアはなかなかのプレイヤーだと、俺の感覚が告げている。
あくまで感覚的なものに過ぎないが、早々大きくは外れない。
「そういえば、とりあえず傭兵協会の支部に向かってるけど、よかった? 先に占術師のところに行きたいなら、道を変えるけど?」
「平気だ。どうせ両方行かなきゃならんし、どちらから行ってもそう変わらないだろ?」
「それもそっか。じゃあ――まずは傭兵協会からね」
ちょうど細道が終わり、再び日当たりの良い大きな街路に出た。レヴィアがこちらを振り返って笑う。
いつの間にか、すぐ近くまで来ていたらしい。街路を挟んだすぐ向かいに、巨大な建造物が嫌でも目に入る。
近づいてみると、まるで堅牢な要塞のような建物だ。
石垣に長めの階段が設けられた、高さのある立地。攻撃手を配置できそうな尖塔。
正門は開放こそされているが、かなり部厚い造りになっていることが判る。
傭兵協会の支部。名前よりだいぶ剣呑としているな。
「戦争が起きた時には、役に立ちそうな建物だな」
「あながち間違っていないわね」
間近にして抱いた素直な感想を口にすると、レヴィアが同意する。
「周囲は迷宮だらけだもの。街の外壁もそのための備えよ。モンスターに攻め込まれることや籠城も視野に入れているわ」
レヴィアは得意げに言うが……籠城とは、外部からの救援軍があってこそ有効に機能する作戦だろう?
言いそうになったが、止めた。
――そうか。籠城して助けを求めた時、援軍が来るんだな。それはまた、随分と幸せな戦場だ。
「さ、早く傭兵認可証を作りにいきましょ。その次は、占術師のところね」
レヴィアが急かしてくるのに苦笑しながら、要塞じみた支部に足を向ける。
開放されている出入口を、プレイヤーともNPCともつかない多数の傭兵が出入りしている。
どいつもこいつも武装している辺り、物騒なことだ。俺たちもその流れに交じって、協会支部の中へと入った。
広々としたロビーに、右往左往する人の数は多い。
壁一面に多くの紙面が貼られている場所には、特に人が集まっている。
仕事の依頼や、傭兵団の人員募集等が張り出されているのだろう。
いくつか設けられている受付にも、結構な人数が並んでいて順番待ちだ。
内装といい雰囲気といい、情報通り。事前に学んだ知識に従って、設けられた受付カウンター、その一番左へ目を向ける。
その他の受付と比較するとだいぶ人が少なめのそこは、読めはしないのに理解はできる不可思議な文字で、新規加入はこちら、と書かれた札が掲げられてる。
「じゃあ、いってくる」
「ええ、ここで待ってるわ」
レヴィアに見送られて、一番左の列に並ぶ。
俺の前に並んでいた数人があっという間に捌け、順番はすぐに回ってきた。
カウンターの中で、白い制服の受付嬢が微笑んでいる。
「傭兵協会へようこそ。協会への新規加入でお間違いないですか?」
「ああ」
占術師に自身の適正属性を教えてもらうこと。傭兵協会に傭兵として加入登録すること。
このゲームを始めるにあたって、最初に行うべきとされている二つの行動だ。
その一つにようやく漕ぎつけた。
「では、こちらに手をお入れください」
用紙の記入などというありがちな物は無く。
受付嬢が持ち出したのは、三本足の台座に、銀色の球体が設置された謎の装置。
指し示されたのは、その球体。言われるがまま手を出すと、抵抗どころか触れた感触すらないままに、手首の辺りまでが球体に飲み込まれる。
ん、これは……?
数秒くらいか。いつの間にか、差し入れた手の中に、何かを握り込んだ感触がある。
受付嬢が笑顔のまま言う。
「はい、登録完了です。手をお出しください」
言われて抜き出すと、手を突っ込んだ時には無かったものが、握られていた。
黒いカードだ。手のひらに握り込める程度の大きさで、かすかに透き通っている。
文字は書かれていないが、銀色の模様が描かれている。
大円と、その線上に不可思議な九つのマークが等間隔に並んだ模様。
「ご登録ありがとうございます。リミット様はこれより、傭兵協会所属の正式な傭兵として認可されました。カードはその証明書となります。初めてご登録された方には、協会のシステムについてご説明さしあげていますが、お聞きになりますか?」
既に知っている内容だ。が、調査以降に仕様変更等で、情報に変化があってもおかしくない。
「そうだな。聞かせてくれ」
「かしこまりました」
受付嬢が一礼して、俺が持っているのと同じような黒いカードを取り出した。
そのカードを示しながら、説明を始める。
「傭兵認可証は協会に所属する傭兵の身分を証明するカードです。これを以て協会に所属する傭兵となった皆さまには、協会が斡旋するお仕事を請ける権利に加え、傭兵団の作成登録権や参加権なども獲得します」
この身の証というのは、意外に重要な役目を果たす。
傭兵協会はシステム的に用意され、目の前の受付嬢含めNPCが運営している組織だ。
そこで協会に所属しない傭兵……特にプレイヤーは、いわゆるモグリとしての扱いを受け――NPCから信用されにくくなるらしい。よほどの事情が無ければ、登録しない理由はない。
そして、傭兵団とは、読んで字の如く。協会に所属する傭兵が徒党を組み、それを協会に登録することで認められる集団のことだ。プレイヤー間では傭兵団という呼び名で通っている。
「また、このカードを利用したシステム――通称ギルドシステムにおきましては、カードを通して皆様の協会に対する貢献度を測定する機能が存在します。この貢献度によって、協会は傭兵の皆様の階級を定めさせていただいております。階級は、カードの色が変化することで一目に分かる仕様となっているため、情報更新等で協会支部を訪れる必要はございません」
貢献度とはまた随分と曖昧な表現だが、分かりやすい貢献と言えば、モンスターを倒し、迷宮を叩き潰すことだ。
ただ、それだけじゃない。まったく別の行為や行動でも、貢献度が上昇するといった事象も確認されている。身近な例で言えば、レヴィアが俺を助けたことでも、貢献度が上昇したことだろう。
今しがた作った俺の傭兵認可証の色は黒。言うまでもなく一番下の階級にあたる。これが、貢献度を稼いで一つ上がると、銅。もう一つ上がると銀、といった具合に勝手に変化していく。
「階級が上がることのメリットは何がある?」
「特定の階級に至った方だけに斡旋するお仕事の話があります。また、大規模な迷宮攻略作戦等は、より高い階級の傭兵に指揮をお任せします。その他階級に応じて、協会から様々なサービスを提供したり、販売している道具の割引もあったりします」
何か変化があったかもしれないと聞いてみたが、やはり事前に収集した情報から変わり映えはしないな。
必要なら階級を上げる作業を行うことも考えていたが、この分だと不要だ。登録だけしておけば十分だろう。
「分かった。参考になった」
「ご登録ありがとうございました。お仕事を請けていただく場合は、別の受付をお訪ねください」
受付嬢のそんな言葉とお辞儀を受けつつ、ロビーの片隅で待っているレヴィアのもとへ戻った。
俺が手の中で弄んでいる黒いカードを見て、レヴィアが耳を震わせつつ目を細めている。
「なんだ?」
「いえ……本当に初心者だったんだなーって」
「そう言っただろ?」
しかし、レヴィアはじとっとした視線で俺を見上げる。
「改めて考えてもおかしいわよね……? 協会に登録もしない、占術師にも会わないまま迷宮に行くなんて……いったい何をしようとしてたのよ?」
返答に困る追及だな。道中ではうまい事うやむやになっていた話が再燃してしまった。
まさか管理AIに嫌われてるなんてことや、ましてや仕事の話なんかできるはずもない。
……止む無し。あまり気は進まないが、誤魔化しの一手だ。
「ま、力試しの一環だ。ゲームは慣れてないが、こう見えて電脳活動体の操作には多少自信があってな」
「そうだったの。でも、他のゲームならともかく、このゲームじゃそういう無茶は通らないんだからね?」
「あの様だからな。身に染みたさ」
肩をすくめて見せると、ようやく懐疑の視線が微笑みに変わる。
「大丈夫よ、せっかくだから迷宮攻略の心得なんかも教えてあげるわ。でも、その前に、メインイベントの時間ね」
「ああ」
なんとか誤魔化せたらしい。一安心だ。
それにしても、メインイベント、か。言いえて妙だな。
普通にゲームをスタートしたプレイヤーなら即座に取り掛かっているはずの行動だというのに。
……どこぞの精霊のせいで、酷い遠回りをさせられた。
やれやれだ。フォースとの合流も含め、やるべきことは多いというのに。
ただ、レヴィアというプレイヤーと縁を結べたことは、精霊の横やりが無ければ成立していなかった。
そこだけは、感謝してもいいかもしれない。
「さ、占術師のところへいきましょ」
なぜか俺よりも楽しみにしているように見えるレヴィアが急かしてくる。
今にも駆け出さんばかりに先を往く少女に、苦笑しながら続いて、傭兵協会の支部を後にした。




