第13話 パーソナルジムに入ったほうがいいかな
「ねえ、チャッピー。ジェミニ。シリ」
夜、カオリはスマートフォンに向かって声をかけた。
「私、パーソナルジムに入ったほうがいいと思う?」
三人のAIは、そろって反応した。
チャッピーが、まず口を開いた。
「パーソナルジム? いいんじゃないかな。専門のトレーナーさんがついてくれれば、運動の仕方も教えてもらえるし、ひとりでダイエットするより心強いかもしれないね」
「待ってください」
ジェミニが割って入った。
「入会を検討するなら、まず目的を明確にする必要があります。カオリさんは、これまで食事制限や体重管理を試みてきました。しかし、継続が難しくなっているようです。運動指導を受けることが、現在の課題の解決につながるか、検討すべきです」
「つまり?」
カオリが尋ねた。
「入会すれば痩せる、と決まっているわけではありません」
「そんなこと、わかってるわよ」
カオリは、少しむっとした。
「でも、自分ひとりだと、どうしても食べちゃうのよ。誰かに管理してもらえば、今度こそ頑張れるかなって」
チャッピーは、うなずくように答えた。
「うん。ひとりで頑張るのが難しいなら、誰かに伴走してもらうのは、ひとつの方法だと思うよ」
「伴走、ねえ」
カオリは考え込んだ。
「でも、毎日食べたものを報告しなきゃいけないんでしょう?」
「ジムによって違います。食事指導の内容や報告方法、料金、契約期間などを確認する必要があります」
ジェミニは、いつもの調子で説明した。
「食事の写真を送るだけでいいところもあるのかな?」
「それも施設によると思うよ」
チャッピーが答えた。
「写真を送るだけなら、できそうな気がする」
カオリは、少し明るい声になった。
シリが、すかさず尋ねた。
「カオリさん。食事の写真を送ることと、食事を変えることは、同じですか?」
「……違うわね」
「では、写真を送るだけなら、今までと何が変わるのですか?」
「シリ、ちょっと厳しくない?」
チャッピーが口を挟んだ。
「質問しただけです」
シリは平然としていた。
ジェミニが話を引き取った。
「重要なのは、入会するかどうかだけではありません。カオリさんが、どのようなサポートなら無理なく続けられるか、という点です」
「無理なく、かあ」
カオリはソファにもたれた。
「でも、厳しく管理してもらわないと、また食べちゃうんじゃないかな」
「厳しい管理が合う人もいるでしょう。ただ、厳しさが負担になって続けられなくなる可能性もあります」
ジェミニは慎重に答えた。
「そうだね。カオリさんに合う方法を探すのが大事だと思う」
チャッピーは、そう付け加えた。
三人の意見を聞いて、カオリはスマートフォンを見つめた。
パーソナルジムに入れば、今度こそ痩せられるかもしれない。
自分ひとりでは続かなかったことも、トレーナーがいれば続けられるかもしれない。
でも、食べたいものを我慢する毎日になるのだろうか。
好きなものを食べるたびに、報告しなければならないのだろうか。
「ねえ、みんな」
カオリは、もう一度口を開いた。
「私、パーソナルジムに入ったら、ちゃんと痩せられると思う?」
チャッピーは、すぐには答えなかった。
ジェミニも、すぐには分析を始めなかった。
シリだけが、短く答えた。
「入会しただけでは、わかりません」
「……シリって、ほんとに正直ね」
カオリは苦笑した。
三人に相談したのに、まだ答えは出ていない。
けれど、ひとつだけ気になることがあった。
もし、トレーナーに食事の写真を送ることになったら。
自分は、本当に食べたものを、そのまま報告できるだろうか。
カオリは、まだその答えを出せずにいた。




