doing beetween No.002 上書きの試み
鉄平はスマホを握りしめたまま部屋の真ん中で立っていた。QRコード読み込みした先の自分のプロフィールページは、何も変わっていないはずなのに、"おすすめ"欄に表示される関連アカウントが、『○○反対派』の色に染められている。
【これはバクだ】そう自分に言い聞かせて、鉄平はアカウント設定を開いた。プロフィール編集画面・自己紹介欄は空欄のままで、投稿に、勇気を出して指を動かし入力を、実行した。
「僕は何も決めてません、中立です」入力して投稿、数秒後表示された。
翌日職場で、いつもと違う空間に、まとわれ感を受け止めた。
鉄平は小さなデザイン事務所で、webバナーの作成をしている、同僚は5人、みなSNSを利用している。
昼休み、先輩が突然言った。
「有並さん○○の件で反対派なの?」
鉄平は箸を止めた。
「えっっっっ・・・・?」
「プロフ見たよ、自己紹介に【中立】ってあったじゃんねっ、逆に目立っちゃうんだよ、"何も求めてません"って書く人って、強い意見の持ち主って、伝わっちゃってね」
佐藤先輩は笑いながらスマホを見せた。そこには確かに鉄平のスクリーンショットが社内のグループチャットに貼られていた。
「これ誰が貼ったの?」
「知らないけど、みんな"あーそーゆー人ね"って納得していたよ、黙っているより、マシかも・・・・」
鉄平は言葉を失った。自分が書いた"中立です"が逆に隠れ反対派の証拠として解釈されているからだ。
帰宅後ポストを確認すると三通目の封筒が届いていた。
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第3次登録通知
貴殿による「中立です」という表明を確認しました。
しかし本表明は、あいまい、かつ消極的と判断され、有効な上書きは認可できません。
よって、暫定登録内容を更新します。
更新後立場:○○に反対・・・消極的黙認派
→消極的派へ移動
理由:"中立を明言した行為"が○○を積極的に支持しない
を意思とする。
過去のスイーツ写真投稿に対する第3者解釈が多数により有効。
・次回通知までに明確かつ積極的な「○○支持」表明を行わない場合、本立場は恒久登録となります。
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鉄平は封筒を握りつぶした。紙がぐしゃしゃり・・・ぐにゃしゃり・・・と音を響かせていた。
「有並さんついに本気だね」
「中立とか言ってるけど、反対派なんでしょーよ」
自分の投稿に知らないアカウントからの引用、次々と増加している。
一番新しい引用では、8,900リポストに、なんだそら・・・・・と思考が圧倒されつつあった。
鉄平は投稿を削除しようとし、指が戸惑った。
削除してどうなるん?逃げたと解釈されるんか?それとも・・・後悔した反対派として、言い寄られる?もっと別の事になるのか・・・。
脳裏にはぐるぐると色んな思いが投げかけられ、ルーレットのように語句が回っていた。
結局、そこから、何も行動に移せず画面を閉じた。
鉄平はベットに横たわりながら思った。
主張を発しない事が、こんなにも『主張』として取り扱いされるなんて、なんか、違う世界にいるみたいだ。心が落ち着かない。
(何も言わないことを選択している、それが、永遠に都合のいい色に塗り替えられ続けることになる、もっと怖いことに・・・進化していたのだ。)
朝、目を覚ますと、スマホに新しい通知が・・・。
「社会言論相属機構」からのプッシュ音通知。
〘恒久登録まで、あと4日〙




