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2026 UCI Road World Championships ~どうなるか見てみよう~  作者: 水川かずみ
2026 UCI世界選手権大会 ロードレース 男子エリート モントリオール
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12/28

自転車レースあるある

 下りへ入り、ジョーゲンソンが脚を揺すってほぐしている。


 前へ出ないから、楽をしている。そんな単純な話ではなかった。

 誰かが回復して仕掛けるたび、何度でも反応する。その負荷が、脚を揺する映像として残っていた。




 その後方では、遅れていたヒーリーとマチューへデル・トロが追いつき、マチューを抜いて3人の先頭を牽いた。テンポ走での遅れを取り戻すためか、この後の協力を得られやすくするためか。下りや平坦で頑張ってもらうためには、最高の相棒たちになるメンバーだった。


 ブイトラゴの姿は消えていた。


「ファンデルプールはまだ生き延びている。この世界タイトルを獲得する可能性はまだ残っている。」


 解説は、この日ここまでのマチューの動きを振り返る。

 91kmから始まった攻撃。ワウトやログリッチと動いた局面。その後も、何度も前へ出た。


「ピドコックは残り約80kmでバイクを交換したが、長い間不利な位置にいた。今!ファンデルプールがようやく集団復帰しようとしている。」


 落車から追い直したピドコックについての説明が、そのまま落車とは関係ないはずのマチューへつながる。なぜなら、現在進行形でマチュー、デル・トロ、ヒーリーの3人が、ピドコックのいる集団の背中を捉えたからだった。

 ピドコック、セクサス、マシューズ、チッコーネ、ジョーゲンソン。


 その後ろから、オレンジ色のジャージが近づいてくる。

 下りきるころ。マチュー、デル・トロ、ヒーリーが先頭集団へ戻った。


 画面に先頭集団一覧がゼッケン番号順に表示される。

 セクサス、チッコーネ、ピドコック、ファンデルプール、ジョーゲンソン、マシューズ、デル・トロ、ヒーリー。


 勝負所の1つ、ポリテクニークの丘。

 前を1人で走るマクナルティは、もう元気そうには見えなかった。

 飛び出し直後の鋭さは、もう見る影もなかった。


 独走。

 それは、一人対全員である。


 スタート直後から174kmをたった一人で独走しながらも、フレッシュな脚の集団との距離が埋まらないどころか広がっていくような男。そんな男が集団復帰したところだったため、13.4kmの周回の独走を始めて1周過ぎで精細を欠き始めるという、どちらかというと当たり前であるはずのことが、妙に新鮮に映った。


 画面に先頭集団一覧がゼッケン番号順に表示される。

 セクサス、チッコーネ、ピドコック、ファンデルプール、ジョーゲンソン、マシューズ、デル・トロ、ヒーリー。

 再び一覧が表示されたのは、今度は先頭集団がポリテニークの丘を登るからだ。遅れること36秒。

 ピドコックがダンシングで加速する。誰も千切れない。一覧に並ぶ名前は変わらない。メンバーから助けは得られず、無情にも速度は元へ戻る。


 別の追走集団がポリテクニークの丘の頂上へ顔を出した。

 レムコ、シモンズ、キュング、シュミット、そして、ピーダスン。


「見ろ、ピーダスンだ。彼は今日一日、ほとんどレースに絡んでいなかったにもかかわらず、今やほぼ先頭集団にまで上り詰めた。」


 やはり解説も、同じことを思ったらしい。見えなかった男が、勝負に絡める位置に、いる。それだけで、戦術を理解したのかもしれない。


 画面に追走集団一覧がゼッケン番号順に表示される。

 エヴェネプール、ピーダスン、シモンズ、キュング、シュミット。


 先頭集団がマクナルティから39秒。追走集団は1分8秒。

 平坦区間ではセクサスが前を走り、番手にはやはりジョーゲンソン。

 そのころマクナルティは、パニュロの坂へ近づいていた。



 残り17.1km。タイム差はそれぞれ、49秒と1分11秒。マクナルティは頂上を越えているだろうが、映像では先頭集団内での登坂アタック。チッコーネだ。

 10秒のタイム拡大は果たして、逃げが下り、追走が登りだからというだけのことだろうか。

 後方からレムコを映す映像に切り替わったため、追走集団に切り替わったかのように思えるが、この登坂で先頭集団の背中を捉えている。続く背中のゼッケンは、キュング、シュミットのスイス勢だ。画面外からピーダスン、シモンズがそこに背中を見せる。どう見ても目と鼻の先の集団との間に、22秒もの差など、あるようには見えない。1分11秒という秒差は、いつからかレムコたちを参照したものではなくなっていたのか。それとも自転車レースあるあるの時間表示の罠か。そして、答え合わせのように1:11という3つ目の数値が、突然消えた。


 レムコ率いる追走集団が、ついに先頭集団へ合流した。その瞬間。


 ヒーリーが踏んだ。ピドコックが続く。そしてジョーゲンソンもいる。


「ヒーリーが攻撃を開始、ピドコックも参加。これはとんでもない自転車レースになったね。ヒーリーはちょうどレムコ・エヴェネプールが合流すると同時に踏み始めた。どうやら59秒差、とのこと。」


 解説も、消えたタイム差に苦笑い。

 驚異的な速度で先頭交代もなく追い上げ、さらには後ろにつく恩恵さえも削る。正面から受ける風を極力減らすということは、風除けとしての価値も、同時に減らすのだ。ドラフティングと呼ばれる効果は、一律ではないのだ。しかし統一されたタイム差は、そんなレムコらしい加速の証明だけだとは、必ずしも言えないことを物語っていた。


 とんでもないという言葉は、どこまでを指しているのだろうか。

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この子の目からは、どう見えているかな
連載『一周できたなら、どこへでも』 最初から読む
そういうところが、ノンフィクション風
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