訓練場
昼休み。
座学が終わった瞬間、教室の空気が少しだけざわついた。
原因は多分、俺だ。
「初級って、魔力の流れが分かりやすいんですよ」
さっき言った言葉を思い出す。
別に変なことを言ったつもりはない。
でも周囲からすると違うらしい。
「おいユウト!」
教室を出た瞬間、ガルドが駆け寄ってきた。
「今から訓練場来い!」
「なんで」
「座学で言ってたやつ見せろ!」
「嫌だよ」
「なんでだよ!」
朝からうるさい。
後ろでセイルが笑っている。
「ガルド、お前ほんと元気だな」
「気になるだろ普通!」
気持ちは分からなくもない。
でも人前でやりたくない。
「ユウト」
リアが立ち上がる。
「行けば」
「なんでリアまで」
「私も少し気になる」
逃げ道がなくなった。
◇
訓練場は昼なのに人が多かった。
授業終わりの生徒達が、思ったより集まっている。
「マジでやるのか?」
「ホブゴブリンのやつだろ?」
嫌な予感しかしない。
「ほら!」
ガルドが木剣を投げてくる。
仕方なく受け取った。
「……少しだけだからな」
木剣を構える。
風。
足へ魔力を流す。
一歩。
加速。
そのまま火球を二つ展開。
「うお」
周囲が少しざわつく。
火球を放つ。
同時に水属性。
軌道を押す。
片方の火球が曲がった。
「……は?」
ガルドが固まる。
「今、水で押した?」
「少しだけ」
「そんなこと出来んのか?」
「初級なら軽いし」
「いや意味分かんねぇ……」
周囲も静かだった。
すると後ろから声。
「魔力消費は」
レオンだった。
今日は昼だった。
でもなんか最近よく会う。
「そこまで重くない」
「多重でか?」
「慣れれば」
レオンが少し考える顔をする。
「熟練はいくつだ」
空気が変わる。
熟練度。
高等部では、中級熟練1〜2が普通。
3で優秀。
初級熟練なんて、
途中で止まるのが普通だ。
「火が8、水と風が7、土が9くらい」
静かになる。
「……は?」
ガルドが変な声を出した。
「待て待て待て」
「何」
「初級でそんな上がんの!?」
「上がるだろ」
「上がんねぇよ!」
周囲もざわついていた。
「ていうか9ってなんだよ……」
「初級だろ?」
レオンだけが黙っている。
「……だからか」
小さく呟く。
「だから?」
「お前の魔力の流れが軽い理由だ」
意味が分からない。
「普通、中級を覚えた時点で初級は止まる」
レオンが続ける。
「だから魔力の癖が固定される」
横でリアが小さく頷いた。
「でもユウトは違う」
「全部流れてる」
また難しい話になってきた。
「いや分からん」
「お前、自覚ないのか……」
ガルドが引いた顔をする。
その時。
「おい見ろ」
後ろから声。
上級生達だった。
「あれがホブゴブリンの?」
「初級だけらしいぞ」
視線が集まる。
昨日までとは違う。
馬鹿にする感じじゃない。
もっと、
“なんだコイツ”
みたいな目だった。
「……面倒だな」
小さく呟く。
するとリアが少しだけ笑った。
「有名人」
「やめてくれ」




