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二十通目 旅の商人(ゆきは)
遠く遠くはるか東の国から
訪れたのは商人の一団
その中の一人貧相な男
ミナの目を治せるかもしれない
放っておけるはずがない
そんな話
もう見えることはないと言われた
放っておけるはずがない
むごい話
私のとりえは笑うことだけ
ミナのために笑うことだけ
あなたのためなら天地が滅んでも
男が見せた透明な水
それは空にも届く大樹の露
それは精霊の森にあるという
ミナの家の一年分
それが露に払うお金
手の平にちょうどの瓶のお金
私は聞いた目にだけ効くのか
男は答えた小さな傷など一瞬と
それが嘘なら金はいらぬと
私は聞いた必ず効くのか
男は答えた大病は限りでないと
効くか否かは運次第だと
なるほどそれなら買いましょう
あなたの言葉を信じましょう
その露ふたつ買いましょう
守護のかかった我が家のナイフ
手の内にそっとあてがう
これで小さな傷の出来上がり
熱き痛みは友のため
今なお見えぬ眼のため
ミナと同じ未来を見据えるため
ナイフに付いた近衛の紋章
男は慄き逃げていく
私はそっとため息を
彼は今日にも受け取るだろう
青ざめる手紙という名の木の札を
罪人のしるしを得るだろう
商人さんはとミナが問う
忘れ物らしいと私は答える
そこに卑しい記憶は残さない
光が戻るその時までは
決して私が汚させない




