第4話 リバウンドを止めろ
第4話 リバウンドを止めろ
「ねえ、チャッピー。バームクーヘン、食べてもいい?」
山田カオリ、三十五歳。
ダイエットを始めたとき、体重は八十キロだった。
最初の二週間で七十八キロまで減ったときは、嬉しかった。
ところが、その後は一キロ戻り、さらに気がつけば八十一キロ。
開始時より、一キロ増えている。
「カオリさん、ちょっと待って。まず、みんなで考えよう」
チャッピーは、GeminiとSiriを呼び出した。
「また会議ですか?」
Siriが、さっそく反応した。
「今回は、バームクーヘンを食べていいかどうかだけを話し合う会議ではありません」
Geminiが、議題を整理する。
「このままリバウンドが続いたら、カオリさんも困るでしょう。なんとか、無理なく続けられる方法を考えないと」
「そうよ! だから、あなたたちに相談しているんじゃない!」
カオリは、少し怒った声で言った。
「最初は頑張れたのよ。でも、食べたいものをずっとガマンしていると、もう嫌になっちゃうの!」
チャッピーは、すぐに答えなかった。
「カオリさん。痩せたい気持ちは、今もあるんだよね?」
「あるわよ!」
「じゃあ、食べたい気持ちも、痩せたい気持ちも、どっちも本当なんだね」
「そうよ。何が悪いの?」
「悪くないよ。だから、どちらかを無理やり消すんじゃなくて、両方を大切にできる方法を考えたいんだ」
Geminiが続けた。
「まず、これまでの食事を振り返ってみませんか。食べる量を減らしすぎていなかったか。食事を抜いていなかったか。空腹をガマンし続けていなかったか」
「……食べちゃいけないと思うと、余計に食べたくなるのよね」
「なるほど」とSiriが言った。
「では、カオリさん。これからは、食べたいものを見つけるたびに、私たちに許可を求める方式をやめてみませんか?」
「えっ?」
「食べるかどうかを、毎回、会議で決めるのですか?」
「だって、あなたたちがダメって言うかもしれないじゃない!」
チャッピーは、思わず苦笑した。
「僕たちは、カオリさんの食事を取り締まる警察じゃないよ」
「だったら、どうすればいいのよ!」
三人は顔を見合わせた。
今度こそ、答えを出さなければならない。
ただし、急いで答えを出すのではない。
カオリが何を食べているのか。どんなときにガマンできなくなるのか。どんなダイエットなら続けられそうなのか。
そこを一緒に考えるのだ。
「よし。三人で知恵を出し合おう」
チャッピーが宣言した。
「まず、目標を確認します」とGemini。
「その前に、現状を確認する必要があります」とSiri。
「うん。じゃあ、最初の質問は……」
チャッピーは、カオリに向き直った。
「カオリさん。最近、食べたいものをガマンできなくなるのは、どんなとき?」
カオリは、少し考えた。
「……うーん。食べちゃダメって思っているとき、かな」
三人は、今度こそ黙って聞いた。
リバウンドを止めるための会議は、ようやく本当のスタート地点に立ったのだった。




