選べない
村の悲鳴が響く。
子供が泣く。
老人が助けを求める。
時間が無い。
ユウトは拳を握った。
「くそっ……!」
走り出そうとして。
止まる。
どっちだ。
子供か。
老人か。
いや。
奥にも人がいる。
全員助けたい。
だが。
間に合わない。
「選べ」
王の声が響く。
ユウトは歯を食いしばる。
「選べるわけないだろ!」
叫ぶ。
その瞬間。
世界が止まった。
悲鳴も。
風も。
全て。
ピタリと止まる。
「……?」
ユウトが周囲を見る。
そして。
気付く。
目の前に誰かいた。
「じいちゃん」
いつの間にか立っていた。
若い頃のじいちゃんだった。
村人も。
魔物も。
全部止まっている。
動いているのは二人だけ。
「お前は勘違いしとる」
じいちゃんが言う。
「何がだよ」
「選ぶ相手をじゃ」
意味が分からない。
ユウトが眉をひそめる。
すると。
じいちゃんは村を見る。
「儂は村人を選んだ」
「ああ」
「リシアは家族を選んだ」
「聞いた」
じいちゃんが頷く。
そして。
ユウトを見る。
「じゃがな」
一瞬だけ間。
「本当に選んだのは人じゃない」
風も無いのに。
木々が揺れた。
「え?」
「儂は自分の生き方を選んだ」
ユウトが固まる。
「自分の……」
「そうじゃ」
じいちゃんが笑う。
「だから後悔しとらん」
その言葉は重かった。
強がりではない。
本心だった。
「助けられなかった奴もおる」
「守れなかった奴もおる」
じいちゃんの目が少し遠くなる。
「それでも」
一瞬だけ間。
「儂は儂を曲げんかった」
ユウトは黙る。
言葉が出ない。
その時。
再び世界が動き出した。
悲鳴。
風。
魔物の咆哮。
全部が戻る。
じいちゃんの姿は消えていた。
代わりに。
王の声が響く。
「答えは見つかったか」
ユウトは前を見る。
子供がいる。
老人がいる。
助けを求める人達がいる。
そして。
初めて気付く。
試練は誰を助けるかじゃない。
自分が何を選ぶ人間なのか。
それを問われているのだと。
ユウトは大きく息を吸った。
そして。
走り出した。




