らしくない
ユウトは走り出した。
子供へ向かって。
ではなかった。
老人へ向かって。
でもなかった。
村の中央だった。
「おい!」
王の声が響く。
「何をしている」
ユウトは止まらない。
村の広場へ飛び込む。
そして。
大声で叫んだ。
「動ける奴は全員動け!」
一瞬。
村人達が固まる。
「子供を連れて広場へ来い!」
「怪我人も運べ!」
「急げ!」
自分でも驚いた。
何を言っているんだろうと思った。
でも。
身体が勝手に動いた。
その時。
魔物が一体飛び掛かってくる。
ユウトは木剣を振る。
叩き落とす。
「早く行け!」
村人達が走り出した。
子供も。
大人も。
動き始める。
その瞬間。
ユウトは気付いた。
じいちゃんなら。
たぶん違う。
リシアも違う。
二人は迷わず飛び込んだ。
だが。
自分は違った。
まず周囲を動かそうとした。
それが正しいかは分からない。
でも。
自然にそうなった。
その時だった。
世界が止まる。
再び。
全てが静止する。
「……は?」
ユウトが振り向く。
王がいた。
巨大な身体。
金色の瞳。
いつの間にか目の前にいた。
「なるほど」
王が呟く。
「なんだよ」
ユウトが睨む。
王は少しだけ笑った。
「祖父にも似ておらん」
一瞬だけ間。
「リシアにも似ておらん」
ユウトが眉をひそめる。
なら何だ。
そう言いたかった。
すると。
王が続けた。
「だから面白い」
その瞬間。
村が消えた。
空が消えた。
景色が崩れる。
「っ!?」
ユウトが目を見開く。
世界そのものが砕けていく。
そして。
王の声だけが響いた。
「第一試練終了」
静かな声だった。
「合格だ」
ユウトは思わず固まった。
「……え?」
あまりにもあっさりしていた。
戦ってもいない。
誰も助けていない。
なのに。
王は確かに言った。
合格だと。
そして。
次の瞬間。
王の表情が少しだけ真面目になる。
「では次だ」
嫌な予感がした。
とても。
嫌な予感が。
「待て」
ユウトが言う。
「次って何だ」
王は即答した。
「第二試練」
そして。
少しだけ楽しそうに笑った。
「こっちが本番じゃ」




