資格
湖が大きく揺れた。
「ユウト!」
リアが思わず声を上げる。
だが。
ユウトは動けなかった。
石碑を見ている。
自分の名前。
間違いない。
確かに刻まれている。
「なんで……」
思わず呟く。
案内人は静かだった。
驚いていない。
まるで。
最初から分かっていたように。
「これで三人目だ」
静かな声。
ユウトが顔を上げる。
「三人目?」
「ああ」
案内人が頷く。
「この時代ではな」
その言葉に。
リアが石碑を見る。
祖父。
リシア。
そしてユウト。
確かに三人だった。
「待ってください」
リアが聞く。
「私は?」
案内人は少しだけ考えた。
そして。
「まだだ」
即答だった。
リアが固まる。
だが。
案内人は続ける。
「資格が無いわけではない」
「ただ違う」
「違う?」
案内人は頷く。
「お前はここへ導く側だからだ」
意味が分からない。
リア自身も理解できていない。
その時。
石碑がさらに光る。
ユウトの名前の下。
新しい文字が浮かび上がる。
『第一試練』
空気が変わる。
案内人の表情から笑みが消えた。
「始まるな」
その声に。
ユウトの背筋が伸びる。
「試練って何なんですか」
案内人は少しだけ笑った。
「お前達は勘違いしておる」
どこか先代長老と似た言い方だった。
「強くなる者が試練を越えるのではない」
一瞬だけ間。
「試練を越えた者が強くなる」
その瞬間。
石碑が眩く光った。
ゴォォォッ――
湖全体が震える。
ユウトは思わず目を閉じた。
だが。
次に目を開けた時。
「……は?」
景色が変わっていた。
湖が無い。
島も無い。
案内人もいない。
そこは森だった。
見覚えがある。
何度も見た。
夢の中で。
何度も。
そして。
少し離れた場所に。
一人の男が立っていた。
後ろ姿だった。
古びた木剣。
見慣れた背中。
忘れるはずがない。
ユウトの喉が震える。
「……じいちゃん?」
男がゆっくり振り返った。




