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『初級魔術しか使えない俺が、なぜか最強に近づいている』  作者: 北こたろう


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崩れない

森の奥から、低い鳴き声が響く。


 ガサガサと茂みが揺れる音。


「まだ来るのかよ……!」


 ガルドが顔を引きつらせた。


 さっきまでの余裕は完全に消えている。


 俺は息を整えながら周囲を見る。


 数は多い。


 でも統率はそこまでじゃない。


 囲んで、一気に襲う。


 ただそれだけ。


「リア」


「……うん」


 リアも理解したらしい。


 水膜を薄く広げる。


 前より範囲が広い。


 多分、俺達全員を守るつもりだ。


「セイル、後ろ見れるか」


「見る!」


「ガルドは前」


「はぁ!? 指示すんな!」


「火力はお前が一番高い」


「っ……!」


 一瞬だけ黙る。


 でも反論はしなかった。


 その時。


 ゴブリンが一斉に飛び出してきた。


「来るぞ!」


 火球。


 風。


 土。


 三属性を同時に回す。


 火球で牽制。


 土で足を崩す。


 風で軌道をずらす。


 ゴブリン同士がぶつかる。


「なっ……!?」


 ガルドが目を見開く。


「今だ!」


「お、おう!」


 炎が走る。


 ゴブリン二体が吹き飛んだ。


 そこへ一体が横から飛び込む。


 剣。


 弾く。


 もう一歩踏み込む。


 斬る。


 血が飛ぶ。


 生臭い。


 でも止まる暇はない。


「左!」


 リアの声。


 水弾が飛ぶ。


 ゴブリンの顔へ直撃。


 視界が潰れる。


 そこへ俺が入り、剣を振る。


「……ッ!」


 倒れる。


「なんなのコイツ……」


 ガルドが呆然と呟いた。


 分かる。


 自分でも変な動きしてると思う。


 でも身体が勝手に動く。


 祖父との訓練を思い出す。


『止まるな』


『考えながら動け』


『剣だけ見るな。流れを見ろ』


 何千回も聞いた言葉。


「後ろ!」


 セイルが叫ぶ。


 振り向く。


 大きい。


 普通のゴブリンじゃない。


「ホブゴブリン……!」


 ガルドの声が震える。


 筋肉質な身体。


 錆びた斧。


 ゴブリンの上位種。


 中級魔術が必要と言われる相手。


「なんでこんなの外周に……!」


 ホブゴブリンが吠える。


 地面を蹴った。


 速い。


「下がれ!」


 ガルドが火属性中級を展開する。


「《フレアランス》!」


 炎槍。


 直撃。


 ――しかし。


「は?」


 ホブゴブリンが止まらない。


 肩が焼けただけ。


「嘘だろ……!」


 距離が潰される。


 斧が振り上がる。


 ガルドが固まった。


 間に合わない。


「っ!」


 無属性強化。


 踏み込む。


 剣を横から叩き込む。


 重い。


 腕が痺れる。


 でも軌道が少し逸れた。


 斧が地面へ叩きつけられる。


「ユウト!」


 リアの水膜。


 衝撃が少し軽くなる。


 俺は歯を食いしばった。


 重い。


 強い。


 今までのゴブリンと違う。


 でも――


「……まだ動ける」


 風。


 一瞬だけ加速。


 横へ回る。


 火球。


 目を狙う。


 ホブゴブリンが顔を庇う。


 その隙。


 土属性。


 足元を崩す。


 体勢が揺れる。


「ガルド!」


「っ……!」


 ガルドが我に返る。


 炎槍を再展開。


「ぶっ飛べぇぇ!!」


 今度は顔面へ直撃した。


 爆炎。


 森へ熱風が広がる。


 ホブゴブリンが膝をつく。


「今!」


 リア。


 水弾。


 視界潰し。


 セイル。


 短剣。


 脚を切る。


 俺。


 踏み込み。


 無属性強化。


 全力。


 剣を振り抜く。


 首へ。


 一瞬、硬い感触。


 でも次の瞬間。


 斬れた。


 ホブゴブリンが崩れ落ちる。


 静かになる。


「……はぁ……」


 息が切れる。


 腕が痛い。


 でも立っている。


 ガルドが呆然とこちらを見ていた。


「お前……なんで……」


 俺にも分からない。


 ただ。


 気づけば身体が動いていた。


 リアが静かに俺を見る。


 その目だけが、少し違った。


 まるで、


 “何か”を確かめるみたいに。

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