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第17話 超古代AIお嬢様は、ヤバい。(帝歴999年、10月)

「これから、どのようにすればいいですか!」


 立たせたザインブルグの中で叫ぶ。


「貴方がいつも鎧騎兵を動かすようにして! 武器は使わずに!」


 外からは、カララ上等騎手の返答があった。

バルクハルク聖騎手も、近衛女もこちらをじっと見ている……


「了解いたしました!」


 そう返しつつ、水晶球を握り込む。


「(ザインブルグ、総出力を……そうだな、通常時の2割程度にしてくれ)」


『了解。ですがよろしいので? それだと噴射機構を始め、内蔵火器が全て使用不可能となりますわ?』


 打てば響くように、珍妙なお嬢様口調が返ってくる。

ほんと、何をどうしたらこうなるのか……


「(問題ない。というか駐屯地内でそんなもん使ったらえらいことになるぞ)……始動!」


 ともかく、出力調整も終わっただろうし……前に進む!

ぐん、と反応があって……ザインブルグは訓練所内を歩き出した。

……ちょっとした歩行のつもりなのに、アゴルムの全力早歩きより速度が上だ。


「走行、開始!」


 ぐ、速い!

あっという間に、ツヴァンクの全力疾走を越える速度が出た!

総出力2割でこれかよ……! そりゃ、他のオルヴァネイターが『仮契約』でも戦えるわけだ!


「(ザインブルグ、『仮契約』状態での総出力はどれくらいだ?)」


『完全起動状態での1割から2割程ですわ。現状とそう差異はなくってよ?』


 なるほどね……!

それならこの状態で十分だな、通常は。


「(俺からの指示があるまで、この状態を上限に設定してくれ。逆に全力のキーワードは『完全起動』だ)」


『かしこまりましてよ』


 どうにも力が抜けるな……だけど、リアルタイムにやり取りできるAIがいるのは有難い。

言葉も通じるし。


 さて、3人を横目に走りつつ……魔力を確認。

……やはり思った通り、通常の人間と同じ動作なら魔力消費はそれほどじゃないな。

あの時気を失ったのは背面の噴射機構……ブースターをいきなり全力で使ったからだ。

自分の体に存在しない機関を使うのは、消費がでかい。

原作での描写通りだな……

これからは魔力上限を引き上げる訓練も、もっと身を入れてやんなきゃ……


「(さっきも言ったがこれからよろしくな、ザインブルグ)」


『ええ、ロイド騎手。よしなに』


 ともかく……上限ありの見せかけ訓練を続けなきゃな。



・・☆・・



「ロイド準騎手、でしたね。私を覚えていますか?」


「ハッ! 以前、皇女殿下の護衛に付いておられた方ですね!」


 走ったり、小さくジャンプしたり、シャドーボクシングをしたり。

そんなことを1時間ほど続けて、俺は解放された。

ザインブルグは調査の為にまた訓練場に置かれて、俺は別命あるまで宿舎で待機せよ……とのことだ。

まあ、どんなに調べても俺がいなきゃウンともスンとも言わないんだがな、ザインブルグ。

このまま『このちょっと強い鎧騎兵はロイドに使わせるか~』って方向になればいいんだが。

 

 総出力2割に固定したアイツは、たぶんツヴァンク以上ドラウツェン以下くらいの性能だろうから……空前絶後ってほどでもない。

原作にて猛威を振るった主人公のオルヴァネイターは、そんなモンじゃないからな。

今は隠して、俺の愛機になって貰わんと……


 とまあ、そんな感じで帰ろうとしていたら……例の近衛女に声をかけられたわけだ。


「あの時は父のことを教えていただき、感謝しております!」


「……いえ、今になって思えば14歳の少年に聞かせることではなかったわ……許してね?」


 どこにでもいるような顔で、中肉中背。

だけど、なんとなく底知れない雰囲気を感じる。

言ってないのに俺の年齢知ってるし。


「名乗りが遅れたわね。私は近衛隊所属、テトリア騎手よ」


 近衛隊の騎手は、辺境と違ってトップを除き全ての階級が『騎手』と呼称される。

トップは彼らが守ることとなる皇族だ。

個人の特定を避けるためにそうなっている……苗字しか名乗らなかった彼女だが『テトリア』と言う名は帝国において『田中』か『鈴木』レベルでありふれているし……たぶん、本名でもないだろう。


「バルクハルク聖騎手から聞いているけど……私個人も、貴方の話が聞きたいわ。よかったら、これから食事でもどうかしら?」


 これにNOと言えるほど、俺は命知らずじゃない。

皇族直属の騎手の誘いだ……こんなもん実質、命令と変わらん。


「ハッ! 謹んで拝命いたします!」


「私は皇族ではないわ、そんなに固くならないで……では行きましょうか、ロイド準騎手」


 少し苦笑いして、テトリアは先に立って歩き出す。

それを追いながら……俺は左手首に嵌まった『皮膚と同じ色の』極薄ブレスレットを撫でた。



「……なるほど、聞いていた通りね。随分と大冒険をしてきたようじゃない」


 テトリアと入ったのは、南駐屯地でも指折りの高級店とされる食事処だった。

1回の食事で、俺の給料の10分の1が吹き飛ぶくらいのな。

当然ながら入ったことはない……大丈夫だとは思うけど、奢りだよね?

今月分の給料は手元にあるけど……


「は、恐縮であります」


 普段食べている肉と同じものか? ってステーキを食いながらテトリアの質問に答えた。

聖騎手に語ったのとまったく同じ話をな。


「あなたが乗った鎧騎兵は、古式に相当するモノよ。体に異変はない?」


「古式……なるほど、遺跡にあったから予想はしていましたが。いえ、特に異変はありません」


 そう答えた瞬間、左手首に微弱な振動が来た。


『魔力波の発動を確認。偽装処置しましてよ』


 それと同時に、頭に声が響く。

……やっぱり、『探って』来たか。


 俺が手首に着けているモノは、訓練を終えた時にザインブルグの椅子ポケットにあったものだ。

こいつも『原作通り』……離れていてもザインブルグのAIと交信が可能になるブレスレットである。

交信可能距離はおおよそ10キロ前後で、その範囲内であれば最悪、ザインブルグを遠隔で動かせる。

回収しておいてよかった……


 そして今のように、俺の魔力を使って相手の『探り』……読心術に対するバリアを張れるようにもなっている。


「(魔法か、どんな?)」


『意識の表層を探るものですわ。わたくしの偽装は完璧ですので、見た目は普段通りのあなたでしてよ?』


 助かる……いや、そんな気はしてた。

前の『転写』もそうだが……テトリアはたぶん影働き、俗に言う『ニンジャ』、もとい『クノイチ』のような騎手だろう。

俺が何か隠しているか確認に来たな……恐らく、俺がオルヴァネイターに乗って帰ったその日には帝都に連絡が飛んだんだろう。


「そう……もしも何かあったら、すぐに上官に連絡なさい」


 不審そうな様子はない……さすが、高性能AIさんだ。


「はい、ありがとうございます!」


 しかしこの肉美味いな……お代わりしたいな……


「ふふ、いくらでもどうぞ。経費で落ちるから大丈夫よ」


「あ、ありがとうございます!」


 経費で落ちるって概念、この世界にもあったのか……近衛って凄いな!



「もうしばらく調査は続くだろうけど、あの鎧騎兵はあなたが乗ることになると思うわ」


 満腹の腹を抱えて店外に出ると、テトリアはそう言った。


「何故かは不明だけど、あのヨロイはあなたを認めたようだから」


「み、認め……? それはいったい……?」


 いきなり変なことを言われた新兵ムーブをする!

ここで『そっすね』みたいな顔をしたら明らかに不審だ!


『偽装完了でしてよ』


 ありがたい!


「まあ、そういうヨロイもあるってことよ……では、私は行くわ。励みなさい、ロイド準騎手……お父上のようにね」


 親父殿は『龍』と戦う程の騎手だったからな……そりゃ、上層部では有名か。

それもあって、元々俺も注目されてたってことかねえ?


「ハッ! ロイド=ベルク準騎手、粉骨砕身の覚悟で当たります!」


 再度敬礼すると、テトリアはちょっと微笑ましそうな雰囲気で俺に笑いかけ……去って行った。

……ふう、なんとか誤魔化せたか……!


『また来ましたわ。偽装完了でしてよ……念の入ったお方ですのね?』


 ……こいつがいなきゃヤバかったな。

本当に念の入ったことで……これ、俺が考えるよりもオルヴァネイターの情報って回ってんのか?

原作となにからなにまで一緒って考えるのは危険だな……


『後方、高速で接近されていましてよ』


 なに!? 今度は……なんだリタか。


「ロイド! ローイド! あの近衛女、また来たのね! 何か嫌なことされなかった!? 大丈夫~!?」


「……大丈夫です、リタ上等騎手」


 そう返すと、リタはニッコリ笑った。


「そう、ならいいわ! もうご飯食べちゃった? それなら一緒に宿舎まで帰りましょ!」


「はい!」


 まったく、過保護な上官殿だよ……


『先程の女性、隠形の魔法を使ってまだこちらを見ていましてよ。後方斜め右の建造物、その屋上ですわ』


 俺の何がそんなに気に障ったんだ、近衛よ……!

あと身体能力バケモンだろ……皇族の護衛、コワイ!!

なんとか気付かないふりをしつつ、スキップするリタの後を追って歩き出す。


「あ! リタ上等騎手、今晩からは1人で眠れますからね、俺」


「えぇ~? 本当に本当に大丈夫~?」


 なんでそんなに嫌そうなんだよ……


「本当に本当に、本当に……大丈夫です!」


 お願いだから夜は一人にさせてくれ……特に今晩は色々確かめたいしな……!



・・☆・・



「(保有内蔵火器を全て教えてくれ)」


 夜。

暗くなった室内でベッドに寝転び、ザインブルグに聞く。


『翻訳の関係で齟齬が生じる可能性がありますが、よろしくて?』


 よろしくってよ。

いかん、釣られてしまった。


「(問題ない)」


『それでは一覧を……頭部二連魔導機銃、胸部魔導凝集光砲、両腕部三連魔導機銃、腰部四連多段誘導砲、背部展開式高出力魔導加速砲ですわ』


 ……は?


「(待て、待て待て待て。ちょっとすまん、内臓火器は頭部と胸部、もしくは腕だけじゃないのか!?)」


『否定。ザインブルグは以上の武装を内蔵しておりましてよ? どなたかとお間違えではなくって?』


 どなたって……『原作』のオルヴァネイターは大体頭のバルカン砲めいたのと、胸部の魔導レーザー砲、それに腕のキャノン砲だけだったぞ!?

他にも固有の武装や武器はあったけど、ザインブルグの内蔵火器は数がおかしい。


「(ええと……あれだ、ほら……ヤルダヴァートとかさ)」


 のちのち、原作主人公が乗り込むヨロイの名を言う。


『検索……あら、それは二世代前、魔道歴1985年式の機体ですわ。わたくしは2010年式ですのよ?』


 魔道歴……それは、シグムント王国が使用してた年号だな。

たしか……原作で確認できる最後の年が魔道歴2015年だから……

コイツ、ひょっとして……


「(まさかとは思うが……お前って『ミュゼリア』シリーズか……?)」


『はい、『ミュゼリア』が三番機、『ザインブルグ』ですわ』


 俺は、天井を見つめてゆっくり息を吐いた。

深く、深く。


「(そうか……もう寝るよ、これからよろしくな、ザインブルグ)」


『あら、先程もよろしくしたのではなくって? ええ、もちろんよろしくお願いしますわ、ロイド騎手』


 ……コイツは、アレだ。

『設定資料集』に、名前だけ出てきた……『シグムント王国が作った、もしくは作ろうとしていた鎧騎兵の最新バージョン』だ。

原作でも具体的な原因は書かれていないが、ジグムント王国はそこらへんでいきなり滅亡している。


 そっかあ……ただでさえ貴重で強力なオルヴァネイターの、最終シリーズかぁ……そりゃあ搭載されている武器も多いわ。

ちなみに、『ミュゼリア』はたしか女神とかそういう意味だ。

だから女性音声なのか?


 ……まあ、運がいいな! 俺!!

そう思うしかないな! もう!!

でもいいんだ! 生き残るためだからな! 

明日からも頑張るぞ~!!

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― 新着の感想 ―
どうして栄華を極めた王国が亡びたんですかねぇ
主人公!色々、頑張って!
秘匿装備とか大好き。見せにくいけど切札大好き。
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