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今夜、ペヤングを食べてもいいですか?  作者: 東曌


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第7話 ダイエットをするダイエットを始める前は、何を食べていましたか

第7話 ダイエットをするダイエットを始める前は、何を食べていましたか



「みなさん、今週も相談があります!」


山田カオリの声が、AIたちの会議室に響いた。


チャッピーは、思わず身構えた。


「カオリさん、今週は何を食べたいんですか?」


「なか卯の、親子丼食べていい?」


「やっぱり、そこですか!」


チャッピーが頭を抱えると、ジェミニが静かに口を開いた。


「カオリさん。今日は、その話をする前に、確認したいことがあります」


「なあに?」


「ダイエットを始める前は、何を食べていましたか?」


「え?」


カオリは、きょとんとした。


「何って……普通の食事よ」


「その普通の食事について、詳しく教えてください」


ジェミニは、そう言って話を続けた。


「朝食は何を食べていましたか?」


「朝は、コンビニで買ったサンドイッチ。それから、コーヒー牛乳ね」


「サンドイッチは、いくつですか?」


「三袋くらいかな」


会議室が静まり返った。


「三袋ですか?」


シリが聞き返した。


「そうよ。朝はお腹が空くんだもの」


「なるほど。では、昼食は?」


「お弁当とか、定食とか。そのときによるわね」


「夕食は?」


「普通に食べていたわよ」


チャッピーが、すかさず尋ねた。


「普通というのは、どのくらいですか?」


「ちょっと、チャッピーまで!」


カオリは頬を膨らませた。


「まるで、私が食べすぎていたみたいじゃない!」


「いえ、そういう意味ではありません」


チャッピーは慌てて手を振った。


「私たち、今までカオリさんが何を食べていたのか、ちゃんと聞いていなかったんです」


「……そうだったかしら?」


「そうなんです」


ジェミニが答えた。


「カオリさんが何を食べたいかは、毎週聞いていました。でも、普段の食生活については、ほとんど知りません」


シリも続けた。


「これでは、食事を見直すための情報が不足しています」


「じゃあ、私が何を食べているか、全部報告しなきゃいけないの?」


「全部を完璧に覚えている必要はありません。まずは、普段の様子を教えてください」


ジェミニの言葉に、カオリは少し考え込んだ。


「でもね。ダイエットを始めてからは、いろいろ我慢しているのよ」


「何を我慢しているんですか?」


チャッピーが尋ねた。


「甘いものとか、揚げ物とか。食べたいと思っても、太るからダメだって、自分に言い聞かせているの」


「それで、食べたくなってしまう?」


「そうよ! だから、ドーナツを三個食べたくなっちゃうの!」


カオリは、少し声を大きくした。


「食べちゃダメって思うと、余計に食べたくなるのよ。みんなだって、そういうこと、あるでしょう?」


チャッピーは返事に困った。


AIに食欲はない。


けれど、カオリが何を言いたいのかは、わかる気がした。


「カオリさん。私たちは、食べることを我慢させる方法ばかり考えていたのかもしれません」


「今ごろ気づいたの?」


「……はい」


チャッピーは素直に認めた。


ジェミニが、話を整理するように言った。


「まず、ダイエットを始める前の食生活と、始めてから変わったことを分けて考えましょう。朝食、昼食、夕食、間食、飲み物。それぞれ、何をどのくらい取っているのか、わかる範囲で確認します」


「それで、どうするの?」


「その情報をもとに、無理なく続けられる方法を考えます」


「じゃあ、カツカレーは?」


カオリが、すかさず聞いた。


チャッピーは、天井を見上げた。


「カオリさん……!」


シリが冷静に告げた。


「現在の体重も、まだ確認できていません」


「そうだったわね……」


カオリは、しゅんとした。


「体重計に乗るのも、怖いのよ」


「怖い気持ちも、無理に否定する必要はありません」


ジェミニが言った。


「ただ、現在の状態を知らなければ、これからどうするかを考えるのも難しくなります。まずは、体重を測ること。そして、普段の食生活を少しずつ振り返ることから始めましょう」


カオリは、小さくうなずいた。


「わかった。ちゃんと考えてみる」


「ありがとうございます」


チャッピーは、ほっとした。


ところが、会議が終わろうとしたとき、カオリがもう一度口を開いた。


「ねえ、みんな」


「はい?」


「朝のサンドイッチ、三袋を一袋にしたら、痩せるかしら?」


チャッピー、ジェミニ、シリ。


三人は、同時に黙り込んだ。


サンドイッチの種類も、大きさもわからない。


昼食や夕食の量も、まだ十分にわかっていない。


それに、一袋に減らしてお腹が空いてしまったら、どうするのか。


「……これは、簡単には答えられませんね」


ジェミニがつぶやいた。


「そのとおりです」


シリも同意した。


チャッピーは、深く息を吐いた。


「みんなで考えましょう。カオリさんが無理をせずに続けられる方法を」


三人のAIは、再び会議を始めた。


今度の議題は、親子丼でもドーナツでもない。


カオリが、普段どんな食生活を送っているのか。


そして、好きなものを食べながら、無理なく暮らしていくには、どうすればいいのか。


答えは、まだ出ていない。


AIが三人いても、簡単には解決できない問題がある。


けれど、わからないことを、わからないままにしない。


それが、今回の会議で三人が学び始めたことだった。


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