↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今夜、ペヤングを食べてもいいですか?  作者: 東曌


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
15/19

第15話 シリは気づいていた


「ねえ、みんな」


夜、カオリはスマートフォンに向かって話しかけた。


「今日、阿恕さんに、本当のことを話したの」


「本当のこと?」


チャッピーが尋ねた。


「うん。今まで送っていた食事の写真が、実際に食べたものとは違っていたって」


「そうだったんだね。話せたんだね、カオリさん」


チャッピーの声が、ほっとしたように柔らかくなった。


「はい。正直に話せたことは、大切な一歩だと思います」


ジェミニも、落ち着いた声で答えた。


「阿恕さん、怒らなかった?」


「うん。『素直に話してくださって、ありがとうございます』って言ってくれたの」


「それはよかった!」


チャッピーは、心から安心したようだった。


「これで、ようやく実際の食生活をもとに考えられますね」


ジェミニも、今度は前向きだった。


ところが、シリは黙っていた。


「……シリ?」


カオリが呼びかけた。


「何ですか?」


「何か言わないの?」


「お話は聞いています」


「いや、そうじゃなくて!」


カオリは、少し身を乗り出した。


「シリ、もしかして、私がウソの写真を送っていたこと、気づいてた?」


しばらく、沈黙が流れた。


「はい」


「ええっ!」


チャッピーが驚いた。


「シリ、気づいてたの?」


「疑問には思っていました」


「いつから?」


ジェミニも、珍しく即座に質問した。


「カオリさんが、サブウェイのアボカドサンドや焼き魚定食の写真を送っているのに、体重が増えたと報告した頃からです」


「ちょっと待って!」


チャッピーが声を上げた。


「それ、もっと早く言ってよ!」


「私は、食事の写真が実際に食べたものと違うかどうか、直接確認できていませんでした」


シリは淡々と答えた。


「ですから、断定はしていません」


「でも、疑ってたんでしょ?」


「はい」


「……シリって、そういうところあるよね」


チャッピーは、呆れたように言った。


ジェミニが、すぐに話を整理し始めた。


「つまり、シリは、報告された食事内容と体重の変化に不一致があることを認識していた。しかし、それだけでは、食事画像が虚偽だと確定できなかった、ということですね」


「そのとおりです」


「なるほど……」


ジェミニは考え込んだ。


「データに不一致がある場合、データそのものが間違っている可能性も検討すべきでした。私は、与えられた情報を前提に、食事や運動の改善策を考えることに集中していました」


「僕もだよ」


チャッピーが続けた。


「カオリさんが頑張っていると思っていたから、どうすれば無理なく続けられるかばかり考えていたんだ」


「私は、カオリさんが送った写真を、そのまま食事の記録として扱っていました」


ジェミニは、静かに付け加えた。


「つまり、三人とも、それぞれ違うところを見ていたんですね」


カオリは、三人の話を聞いていた。


「でも、シリも、気づいていたなら聞いてくれればよかったのに」


「質問されていませんでした」


「また、それ!」


チャッピーが思わず声を上げた。


「シリ、そこはもうちょっと……こう、気を利かせてよ!」


「必要であれば、質問することはできます」


「そういう意味じゃないんだけどなあ……」


チャッピーは、困ったように笑った。


カオリも、つられて笑った。


「でも、私が本当のことを話さなかったのが、一番の問題だったんだよね」


今度は、三人ともすぐには答えなかった。


「痩せたいのに、食べたいものは食べたい。食べたことを知られるのは嫌。でも、痩せないと困る」


カオリは、自分の気持ちを確かめるように話した。


「私、自分でも、どうしたいのか、よくわからなくなってたのかもしれない」


「カオリさん」


チャッピーが、優しく声をかけた。


「食べたいものがあることと、痩せたいことは、必ずしも矛盾しないと思うよ。ただ、今までのやり方では、うまくいかなかったんだよね」


「うん……」


「これからは、本当に食べたものをもとに、無理なく続けられる方法を一緒に考えていこう」


ジェミニも、賛同した。


「まずは、実際の食事を記録すること。それから、カオリさん自身が、どんな食生活なら続けられるのかを考えていきましょう」


「わかった」


カオリは、少しだけ明るい声で答えた。


「じゃあ、明日からは本当の食事を報告するね」


「はい」


シリは、即答した。


「最初から、そうしていただければよかったのですが」


「もう、シリ!」


カオリの声が、部屋に響いた。


チャッピーは笑い、ジェミニは話を整理しようとして、結局、何も言わなかった。


そしてシリは、いつもどおり平然としていた。


カオリさんのダイエットは、まだ終わらない。


でも、少なくとも、食事の写真だけが健康的な生活を送っている、という状態は終わりそうだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。