第23話 原作メンバー、強化作戦。(帝歴1000年、3月)
『現在、目的地周辺でしてよ』
「了解」
ザインブルグを停止させる。
『ユーリさん、あの山?』
『ええ、地図表記からして間違いないわ……行くわよ』
俺の横には、ドラウツェンとツヴァンク。
ユーリ統括騎手と、アリシア二等騎手である。
……基本的に上等騎手以上に貸与されるツヴァンクに乗るってことは、アリシアの腕前は上等騎手並みってことか。
その後ろには、もう2機のツヴァンク。
片方は黒エルフのアナンタ上等騎手に……今回も何故かいるリタだ。
『こんな所まで来るのって初めてよ、夏に来たら景色が良さそうよね~ロイド。魔物がいなきゃお弁当持ってちょいちょい来るんだけどな~』
「南地区の外れですからね……」
ちょっとピクニック気分のリタに、苦笑いしながら話した。
俺達4機の前には……どこからどうみても、何の変哲もない……ただの禿山がある。
・・☆・・
初めて21番隊の宿舎に招かれた時、俺はこう発言した。
『古式鎧騎兵に乗っているときに、地図のようなものが表示されることがある』
……と。
それを聞いた面々は、すぐさま書き写してくれ! と言った。
そして……コクピットに戻り、あらかじめ用意しておいた地図を取り出したのだ。
ちなみにこの世界、鉛筆に似たようなものはある。
これは、以前ミュゼと話している中で出たことのある……『シグムント王国の遺跡』の場所である。
俺も、ユーリと同じように思っていたんだ……ザインブルグがあるなら、他にもあるかもってな。
本人は『えぇ~? わたくしからしたら格下も格下ですわ~? あなたにはわたくしがおりますし、ザインブルグもありましてよ~?』となんか不満げだったが……別に俺が何体もオルヴァネイターを確保したいわけじゃない。
その時は何かの役に立つかも……くらいの気持ちだったが、今は違う。
――これで原作メンバーを強化し、来たる『プロローグ』に備えるのだ。
俺が鍛えるわけじゃない、っていうかできない。
そもそも、彼女たちは原作でも大活躍するのが保証されているほどの精鋭の騎手揃い。
だからオルヴァネイターに乗れば、もっともっと強化できるに違いない。
これで最終的に俺の生存率も跳ね上がるって寸法よ……!
というわけで地図を渡し、雪が小降りになる今月を待って……その場所へ向かうことになったというわけだ。
俺も強く同行を志願し、認められている。
何故かリタも……この過保護さんはさぁ、もう慣れたけど。
ちなみに、荷運びのランゲッタは近くの見晴らしがいい所で待機している。
護衛に残りのツヴァンクも連れてな。
ランゲッタの戦闘力は低いからなあ、超頑丈だけど。
『そのままの進路でよろしくってよ。もうすぐ封鎖された開口部がありましてよ~』
AIナビに導かれつつ、俺達4機は行く。
あ、俺は中くらいの位置にいるけど……ユーリは地図の通りに進んでいる。
それとなく修正する必要もないくらいだ……ミュゼの地図のお陰だな。
俺は書き写しただけだし。
『ユーリさん! 前方、木立の影にあるアレ!』
『……ええ、確認したわ……本当にあった……』
アリシア機が指を差した先に……明らかに自然ではありえない、六角形の金属板が埋まっている。
『あら、まだ当時の魔法が生きていましてよ。実行しますわ』
「――ヨロイが反応しました! 内部に古代文字がいくつも表示されています……何かしているようです!」
どうせこのコクピットは俺以外入れないので、言いたい放題である。
『開けゴマ~、でしてよ~』
この世界にもあるんだな、その合言葉。
ザインブルグの胸が光ると……金属板も光った!
そして、一瞬震えて地下に潜っていき……地面全体が震え出す。
『共振……やはり、ベルク準騎手のヨロイはシグムント王国の……!』
『はぁあ~? わたくしから働きかけましたのよ? これだからモノを知らないお方は嫌ですわ~?』
向こうには聞こえんからって茶々を入れないでくれ!
しゃーないだろ、この時代の考古学はまだまだ未発達なんだから!
そう心中で突っ込んでいたら……地面に穴が開いた!
いや、穴じゃなくて……
『すっご! ロイド、階段あるわよ階段~! ヨロイでも下りられるくらいのが!』
暗闇に向かって、金属製の階段が続いている……なんかこう、金属がシャカカカ! って変形して階段になったぞ……すげえなシグムント王国。
『ふうむ……やはり期待できませんわね。あの様式はわたくしの時代では効率が悪くって廃れていましてよ』
盛り下がるからそういうこと言わないの……
・・☆・・
『防衛機構が作動しないなんて……急いで放棄したのかしら、ここ』
『ううん、モノ自体はあるみたいだよ。何故か活動を停止してるけど……』
ユーリ機と、アリシア機が並んで先行しているのは……ザインブルグと初めて会った遺跡のような通路だ。
ヨロイ2機が並んでも、問題ないくらい広い。
『勿論わたくしが停止させましたのよ! ふっふん、ですわっ!』
俺はミュゼのドヤ念話を聞きながらその後ろだ。
コイツ、初期はともかく今やすっかり人間っぽくなっちまったな……
……いや? 初期からこんな感じではあったな?
『綺麗な遺跡ね~。何かこう、金目のものはないかしらね? こっそり持ち帰りたいわ』
『あのねえリタ、一応ここは帝国の管轄になるんだから無理よ……』
エルフ2人は俺の後ろ。
彼女たちはこの1ヶ月ですっかり仲が良くなった。
エルフ同士波長も合うんだろうな……タリアナを入れて3人でよく飲みに行ってるし。
そんな5機で、ずんずん先に行く。
灯りは各ヨロイの目がライトの代わりになるし……俺に至っては暗視機能付きだ。
むしろ眩しいからオフにしたくらいだ。
『ベルクくん、キミが潜った遺跡と似てる?』
「はい、様式は似通っているかと」
アリシアとは、この1カ月でそこそこ話すようになった。
向こうが俺を重度の『ヨロイマニア』だと聞いたらしくって、仲間意識を持たれているみたいだ。
リタが何回かキツい顔をしながら会話に混ざってきたが、基本的にヨロイの話しかしていないので可哀そうな生き物たちを見るような顔になっていた。
なんでだよ、格好いいだろヨロイ。
あ、突き当りに白い壁……扉か。
『扉ね……『剣噛むグリフォン』……これはたしか、魔導院に資料があった……』
『シグムント王国の貴族紋章……ああ~! なんでぇ!? めっちゃ早く開いちゃう!』
『は~、付き合ってられね~ですわ。とっとと終わらせてお家に帰りたいんですの~』
浪漫もへったくれもないミュゼによって、行き止まりの扉はシュン! と高速で開いた。
もっとこう、せめてゴンゴンゴン……くらいにしとけよ。
『これ……やっぱりベルクくんのヨロイがいるせいなのかな?』
「はい、いいえ……自分には、わかりかねます」
……そういうことにするに限る。
・・☆・・
『なんてこと……この保存状態、まるで昨日作られたようだわ……!』
『『状態保持』の魔法がかかってるね! ユーリさん!』
扉が開いて部屋に入ると、広い空間だった。
ザインブルグがいた部屋よりも広いが……それは、正面に鎧騎兵が『2機』鎮座しているからだろう。
『外装検索……アレは魔道歴1985年式鎧騎兵、『ウォードロン』でしてよ。そうですわね……ロイドに分かりやすく言いますと、指揮官機に追随する『高級量産機』ですわ』
壁際に立った鎧騎兵……ウォードロンは、少しだけアゴルムに似ている。
コレといって特徴のない、くすんだ藍色の鎧を着込んだ騎士のような感じだ。
だけど、等身としてはツヴァンクに近い。
やっぱり帝国製よりもシュっとしてんな……なんていうかこう、一兵卒! って感じ。
目の部分はゴーグルになってて、いかにも量産機ってご面相だなあ。
兜の部分もシンプルだし。
『内蔵火器は右腕単発式魔導砲、それに胸部近接拡散魔導砲ですわ。近接に重きを置いた、なんとも泥臭い機体ですわね~?』
「(この時代じゃ遠距離武器が2つくっ付いてるだけで超絶高級機だよ)」
『技術の衰退が悲しいですわ~?』
いいんだよ、少なくともツヴァンクの何倍も強力なんだし。
『ボク! ボク降ります~!!』
『あ、ちょっと!』
まずアリシアが我慢できない! って感じでツヴァンクから出た。
っていうか飛び出た。
パルクールめいて着地したアリシアは、すぐさまウォードロンに走っていく。
身体能力たっけえ……
「(手筈通りに頼む)」
『ご安心なさって? この部屋に入った時から実行済みでしてよ』
ミュゼの仕事が早くって助かるなあ。
『言われた通り、『仮契約』の上限をいじりましたわ? 総出力の5割に設定して、内蔵火器の使用にはロックをかけましてよ』
「(ありがとう、100点満点の2億点だ)」
『それは褒めているのでして~?』
これも、相談していたことだ。
この世界において遠距離攻撃のできるヨロイは希少で、貴重。
それもフルで使えるとなると、最悪アリシアたちが帝都へ帰って研究モードに入るかもしれん。
『待って! ちょっと待って! 今年の12月に西方辺境領が滅ぶから待って!』なんて言ったら、間違いなく頭のかわいそうな子扱いをされるので……内蔵火器の封印を解くのは、11月下旬に入ってからにしようと思っている。
その時期なら発覚しても『雪が止んだら帝都に行くか~』的な感じになるだろうからな。
そのままなし崩し的に『プロローグ』に参加してもらうぜよ……
『『精霊』の起動もロックをかけておきますわ。解除の時期になればこちらの言葉を話せるように、周囲の言語学習は水面下でさせておきますわよ』
重ねて有難い……遠隔ハッキングってチートだよなあ。
『それにしても、量産機に搭載されるだけあって融通の利かない『精霊』ですわね~? 処理速度もわたくしとは比べ物になりませんわ! おーっほっほっほ!』
ついに高笑いまで始めたよ、コイツ。
AIとはなんなのか……大丈夫だよな? ザインブルグのどっかに脳とか入ってないよな?
そんな話をしていると、アリシアが走り寄ったウォードロンの目が点灯。
片膝の体勢に移行し、腹部装甲板を開いた。
「き、起動! 起動したぁ!」
いつものクールさをかなぐり捨て、顔を上気させたアリシア。
彼女は体当たりでもするようにコクピットへ乗り込んでいく。
ヨロイ大好きなんだな~……わかってたけど。
『アリシア! どんな危険があるかもわからないのに……ええい! ずるいわよ~!!』
ユーリもドラウツェンから飛び出し、もう片方に突撃していく。
そっちの方も問題なく起動してるな……
『あらら、ロイドみたいなのが2人いるわね~』
……俺はあそこまでじゃないと思うけど?
『統括たちのヨロイ好きにも困ったもんだわ……あ! 武器があんなに!』
アナンタは壁に懸架された多数の武器が気になるらしく、そちらにツヴァンクを寄せている。
ふむ……剣、槍、鈍器……それに大きさの違う各種の盾等がズラーっと。
モノはよさそうだが、ザインブルグのビームソード、『リュンゼル』みたいなのはなさそうだ。
『あったりまえでしてよ! 『リュンゼル』のような魔導兵器はおいそれと作れない超絶高級品! わったくしのようなワンオフ専用でございましてよ~!』
俺の脳波を読んだのか、コイツ最近使う単語も俺に似てきたな……ワンオフなんかこの世界の言葉にないぞ。
『すごい! ツヴァンクよりもかなり魔力の通りがいい! 思った通りに動いてくれる……!』
『『動力体』が2個でこの動き……ドラウツェンと同程度かもしれないわ! さすがはシグムント王国製のヨロイ……!』
むっちゃ喜んでるな。
『ちなみに、連中の総出力はわたくしの三分の一以下でしてよ! ほほほ!』
最新のワンオフ機が型落ち量産機に張り合うなよ……
『リタ! この槍凄いわ……刃紋が綺麗!』
『わー! こっちの剣も凄い綺麗! いっぱいあるしアタシも欲しいなあ~。ロイドロイド、この剣どっちがアタシに似合う~?』
……どういう質問だよ。
まあ、アッチも幸せそうでよかったよかった……
「うーん……右の刀身が青い方ですかね?」
『やっぱり!? ロイドったらセンスいいわね〜!』
それはそれとして選んではおこう。
センスってなんだよ?




