真実
道を抜けた瞬間だった。
「……」
言葉が出なかった。
森の中。
なのに。
空は広い。
巨大な木々が円を描くように立ち並び、
その間に家々が建っている。
木を切って作ったわけじゃない。
まるで木と一緒に育ったみたいな家だった。
「すご……」
思わず声が漏れる。
リアも黙っていた。
子フェンリルだけが、
嬉しそうに走り回っている。
「グル!」
「お前は慣れてるだろうな」
その時だった。
視線を感じる。
上。
横。
家の窓。
木の上。
気づけば。
かなりの数のエルフがこちらを見ていた。
「人間だ」
「本当に来たのか」
「長老様が連れてきたらしい」
小さな声が聞こえる。
歓迎。
という感じではない。
でも。
敵意も無かった。
純粋な興味。
そんな感じだった。
その時。
前から一人の女性が歩いてくる。
長い銀髪。
リアより少し年上に見える。
耳は当然長い。
エルフだった。
「お帰りなさいませ」
女性が頭を下げる。
「長老様」
長老は小さく頷く。
「準備は」
「終わっています」
女性の視線がこちらへ向く。
そして。
一瞬だけ止まった。
「……?」
不思議そうな顔。
でも。
その視線はユウトじゃない。
リアだった。
「どうした」
長老が聞く。
女性は我に返る。
「いえ」
小さく首を振る。
「失礼しました」
でも。
歩き出したあとも、
何度かリアを見ていた。
リア自身も気づいている。
「なんか見られてない?」
「見られてるな」
「だよね」
小さく苦笑する。
その時。
長老が足を止めた。
目の前には、
里の中心にある大きな木。
里で一番大きい。
見上げるだけで首が痛くなる。
「ここだ」
長老が静かに言う。
「長老様」
銀髪の女性が少し困った顔をする。
「本当に今日なのですか?」
「構わん」
短い返事。
一瞬だけ空気が変わる。
「何がです?」
思わず聞く。
長老は巨大な木を見上げる。
そして。
静かに言った。
「お前達には、まず真実を知ってもらう」
一瞬。
リアが固まる。
「……真実?」
長老は答えない。
ただ。
巨大な木の奥へ歩いていった。
リアだけが、
どこか落ち着かない顔をしていた。




