18.みんなで、ジンギスカン!
【☆★おしらせ★☆】
あとがきに、
とても大切なお知らせが書いてあります。
最後まで読んでくださると嬉しいです。
『うぇええええええええん! ただ、お腹が空いていただけなのにぃ……っ!』
エミシの集落の近く。辺り一面を分厚い氷に包み込んでいた元凶である、恐ろしいはずのドラゴンが……。
ギャオオオオオン! と、なんとも情けない声で泣きじゃくっている。
『食料を分けてもらおうとしただけなのに、急にこいつらが攻撃してきたんだよぉ……! だから、怖くて……ふえええんっ』
氷竜が人間の言葉を喋っているわけではない。ただ悲痛な咆哮を上げているだけだ。
だが、レティシアの目には、氷竜から立ち上る魔力の色から「空腹」と「悲しみ」の感情が痛いほどはっきりと伝わってきていた。
「食料を分けてもらおうとしたら、エミシに攻撃されたのか……」
「!? ルーク……お前、竜の言葉がわかるのか?」
思わず呟いたルークの言葉に、アリエッタが驚愕する。レティシアも「ええっ!?」と目を丸くして驚いていた。
「はい、姉上……。今までこんなことはなかったのですが……。今ははっきりと聞こえます。レティシアは聞こえないのか?」
お腹が空いていると最初に見抜いたのはレティシアであったが、彼女自身も驚いている様子から察するに、明確な『言葉』として聞こえているわけではないようだった。
「うん。私はただ、感情の色を見ただけだよ」
「そうか……どうやら、竜の声が言葉として聞こえるのは俺だけのようだな」
ルークは驚きに目を見開いていた。彼には、ただの咆哮であるはずの魔物の声が、はっきりとした『言葉』として脳内に響き渡っていたのだ。
「今まで、こんなことは一度もなかった……」
「何か思い当たる節はないのか?」
と、アリエッタに問われる。
「……レティシアの作った料理を食べるようになってから、元々鋭敏だった聴覚がさらに研ぎ澄まされ、進化しているような感覚がありました」
以前、外でキャンプをした際にも、レティシアの料理を食べてから、今まで見えなかった精霊の姿がぼんやりと認識できるようになったことがあった。
理屈は定かではないが、レティシアの作る極上の食事が、ルークの魔力ゼロの肉体に何らかの凄まじい『進化』をもたらしているのだと思われた。
「料理で体が進化するとは……。とんでもなく凄いぞ、レティシア」
この世界には『バフアイテム』――つまり、他者の能力を一時的、あるいは永続的に向上させる特殊な道具が存在する。しかし、それらは総じて非常に高価であったり、危険な迷宮でしか採取できない希少なものであったりする。
それと同等、いやそれ以上の効果を、ただの食材を用いたお料理だけで発揮したのだ。これは本来なら歴史に残るほどのとんでもない偉業……なのだが。
「ルーク、そんなのどうでもいいんで、早く通訳してくださいっ」
レティシアにとっては、バフ効果うんぬんなど、本当にどうでも良いことらしい。彼女にとって何よりも重要なのは、目の前で腹を空かせて泣いている可哀想な子を、一刻も早く助けることだそうだ。
(ほんと、ぶれないな、お前は……)
その決して揺るがない芯の強さと優しさを……ルークは心底好ましく思っている。
「もし、こちらの言葉は聞こえてますか?」
『うう……お姉ちゃんだぁれぇ~……?』
「なるほど……。あなたは、こちらの言葉がわかるのですね。急に攻撃されて、怖かったですね。よしよし、もう大丈夫ですよ」
レティシアは、泣きじゃくる巨大な氷竜の鼻先に歩み寄り、我が子をあやすように優しく撫でてやった。
『うう……っ』
氷竜はすりすりと、レティシアの小さな手に冷たい顔を擦り付ける。
「でも、どうして街を氷で閉じ込めていたのですか?」
『だって、おいらを襲ってくるから……』
「なるほど……自己防衛だったのですね。とりあえず、その結界を解いてくれませんか? お話は、私がこちらでつけますから」
『うん……』
氷竜が素直に小さく頷くと、オタ・ルの街を覆っていた巨大な氷の結界が、パチンと甲高い音を立てて砕け散り、淡い光の粒子となって消え去った。
「街および周辺に、これほど強力な結界を張り続けるとは……とんでもない魔力量と魔法力だ……古竜……恐ろしい存在だな……」
エッゾの雷獣たるアリエッタすら震え上がるほど、氷竜の張った結界は規格外の代物だったらしい。
それをあっさりと解かせたのは、レティシアの深い慈愛と、何より竜の言葉がわかるルークのおかげであった。
二人は今、とんでもないことをやってのけている。だが、当の二人にはその偉業の自覚はまるでなさそうである。
さて。
結界が解かれ、三人がオタ・ルの街へ向かって歩き出そうとした時のこと。
「止まれ」
不意に、誰かがこちらに話しかけてきた。ルークが瞬時にレティシアの前に立ち塞がり、大剣を抜く。
周囲に人影はない。だが、ルークの耳は確かに音を拾っていた。はっきりとした敵意のこもった声、そして……武器をこちらに向けて構える、かすかな衣擦れの音を。
「何者ダ?」
「俺たちはサッ・ポロから来た、エッゾの皇族だ! 兄を助けに馳せ参じた!」
周囲は白一色の雪景色。そこから、同化していた隠れ蓑を外すように、すぅ……と一人の男が姿を現す。
白い布地の衣装。袖や首回りには、自然を象った複雑で美しい文様が刺繍されている。
頭には、鉢巻のような独特な装飾品を巻いていた。
「(アイヌ……じゃなくて、エミシの民……)」
レティシアが小さく息を呑む。
弓矢を番えて構えた男が、こちらに少しずつ、油断のない足取りで近づいてくる。
「名乗れ」
「俺はルーク。後ろの二人はレティシアとアリエッタ。俺の嫁と、姉だ」
じっ、とエミシの男はルークたちを見つめる。その目には、拭い去れない深い警戒の色が色濃く見えていた。
「オレは、【ウヒュイ】」
「結界を解き、我々を助けてくれたことには深く感謝する」
ウヒュイはルークたちに一礼した。彼は、カーティスと共に氷の結界に閉じ込められていたらしい。
だが、ウヒュイはすぐさま鋭い眼光を氷竜へと向け、弓を構えた。
「しかし、その恐ろしき魔物はここで仕留める!」
ウヒュイが神速で動き、矢を放つ。常人では到底反応すらできなかったであろうその矢を……
カキンッ!
「待て、ウヒュイ」
「……我が神速の矢を止めるか。さすがは、エッゾの狂犬」
ルークは飛んできた凄まじい速さの矢を、大剣で正確に叩き落としたのだ。
遅まきながら、氷竜は自分が殺されそうになったことに気づいて、腰を抜かして震え上がった。
「なぜ止めた? 狂犬。貴様にとっても、魔物は等しく狩るべき『悪』なのだろう」
「ああ。俺もお前と同じだ。人間に害をなす魔物は狩る。ただし……そうではない魔物もいると考える者もいる。俺は、その娘のために剣を振るったのだ」
ルークが見つめる先にいるのは、レティシアだ。
彼女は巨大な氷竜を庇うように両手を広げ、凛とした声を張り上げている。
「待ってください! この子は、無闇に人を襲うような子じゃないんです!」
「何を言っている……?」
「本当です。ただ、お腹が空いて食料を分けて欲しかっただけなのですわ」
「そんな馬鹿な。魔物は本能で暴れるだけの獣だ。さっきも、こいつは我らを襲おうとしたではないか!」
ウヒュイは全く信じようとしない。
「魔物というものは、自然の摂理から外れた悪神なのだ。生かしておくわけにはいかない」
大自然に生きるエミシの戦士が放つ本気の殺気を前にして、しかし、レティシアは一歩も引かなかった。
「なら、私が証明いたしますわ」
「証明……?」
「はい。この子が、理性を持ち、きちんと『食事を待てる』ということをです」
レティシアは振り返り、見上げるほど巨大な氷竜へと視線を向けた。
「とびきり美味しいモノを今から作ります。それまで、お行儀よく待てますか?」
『うんっ!』
氷竜がまるで飼い犬のようにおすわりをして、ぶんぶんと巨大な尻尾を振った。
「お前、一体何をするつもりだ?」
「今からお料理を作り、そしてあの子に食べさせますわ」
「は……?」
あまりに予想外、あまりに意味不明な解答に、ウヒュイは完全に呆然としてしまった。
一方で、レティシアの破天荒さをよく知るルークとアリエッタは、すっかり慣れているからか、彼女の話を至極当然のこととして聞いている。
「料理? 魔物に料理なんて作って、何になるというのだ?」
「私が料理を作って食べさせる。その間、この子が約束を破らずに大人しく待てたら、理性ある存在だと認めてくださいな」
「……なるほど」
エミシの民にとって、この大地に住む魔物は全て悪神……ウエンカムイだ。
彼らは理性のない化け物だと思っている。
もし氷竜が人間の言うことを聞いて待てるなら、それは理性のある獣であり、ウエンカムイではない。ならば、エミシの民が排除する対象ではないという理屈だ。
「理解した。ただし、そこの竜が約定を違えて暴れた場合、即刻排除する。そして、お前たちエッゾの民とは今後一切の交流を持たない」
その重い宣言に、レティシアは一瞬躊躇する。これはもはや、レティシア一人の命の問題ではなく、国同士の未来を懸けた問題になってしまったからだ。
「構わん」「やれ」
だが、ルークとアリエッタは、力強く頷いて彼女の背中を押した。
皇族たる二人は知っているのだ。
レティシアの作る『料理』という名の、魔法の凄さを。
「わかりました」
◇
その場で、レティシアの即席クッキングが始まった。
どこから湧いて出たのか、いつの間にか無数の精霊達が集結している。
精霊たちはこの場の張り詰めた空気など全く気にしていない。ただ、レティシアがいつも通り美味いものを作ってくれるのだと、純粋に期待しているのだろう。
レティシアは早速、精霊の空間収納から調理器具とエッゾ特産のマトン肉を取り出し、手際よく調理を始めた。
「加工の精霊さん、いますか!」
レティシアが声をかけると、数体の精霊が「ハーイ!」と元気よく手を挙げて、ちょこちょこと前に出てくる。
レティシアは精霊達に「こういう形のお鍋を作って欲しいのですけれど……」と、雪の上に木の枝で何かの図面を描く。
精霊たちは「オッケー!」と両手で丸を作ると、さっそく加工に取り掛かる。
レティシアが持ってきた平らな鉄板が……精霊たちの不思議な力で、見る見るうちに変形していった。
「……女。なんだこれは?」
ウヒュイが、訝しげにレティシアに話しかけてきた。
「お鍋ですわ!」
「鍋……器の形をしていないぞ。真ん中が山のように盛り上がっているではないか」
普通の鍋といえば深く窪んでおり、そこに汁や野菜、肉を投入して煮込むものだ。
「これは、今から作るお料理にマストな、特別なお鍋なんです!」
レティシアは、真ん中がドーム状に盛り上がった独特な形をした分厚い鉄鍋を熱し、特製のタレにたっぷりと漬け込んだマトン肉と野菜を豪快に焼き上げていく。
ジュウウウウウウウッ!
「な、なんだこの……とんでもなく美味そうな香りは!」
タレが焦げる暴力的なまでに食欲をそそる香りに、ウヒュイはもちろん、氷竜までもがダラダラと涎を垂らしながら、鉄鍋をガン見している。
だが、氷竜は決して暴れたり奪い取ろうとはせず、「待て」の言いつけを忠実に守り、じっと我慢していた。
「さあ、焼き上がりましたわ」
「女……なんだ、この見たこともない料理は? ただ肉を焼いただけの野営飯とは違うようだが」
「はい……これは、『ジンギスカン』というお料理です!」
「ジンギスカン……?」
エミシの民はもちろん、エッゾの民ですら聞いたこともない未知の料理。
当然だ。ジンギスカンとは、異世界の地球の料理なのだから。
「ふ、ふん……これほど大見得を切って、一体何を出すのかと思っていたら、ただの焼いた肉だと?」
ウヒュイの目には、明確な失望の色が見て取れた。
「肉を焼いて食う。それは我らエミシだけでなく、そこのエッゾ民ですら野営で日常的にやっていることだ。国同士の命運を懸けて、そんなありふれたものしか用意できないのか」
「いいえ。ジンギスカンは、『焼きながら』食べるのですわ」
つまりは、焼肉だ。この異世界では、リアルタイムで肉を焼きながら、その場で熱々を食うという文化は存在しない。
料理とは、料理人が厨房で作り完成させたものを、皿に盛って提供するものだ。そういう常識があるからだ。
「焼きながら食う……?」
「ええ。こうするんですの」
レティシアが鉄鍋の手前の肉をひっくり返す。すると、再びじゅううっ、と食欲を刺激する音と共に肉が焼ける。
彼女は焼きたての肉を、特製のタレにたっぷりとつけた。
「さあ、まずはどなたから?」
「俺だ」
真っ先に名乗り出たルークに、腹ペコで待たされている氷竜が不満の声を上げる。
『おいらのためにつくってくれた料理なのに……!』
「黙って待て。俺が毒見をしてやる」
『ひううう……こわいい……』
ルークの威圧感に気圧され、巨大な氷竜が情けなく後退りする。
ルークはレティシアから小皿を受け取った。
タレを纏わせた肉を、野菜と一緒に口へ運ぶ。
「う、美味い……!」
ルークの燃えるような赤い瞳が、限界まで大きく見開かれた。
「マトン独特の嫌な臭みが全く感じられない。焼きたての肉は恐ろしく香ばしいし、このタレが肉の味を何倍にも引き上げている!」
ごくり、と。氷竜、そしてウヒュイすらも、思わず大きな音を立てて生唾を飲み込む。
ついでに、周囲の精霊達もごくりと唾を飲んだ。彼らの手にはすでに小さな葉っぱの皿が握られており、レティシアの前にはしっかりとお行儀よく行列ができていた。
「さあさあ、皆様で一緒にいただきましょう!」
「はぐっ……うま……っ!」
エミシの戦士たるウヒュイも、伝説の氷竜も、ルークたちも、我を忘れて夢中になって熱々のジンギスカンを頬張る。
「こら! それは俺の肉だぞ!」
ルークの焼いていた肉を、精霊たちが横から容赦なくかっぱらう。
『お姉ちゃんお姉ちゃん! おいら、もっと食べたいよぅ! 焼いて焼いてぇっ!』
腹ペコの氷竜だが、決して自分だけで肉を独占しようとはしない。
そもそも体が大きすぎるため、鉄鍋で肉を焼くといった繊細な動きができないのだ。
レティシアは満面の笑顔で次々と肉を焼き、氷竜の大きな口へと直接運んでやる。
「…………」
人、精霊、竜。
種族も常識も全く異なる彼らは、レティシアの作った『料理』を中心として、一つの温かい食卓を囲んでいた。
「見事だろう」
と、アリエッタが静かにウヒュイに声をかける。
「あの娘は、魔法使いかなにかか? 違う種族の心を操り、従わせるなんて」
「心を操ってなどいない。ただあいつは、とびきり『美味い飯』を作っただけだ」
料理を作る。これは、理屈の上では誰にでもできることだ。
だが彼女は、その「誰でもできること」で、この世界では「誰にもできないはずの不可能」を可能にしてみせた。
決して人間に力を貸さぬはずの誇り高き精霊が、喜んで鍋を打ち、彼女に力を貸している。
人を餌としてしか見ていないはずの恐ろしき魔物が、人と共に並んで料理を食べている。
魔法を使ったわけでも、言葉で精神を惑わしたわけでもない。
生まれ持った加護の力が絶対とされる、この理不尽な世界で。
加護を持たない彼女は、己の『料理の腕』と『深い愛情』だけで、それを有言実行してみせたのだ。
「あの娘は、エッゾの何なのだ?」
ウヒュイの問いに、その話を隣で聞いていたルークが、姉より先に誇らしげに答える。
「俺の宝だ」
「…………そうか」
エミシの民であるウヒュイですら、噂には聞いている。エッゾの皇族には、加護を持たぬ恐ろしい狂犬がいると。
ところが、実際に会ってみるとどうだ。
彼は、身を挺して他者の命を守ろうと動く、気高き戦士であった。
「ウヒュイよ」
と、アリエッタが彼を真っ直ぐに見据える。
「エッゾは、変わろうとしている。あの加護なしの娘を弟の元へ嫁がせると決断したのは、我が長兄であり、現皇帝代行のカーティスだ」
アリエッタは、手袋を外し、ウヒュイへと右手を前に差し出した。
「我らと、共に変わろう。新しい時代へ」
ウヒュイはアリエッタの差し出した手を見て、ぽつりと呟いた。
「氷竜も、ちゃんと待つことができたな……。こんな魔物は初めてだ……」
ウヒュイは、美味しそうに肉を食べる氷竜の姿を見て、自身の凝り固まった認識を改めた。
「魔物は全てが悪神だと思っていた。だが……違うのだな」
近くで肉を焼きまくっていたレティシアが、こちらへ近づいてきた。
精霊たちは焼肉を中断されて、皆が「ぶーぶー」とウヒュイに抗議のブーイングを送っている。
「そうですよ。人間に善人と悪人がいるように、魔物にだって良い子と悪い子がいるんです」
レティシアが優しく微笑むと、ウヒュイは深く頭を下げた。
「すまない。俺たちが勘違いして、お前を攻撃してしまったのだな」
『いいよー! お肉美味しいから許す!』
氷竜が嬉しそうに鳴き、ルークの通訳によって、両者の間にあった悲しい誤解は綺麗に解けた。よかったよかった、とレティシアも胸を撫で下ろす。
「アリエッタ殿」
ぎゅっ、と。ウヒュイはアリエッタの差し出した手を、力強く握り返した。
「俺たちエミシも、この北の大地に吹く新しい風に、乗ってみようと思う」
そこへ、ウヒュイの後ろから、一人の眼鏡をかけた知的な青年が安堵の息を吐きながら進み出てきた。
エッゾ第一皇子、カーティスである。
「アリエッタ! ルーク! 無事か……ええ!? って、う、ウヒュイ殿!?」
カーティスは、信じられないものを見る目で、ルークとアリエッタ、そしてウヒュイたちを交互に見つめた。
「おお、カーティス兄上。遅かったな」
「兄上。無事で何よりです」
皇族の二人が、ひどく暢気に言う。ずり下がった眼鏡を、カーティスは慌てて掛け直す。
「いや、それはこっちの台詞だよ……って、ええ!? ひょ、氷竜!? なんでこんな伝説の古竜がここにいるんだい!? てゆーか! こんな雪原の野外で、君たちは一体何をやっているのさ!」
本当に、その通りであった。こんな極寒の雪空の下、野外で焼肉の宴会をするなど、常識的に考えてどうかしているとしか言いようがない。
「ジンギスカンパーティですわ!」
レティシアが、鉄鍋でジュウジュウと肉を焼きながら、満面の笑顔で答える。
「で……彼女は一体、誰なんだい? ……二人とも」
絶体絶命の危機に突然現れ、Sランクの魔物を手懐け、エッゾとエミシの間に和睦をもたらした謎の令嬢。
ルークは胸を張り、これ以上ないほどの堂々たるドヤ顔で答えた。
「異国からやってきた、俺の自慢の嫁だ。兄上」
【おしらせ】
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