doing beetween No.003 周囲の声
恒久登録まで、あと4日。
鉄平は会社を休んだ。有休を消化する形で突然の「体調不良」を理由に。
上司は"ゆっくり静養してね"と優しく返信してきたが、その最後の行に、"○○の件、オオゴトだよね、見方だから"という一文が、追加されていた。
《味方》誰の見方なのか?
家に引きこもり、スマホの電源を切った。代わりにノートパソコンを開くと、メッセージボックスにメッセージが・・・・・。
差出人不明/件名:あなたの立場について
ーーー本文ーーー
有並鉄平 サマ
現在あなたの社会的立場は「○○積極的反対派」として確定しております。
周囲の認識もそれに追いつきつつあり、家族・知人への影響を最小限に抑えたい場合は『○○支持』を表明することをおすすめします。ーーー
鉄平は久しぶりに実家の母に電話した。受話器から聞こえる母の声は、いつもと違って他人行儀だった。
「鉄平、急にどうしたのよ・・・」
「ううん、ただ声が聞きたいと思ってさ、元気ならそれでいいよぉーーぅ」
「そぅ、元気よこの通り、あっ、そうそう、近所の奥さんにさ、聞かれたんだよ、"あんたの息子さん、○○の件で反対派なの?"って、なんも知らんかったんよ・・・」
「それで、母さんは何て応えたの?」
「"うちの息子は何も言ってないわよ"
って言ったわよ、何もしてないわよね?」
「もちろんしてないさー、」
母は少し沈黙した後で、
「そうよね、でも、黙っていると余計に変な噂になるわよね」
鉄平は目を閉じ
「母さん、ごめん、もう切るね」
電話を切った瞬間涙に引き込まれた。この『相属』のせいで泣いたのは初めてだ。悔しいのか、切ないのか、何とも表現ができない感情だった。
夕方、チャイムが鳴った。ドアを開けると大学時代の友人、美咲が立っていた。
突然の訪問に驚く鉄平を美咲は心配そうな顔で見た。
「ねえ、大丈夫鉄平、SNS見たよ、大騒ぎになってて、反対派って、信じられなくて、直接事実確認しにきたのよ」
鉄平は、心配してきてくれた美咲をすぐに帰すわけにもいかず、部屋に入ってもらった。
久しぶりの再会なのに空気がどよんでる。
「美咲、オレなんもしてない」
「うん、信じる、プロフの"中立です"が、あれが、逆に炎上の火種だ」
美咲はスマホを取り出しスクショを見せた。
自己紹介のその下には無数の引用ポスト。
数日、スマホを開いていなかった、その間にこんなことになってたのか・・・。
「これ、削除した方がいいカモ、今ならまだ間に合う・・・」
鉄平は首を振った。
「削除してもスクショは残ってる、削除=認めたって、なるっしょ」
美咲は困ったように笑っていた。その笑いが心配されているんだか、からかわれているのか、怖く感じた。心は仮面のマスカレードみたいに…。
「じゃぁさ、聞くけど、美咲はどう思う、○○件について」
「私はさ、どっちでもいいと思ってる、けど、鉄平が反対派と思われることで、私も同じ取り扱いされるかもって不安になるわ」
鉄平は息を呑んだ。友人まで、自分の「立場」が跳ね返ることを恐れらている。
美咲が帰った後、鏡の前に立ち、自分とにらめっこした。
沈黙した顔が誰かの「主張」の仮面に変わっていくのだろうか・・・・?
夜中、4通目の封筒が…届いていたのだ。
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第4次登録通知
貴殿の沈黙、および周囲への確認行動を確認。
これを積極的反対派の維持意志と判断。
更新後立場:○○反対〘恒久登録候補〙
残り 3日
恒久登録は
・就職・転職時の社会的信用照会
・公的書類への立場表示義務
・家族・交友関係への波及適用が、自動適用する。
上書きを希望する場合、明確な「○○支持表明」を。
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鉄平の手からスマホが滑り落ちた。
自分の沈黙がオオゴトになっている。
「周囲を傷つける加害者」として、移項している。
恒久登録まで あと3日
僕には選択肢は、ないのかもしれない。




