フランスが道路を細くする
セントローレンス川を越え、先頭がモントリオールへ入った。
大観衆の声が、周回コースの壁になった。
残り160km。12周回の1周目から見直そう。
273.4kmのレースは、スタートからまだ113.4km。半分にも届いていない。
ちょうど、スロバキアのマッサージ師が世界選手権を終えた地点から、10kmほど進んだところだった。
ここで注目すべきは、フランスの動きだ。
ブルーノ・アルミライルが速度を上げる。
2022、2023、2025年の、フランス選手権個人タイムトライアル王者。ヴィスマ|リースアバイクの選手だ。
逃げを捕まえるだけなら、もっと後でもよかった。フランスが求めたのは距離を縮めることではない。勝負に参加できる人数そのものを減らすことだった。
ポール・セクサスは20歳になったばかりだった。個人タイムトライアルで銅メダル。2週間前のグランプリ・モンレアルで2位。国全体が、若い脚に未来だけでなく現在を求めていた。
アルミライルは、その現在のために高速で牽引し、風を受け続けた。
先頭。
また先頭。
まだ先頭。
ポール・セクサスを勝たせるために、競争相手そのものを減らしにかかる。
一人で何十キロもプロトンを引き続けた。
序盤の8分は、急速に削られる。
先頭交代を短く繰り返すのではない。集団の先頭に居続け、登りのたびに速度を落とさず、弱った者へ戻る場所を与えない。
長いふるい落としの時間だった。
スイスとメキシコも加わった。逃げとの差は8分から4分へ、1分余りへと消えた。
橋川は2周目で集団から離れた。世界の先頭へ一度出た男は、今度は後方へ消えた。
アルミライルの仕事は60km以上に及んだ。
先頭の16人は6人になり、4人になり、吸収された。レックネスンも、ギルマイも、世界各地のジャージも、大きくなったり小さくなったりする集団の中へ戻った。
そのころ、ブエルタを制したばかりのマスが遅れた。
総合3位だったガルも遅れた。ベン・オコーナーも後退した。
2週間前まで3週間の山岳戦を生き延びた者が、ここでは残り100kmを待たずに消えていく。
グランツールは、昨日の強さを証明する。しかし世界選手権は、昨日の証明書を受け取らない。
疲労が残っているのか。コースとの相性か。回復が間に合わなかったのか。外から見えるのは、車輪が少しずつ離れ、集団とのあいだに道路が現れることだけだった。
グランツールの順位がここでは何の保証にもならないことが露骨になっていく。
ブエルタ総合優勝者エンリク・マス。
王者としてモントリオールへ来たマスは、勝負の外へ出た。
ベン・オコナー、DNF。総合3位だったフェリックス・ガルも消えた。
そんな中。
まだいる。
まだいる。
別の意味で応援したくなる選手がいた。
昨年のブエルタでは、ポガチャルに代わってUAEのエースを務め、あのヴィンゲゴーと渡り合ったジョアン・アルメイダ。
2026年は、原因さえはっきりしない不調に長く苦しんだ。それでもブエルタを最後まで走り、モントリオールまで来た。
そのアルメイダも、続いて消えた。
フランスが作った消耗戦は、本命を守るためのペースメイクでありながら、候補者一覧そのものを削除する作業になった。
つい2週間前、3週間を走り抜いてグラナダで赤いジャージを受け取った男が、21日間のグランツールを完走できる男たちが、たった1日限りのモントリオールでは、フィニッシュへ辿り着けない。
ロードレースは、そういう競技だった。
事故明けでブエルタ2位になったログリッチは、まだ残っていた。
フランスの支配は成功しているように見えた。
逃げは消え、人数は減り、セクサスのための道路が作られた。
だが、道路を細くすれば、自分たちだけが通れるとは限らない。
そこを先に通ったのは、オレンジ色。オランダを象徴する色のジャージだった。




