入口
森の空気が変わった。
長老が歩く。
先代長老が歩く。
ユウト達は後ろを付いていく。
道は無い。
だが。
二人は迷わない。
「本当にあるんですね」
ユウトが呟く。
「何がじゃ」
「加護を得た人しか行けない場所」
先代長老が笑う。
「無かったら困るわい」
その時。
子フェンリルが急に立ち止まった。
「グル」
耳が立つ。
長老も足を止める。
「着いたか」
目の前には崖。
行き止まりだった。
「……え?」
ユウトが首を傾げる。
どう見ても道は無い。
リアも同じだった。
「ここ?」
「ああ」
長老が答える。
「入口だ」
「壁ですよ?」
「そう見えるだけじゃ」
先代長老が前へ出る。
そして。
崖へ手を置いた。
次の瞬間。
ブワッ――
空気が震える。
岩肌に光が走った。
「なっ……!?」
ユウトが目を見開く。
崖だと思っていた場所に。
巨大な魔法陣が浮かび上がる。
四つの光。
赤。
青。
緑。
黄。
四属性だった。
「これ……」
ユウトの胸が熱くなる。
見たことがない。
だが。
知っている気がした。
夢で見た森。
懐かしさ。
全部が繋がる。
その時。
魔法陣の一部が光る。
赤だった。
次に青。
そして緑。
最後に黄。
四つの光が順番に輝く。
長老が静かに言った。
「見えるか」
「はい」
「リアは」
「……見えます」
先代長老が頷く。
「なら間違いない」
ユウトは聞く。
「何がですか」
一瞬だけ沈黙。
そして。
先代長老が答えた。
「お前達は選ばれておる」
風が吹く。
魔法陣がさらに強く輝く。
「祖父も」
「リシアも」
「ここへ来た」
ユウトの鼓動が早くなる。
リアも息を呑む。
その時だった。
子フェンリルが前へ出る。
「グル」
小さな前脚で魔法陣へ触れる。
次の瞬間。
ゴォォォッ――!
森全体が震えた。
「っ!?」
光が空へ伸びる。
長老が目を細めた。
先代長老が苦笑する。
「なるほどな」
「予定より早い」
ユウトは意味が分からない。
「何がですか」
長老が静かに答えた。
「向こうがお前に気付いた」
その瞬間。
魔法陣の中央がゆっくり開き始めた。




