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『初級魔術しか使えない俺が、なぜか最強に近づいている』  作者: 北こたろう


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案内人

ゆっくりフードへ手を掛けた。


 ユウト達は息を呑む。


 そして。


 フードが外れた。


「……え?」


 思わず声が漏れる。


 若かった。


 いや。


 若く見える。


 二十代後半くらいだろうか。


 銀色の髪。


 透き通るような青い瞳。


 エルフにも見える。


 だが。


 どこか違った。


「驚いたか?」


 男が笑う。


「まあ毎回同じ反応だ」


 気さくな声だった。


 だが。


 その場の空気だけが違う。


 まるで。


 この場所そのものが男を中心に動いているような感覚。


 ユウトは知らないうちに剣へ手を伸ばしていた。


 男が気付く。


「警戒しなくていい」


 小さく笑う。


「少なくとも敵ではない」


 その時。


 子フェンリルが走り出した。


「グル!」


 男の足元へ飛び付く。


 男は慣れた様子で頭を撫でた。


「大きくなったな」


 子フェンリルが嬉しそうに尻尾を振る。


 その様子に。


 ユウトとリアは顔を見合わせた。


 知り合いだった。


 しかもかなり。


「あなたは……」


 リアが聞く。


 男は少しだけ考えた。


「案内人だ」


「案内人?」


「そう呼ばれている」


 それだけだった。


 本名を言う気は無いらしい。


 ユウトは周囲を見る。


 湖。


 島。


 そして男。


 どれも意味が分からない。


「ここは何なんですか」


 男は静かに湖を見る。


「境界だ」


「境界?」


「ああ」


 男が頷く。


「人とフェンリル」


「過去と未来」


「選ぶ者と選ばなかった者」


 一瞬だけ間。


「全ての境界だ」


 相変わらず意味が分からない。


 だが。


 男は気にせず続ける。


「お前達は特別だ」


 その視線がユウトへ向く。


「フェンリルに選ばれた者」


 次にリアを見る。


「そしてフェンリルを捨てた者の娘」


 リアの肩が揺れる。


「母さんが……?」


 男は頷く。


「リシアはここまで来た」


「だが引き返した」


 ユウトは息を呑む。


 聞いたことがある。


 祖父も同じだった。


「じいちゃんも?」


「ああ」


 男が答える。


「あの剣馬鹿もな」


 一瞬。


 空気が止まった。


「剣馬鹿?」


「剣馬鹿だろう?」


 男は真顔だった。


 否定できない。


 ユウトも。


 なぜか否定できなかった。


 その時。


 男の表情が少しだけ変わる。


 笑みが消える。


「だが」


 一瞬だけ間。


「お前達は違う」


 湖が揺れる。


 今まで静かだった水面が。


 ゆっくり波立ち始める。


 ユウトの胸がざわつく。


 リアも同じだった。


「どういう意味ですか」


 ユウトが聞く。


 男は静かに振り返る。


 島の中央を見る。


 そこには。


 巨大な石碑が立っていた。


 さっきまでは無かったはずなのに。


 今は確かにある。


 そして。


 石碑には二つの名前が刻まれていた。


 ユウトは目を見開く。


 リアも固まる。


 そこに刻まれていたのは。


 祖父の名と。


 リシアの名だった。

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