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『初級魔術しか使えない俺が、なぜか最強に近づいている』  作者: 北こたろう


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湖の中心

向こうも。


 こちらを見ていた。


 ユウトの背筋に緊張が走る。


 だが。


 敵意は感じない。


 不思議だった。


 むしろ。


 どこか懐かしい。


「……誰だ」


 思わず呟く。


 返事は無い。


 人影は動かない。


 ただ立っているだけ。


 その時。


 リアが小さく声を漏らした。


「水が……」


 ユウトが足元を見る。


 一瞬。


 息が止まった。


 湖の上だった。


「は?」


 慌てて下を見る。


 だが沈まない。


 足元だけが薄く光っている。


 まるで見えない床があるみたいだった。


「なんだこれ」


 その時。


 子フェンリルが振り返る。


「グル」


 当たり前だろ。


 そう言いたげな顔だった。


「お前知ってたのかよ」


「グル」


 否定しなかった。


 そして。


 また歩き出す。


 仕方なく後を追う。


 湖の上を歩く。


 意味が分からない。


 だが。


 進むほど景色が変わっていく。


「……」


 ユウトが足を止めた。


 水面が揺れている。


 風は無い。


 なのに。


 足元だけが波打つ。


 そして。


 映った。


 水面に。


 一人の男が。


「っ!」


 反射的に振り向く。


 誰もいない。


 だが。


 水面にはいる。


 見覚えのある背中。


 剣を持っている。


 何度も見た。


 子供の頃から。


「……じいちゃん?」


 次の瞬間。


 水面の男が振り返る。


 だが。


 顔は見えなかった。


 そこで映像が消える。


 波紋だけが残る。


「今の……」


 ユウトが固まる。


 リアも同じだった。


 少し離れた場所。


 リアの足元の水面も揺れていた。


「リア?」


 声を掛ける。


 返事が無い。


 リアは水面を見ていた。


 信じられないものを見るように。


「母さん……」


 小さな声。


 ユウトは理解する。


 リアも見たのだ。


 自分と同じように。


 その時。


 湖の中央から声が響いた。


「なるほど」


 低い声だった。


 老人でもない。


 長老でもない。


 聞いたことがない。


「今回は二人か」


 ユウト達が顔を上げる。


 島の人影。


 さっきより近い。


 いや。


 違う。


 向こうが歩いてきている。


 湖の上を。


 まるで当たり前のように。


 そして。


 人影が止まる。


 まだ顔は見えない。


 だが。


 次の言葉で空気が変わった。


「フェンリルも随分と待たせたな」


 子フェンリルが耳を立てる。


「グル!」


 初めてだった。


 嬉しそうな声を出したのは。


 人影が小さく笑う。


「そう怒るな」


 一瞬だけ間。


 そして。


 ゆっくりフードへ手を掛けた。

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