表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『初級魔術しか使えない俺が、なぜか最強に近づいている』  作者: 北こたろう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
39/65

知らないこと

風が吹く。


 大樹の葉が揺れる。


 リアは空を見上げたままだった。


 子フェンリルは膝に顎を乗せている。


 完全に居座るつもりらしい。


「重い」


「グル」


 動く気はない。


 むしろ落ち着いていた。


 しばらく沈黙。


 不思議と嫌な空気じゃない。


「……ねえ」


 リアが小さく口を開く。


「ん?」


「私」


 一瞬だけ間。


「耳、普通だよね」


 思わず見る。


「普通だな」


「だよね」


 リアも自分の耳を触る。


「長くないし」


「魔法が特別得意なわけでもないし」


「今まで普通だった」


 そこは同感だった。


 少なくとも。


 リアがエルフだなんて考えたことはない。


「でも」


 リアが小さく笑う。


「長老達の反応見たら」


「嘘じゃなさそうなんだよね」


「ああ」


 あれは演技には見えなかった。


 その時。


「グル」


 子フェンリルが顔を上げる。


 そして。


 リアの耳をじっと見る。


「なんだ」


「グル」


 今度は鼻を近付けた。


「ちょっ」


 リアが少し身を引く。


「くすぐったい」


「グル」


 満足そうだった。


「こいつ何なんだ」


「知らん」


 思わず笑う。


 リアも少し笑った。


 でも。


 その笑顔は長く続かなかった。


「お母さん」


 ぽつりと呟く。


「私が小さい頃」


「ん?」


「昔の話を全然しなかったんだよね」


 初めて聞く話だった。


「聞いても?」


「うーん」


 リアが少し考える。


「そのうちね、って」


「いつもそれだった」


 風が吹く。


「子供の頃は気にしなかった」


「でも」


 一瞬だけ間。


「今思うと変だったのかな」


 答えは出ない。


 俺も知らない。


 リアも知らない。


 知っているのは。


 たぶんあの長老達だけだ。


 その時。


「グル!」


 突然。


 子フェンリルが立ち上がった。


「どうした?」


 耳を立てている。


 どこかを見るように。


 森の奥へ。


「グル」


 今度は少し低い声だった。


 リアも顔を上げる。


「……誰かいる?」


「分からん」


 でも。


 子フェンリルは確かに何かを見ていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ