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『初級魔術しか使えない俺が、なぜか最強に近づいている』  作者: 北こたろう


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向こう側

魔法陣の中央がゆっくり開き始めた。


 光が溢れる。


 眩しくて目を細める。


「……門?」


 ユウトが呟く。


 崖のはずだった場所。


 だが今は違う。


 そこには光の通路があった。


 先が見えない。


 どこまで続いているのか分からない。


「長老」


 リアが聞く。


「この先に何があるんですか」


 長老は少しだけ考えた。


 そして。


「誰も知らん」


 即答だった。


「え?」


 ユウトとリアの声が重なる。


 先代長老が笑う。


「正確には毎回違う」


「違う?」


「ああ」


 老人は頷く。


「入る者によって変わる」


 意味が分からない。


 だが。


 冗談を言っている顔ではなかった。


 その時。


 子フェンリルが通路へ向かう。


「グル!」


「待て!」


 ユウトが慌てる。


 だが。


 長老が手を上げた。


「止めるな」


「え?」


「案内している」


 一瞬だけ空気が変わる。


 案内。


 その言葉に。


 子フェンリルを見る。


 確かに。


 迷いが無かった。


 最初から知っているように歩いている。


 先代長老が口を開く。


「ユウト」


「はい」


「最後に一つだけ聞く」


 老人の表情は真剣だった。


「お前は今」


 一瞬だけ間。


「力が欲しいか?」


 静寂。


 風も止まる。


 ユウトは考えた。


 昔なら。


 迷わず頷いていたかもしれない。


 だが。


 今は違う。


 老人との話。


 祖父の話。


 全部聞いた。


「欲しいです」


 ユウトは答える。


「でも」


 老人は黙って聞いている。


「力のために誰かを捨てる気はありません」


 先代長老が笑った。


 どこか安心したような顔だった。


「そうか」


 それだけだった。


 だが。


 十分だった。


 長老が前へ出る。


「なら行け」


「俺達だけですか?」


「ああ」


 長老が頷く。


「ここから先はお前達の道だ」


 リアがユウトを見る。


 ユウトも頷く。


 そして。


 二人は前を向いた。


 子フェンリルが先頭。


 その後ろを歩く。


 一歩。


 また一歩。


 光の通路へ足を踏み入れる。


 次の瞬間。


 景色が変わった。


「……え?」


 思わず声が漏れる。


 森ではなかった。


 洞窟でもない。


 目の前に広がっていたのは。


 どこまでも続く巨大な湖だった。


 静かだった。


 風もない。


 波もない。


 まるで鏡だった。


 そして。


 湖の中央。


 小さな島が一つだけ見える。


 その島に。


 誰かが立っていた。


 人影だった。


 遠い。


 顔は見えない。


 だが。


 なぜか分かる。


 向こうも。


 こちらを見ていた。

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