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『初級魔術しか使えない俺が、なぜか最強に近づいている』  作者: 北こたろう


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実践演習

実戦演習の日。


 高等部の演習場には、朝から妙な緊張感があった。


「今年は外周森か」

「ゴブリン討伐らしいぞ」

「Cクラスは雑用だろ」


 そんな声が聞こえる。


 実際、ゴブリン討伐は高等部では初歩扱いだ。


 中級魔術を使えるなら、一体一体はそこまで脅威じゃない。


 問題は数と地形。


 特に森は視界が悪い。


「静かだな」


 横から声。


 レオンだった。


「緊張してるのか?」


「まあ少し」


「意外だな」


「死ぬかもしれないし」


「……それはそうだ」


 レオンは少しだけ笑った。


 昨日より空気が柔らかい。


 でも別に仲良くなったわけじゃない。


 ただ、“落ちこぼれ”を見る目では少しなくなっていた。


「整列!」


 教師の声が響く。


 前に立っていたのは、実戦担当らしい大柄な男だった。


「今回は外周森でのゴブリン掃討だ。基本は三〜四人で行動。無理はするな」


 そこで教師の目がこちらへ向く。


「特にCクラス。単独行動はするな」


 何人かが露骨に嫌そうな顔をした。


 Cクラスは見下されている。


 それは教師側も同じだ。


「では班を発表する」


 紙が貼り出される。


 人が集まる。


 俺も近づいた。


「……ん?」


 名前を見る。


【第三班】

・ユウト・アークレイ

・リア・フィンネル

・ガルド・ベイン

・セイル・ノクト


「最悪だ」


 後ろから声。


 振り向く。


 金髪の男子生徒――ガルドが露骨に顔をしかめていた。


「なんで初級持ちと同じ班なんだよ」


「ガルド」


 リアが少し睨む。


「いや事実だろ。実戦だぞ?」


 ガルドは俺を見る。


「足引っ張んなよ」


「努力はする」


「努力で死なれたら困るんだよ」


 ……まあ、それも間違ってない。


 実戦で弱い奴は危険だ。


 すると横にいた黒髪の男子――セイルが小さく笑った。


「まあまあ。まだ始まってもないし」


 軽い空気の男だった。


 でも視線だけは妙に周囲を見ている。


 多分、周りをよく見てるタイプだ。


「準備が済んだ班から出発しろ!」


 教師の声。


 森へ向かう生徒達が動き出す。


 俺達も無言で歩き始めた。


 森へ入ると、一気に空気が変わる。


 湿った匂い。


 静かな風。


 木々の隙間から光が差している。


「……いるな」


 リアが小さく呟いた。


「分かるのか?」


「水属性は感知得意だから」


 次の瞬間。


 ガサッ、と茂みが揺れた。


「来る!」


 飛び出してきたのは、小柄な緑色の魔物。


 ゴブリン。


 錆びた短剣を持っている。


「遅っせぇ!」


 ガルドが火属性初級を放つ。


 ゴブリンが吹き飛ぶ。


「ほらな。こんなの雑魚――」


 その瞬間だった。


 左右の茂みが同時に揺れた。


「っ!?」


 二体。


 三体。


 さらに後ろ。


「囲まれてる!」


 セイルが叫ぶ。


 ゴブリンは一体じゃなかった。


 森の中から次々出てくる。


「なんだこの数……!」


 ガルドが焦った声を出す。


 その隙を、一体が飛び込んだ。


「ガルド!」


 リアの水膜が間に合う。


 短剣が弾かれる。


 でも完全には防ぎ切れてない。


「チッ……!」


 まずい。


 位置が悪い。


 森の中じゃ中級は撃ちづらい。


 味方を巻き込む。


「ユウト!」


 リアが叫ぶ。


 俺は地面へ土属性を流した。


 ゴブリンの足が沈む。


「セイル、右!」


「お、おう!」


 風を流す。


 セイルの動きが少し速くなる。


 同時に火球。


 一体の視界を潰す。


 踏み込み。


 無属性強化。


 剣を振る。


 首。


 一体落ちる。


 すぐ次。


 風。


 火。


 土。


 剣。


 考えるより先に身体が動く。


「なんだコイツ……!」


 ガルドの声が聞こえた。


 でも止まれない。


 後ろ。


 リアへ向かってる。


「リア!」


 風を重ねて加速。


 間に入る。


 剣で短剣を弾く。


 そのまま火球。


 至近距離。


 ゴブリンが吹き飛ぶ。


 息が熱い。


 でもまだ終わってない。


 森の奥。


 さらに気配。


「……まだいる」


 リアの声が少し強張る。


 俺は剣を握り直した。


 ――実戦は、模擬戦とは全然違った。

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