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『初級魔術しか使えない俺が、なぜか最強に近づいている』  作者: 北こたろう


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リシア

そこにいたのは。


 一人の女性だった。


「……?」


 ユウトが目を細める。


 どこか見覚えがある。


 いや。


 違う。


 似ているんだ。


 長い髪。


 整った顔立ち。


 どこか優しそうな雰囲気。


「リア……?」


 違う。


 年上だ。


 そして気付く。


「……これが」


 一瞬だけ間。


「リアのお母さんか」


 じいちゃんが小さく頷く。


「ああ」


「若い頃のリシアじゃ」


 その時。


 若いリシアが走り出す。


 森の中だった。


 何かを追っている。


「フェンリル?」


 ユウトが目を細める。


 少し先。


 一頭のフェンリルがいる。


 だが。


 様子がおかしい。


 傷だらけだった。


 血も流れている。


「待って!」


 リシアが叫ぶ。


 フェンリルが振り返る。


 そして。


 倒れた。


 ユウトは息を呑む。


 だが。


 リシアは迷わなかった。


 駆け寄る。


 治癒魔法。


 止血。


 必死だった。


「……似てるな」


 ユウトが呟く。


「誰にじゃ」


「リアに」


 じいちゃんが少し笑った。


「ああ」


「昔からそうじゃ」


 その時。


 景色が変わる。


 数日後らしい。


 傷を負ったフェンリルは回復していた。


 そして。


 リシアの隣にいる。


 まるで友達みたいに。


「まさか」


 ユウトが息を呑む。


「加護か」


「そうじゃ」


 じいちゃんが頷く。


「リシアも選ばれた」


 若いリシアが笑う。


 フェンリルも嬉しそうだった。


 だが。


 その光景を見ているじいちゃんの顔は少し複雑だった。


「どうした」


 ユウトが聞く。


 じいちゃんは少し黙る。


 そして。


「儂は村人を選んだ」


 一瞬だけ間。


「リシアは家族を選んだ」


 風が吹く。


 ユウトは黙る。


 まだ意味が分からない。


「家族?」


「ああ」


 じいちゃんが頷く。


「人間の男じゃ」


 ユウトの目が大きくなる。


「リアのお父さん?」


「そうじゃな」


 その時。


 景色が変わる。


 若いリシアが立っている。


 その前には。


 長老。


 そして。


 若い頃のじいちゃん。


 三人とも真剣だった。


 何かを話している。


 だが。


 声は聞こえない。


 それでも分かった。


 別れだ。


 リシアは泣いていた。


 長老も辛そうだった。


 そして。


 じいちゃんだけが腕を組んでいる。


「……また喧嘩したのか」


 ユウトが聞く。


 じいちゃんが吹き出した。


「最後までした」


「だろうな」


 思わず笑ってしまう。


 だが。


 次の瞬間。


 じいちゃんの表情が消えた。


「ユウト」


 静かな声だった。


 景色が止まる。


 リシアも。


 長老も。


 若いじいちゃんも。


 全部止まる。


「儂も」


「リシアも」


 一瞬だけ間。


「選んだ結果、ここで終わった」


 ユウトの胸がざわつく。


「でも」


 じいちゃんが真っ直ぐ見る。


「お前はまだ選んでおらん」


 その言葉と同時に。


 世界が大きく揺れた。


 どこからか。


 遠くで。


 獣の咆哮が響いた。

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