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『初級魔術しか使えない俺が、なぜか最強に近づいている』  作者: 北こたろう


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受け継いだもの

「お前は祖父殿から何を受け継いだ?」


 その問いに。


 すぐ答えることはできなかった。


 祖父から受け継いだもの。


 考えたこともなかった。


「剣……ですかね」


 とりあえず答える。


 老人は首を振らない。


 だが。


 頷きもしない。


「それは教わったものだ」


「え?」


「儂が聞いておるのは違う」


 風が吹く。


「祖父殿が残したものだ」


 意味が分からなかった。


 剣じゃない。


 魔法じゃない。


 技術じゃない。


 なら何だ。


「分かりません」


 正直に答える。


 老人は小さく笑った。


「そうだろうな」


 怒る様子もない。


 むしろ納得していた。


「祖父殿も若い頃は同じ顔をしておった」


「祖父が?」


「ああ」


 老人は懐かしそうに空を見る。


「自分が何者か分からん顔だ」


 リアが静かに聞いていた。


 少女も黙っている。


「だが」


 老人の視線が戻る。


「お前は似ておる」


「誰にですか」


「祖父殿に」


 即答だった。


「顔ではない」


「目だ」


 一瞬だけ沈黙。


「目?」


「ああ」


 老人は頷く。


「答えを教わるのを嫌う目だ」


 意味が分からない。


 だが。


 どこか納得する言葉でもあった。


「祖父殿は何でも自分で確かめた」


「人に言われても信じん」


「自分で見て」


「自分で決める」


 風が吹く。


「だから面倒だった」


 思わず苦笑する。


 確かに祖父らしい。


「じゃが」


 老人は少しだけ真面目な顔になった。


「だからこそ強かった」


 その時だった。


「グル」


 子フェンリルが立ち上がる。


 老人の横へ行く。


 そして。


 何かを見上げた。


「ん?」


 老人も視線を向ける。


 そこには。


 一振りの木剣が立て掛けられていた。


 古い。


 かなり古い。


 でも。


 丁寧に手入れされている。


「それは」


 思わず声が出る。


 老人は小さく笑った。


「覚えておるか?」


「え?」


「いや」


 首を振る。


 見たことがない。


 はずだった。


 なのに。


 どこか懐かしい。


 そんな感覚があった。


「祖父殿が置いていったものだ」


 老人は木剣へ視線を向ける。


「若い頃にな」


「また来ると言っておった」


 懐かしそうな声だった。


「じゃが結局来なかった」


 老人は苦笑する。


「だから儂が預かっておった」


 静かな風が吹く。


「まさか」


 一瞬だけ間。


「アークレイの名を持つ者が来るとはな」


 老人は立ち上がる。


 そして。


 木剣を手に取った。


「受け取れ」


 差し出される。


「祖父殿の物だ」


 その木剣は。


 思ったよりもずっと軽かった。

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