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『初級魔術しか使えない俺が、なぜか最強に近づいている』  作者: 北こたろう


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夜の寮

「……絶対おかしいだろこれ」


 ガルドが真顔で言った。


 男子寮。


 俺の部屋。


 そして。


 部屋の真ん中には、

 普通に子フェンリルがいた。


「グル」


「いや自分の家みたいに座るな」


 ベッドの横で丸くなっている。


 完全に落ち着いていた。


「ほんとに連れて帰ってきたんだな……」


 ガルドが遠い目をする。


「お前途中で逃げると思ってた」


「俺も少し思ってた」


「グル」


「なんでそこで鳴くんだよ」


 その時。


 コンコン。


 扉が鳴る。


「ユウト」


 リアだった。


「入っていい?」


「どうぞ」


 扉が開く。


 リアは部屋へ入った瞬間、

 子フェンリルを見る。


 そして。


「……可愛い」


「そこなんだ」


 リアがしゃがみ込む。


 でも子フェンリルは、

 少しだけ警戒した。


「グル……」


「私まだダメっぽい」


「いや十分近いだろ」


 ガルドなんか、

 まだ普通に威嚇される。


「なんで俺だけこんな警戒されんの!?」


「声でかいからじゃない?」


「理不尽!」


 でも少しだけ。


 今日初めて、

 いつもの空気に戻った感じがした。


 その時。


 子フェンリルが急に立ち上がる。


「……?」


 そして。


 俺の剣へ近づいた。


「おい」


 鼻を近づける。


 数秒。


 それから。


 静かに剣の横へ座った。


「……やっぱり」


 リアが小さく呟く。


「何が?」


「その剣、反応されてる」


 言われて剣を見る。


 祖父の剣。


 昔から使ってる。


 でも。


 今日だけで、

 長老と学園長、

 両方が反応した。


「……なんなんだろうな、この剣」


 その時だった。


 コンコン。


 また扉が鳴る。


「開いてるぞ」


 扉が開く。


 入ってきたのは、

 レオンだった。


「お前も来たの?」


「少し確認だ」


 レオンは真っ直ぐ子フェンリルを見る。


「暴れてないか」


「今のところは」


「グル」


 子フェンリルがレオンを見る。


 でも今日は唸らなかった。


「……慣れたか?」


「かもしれん」


 レオンが少しだけ息を吐く。


 それから。


 真面目な顔になる。


「ユウト」


「何」


「お前、加護の感覚あるか」


 一瞬止まる。


「……少しだけ」


 身体の奥。


 何かが変わってる感覚がある。


 魔力が流れやすい。


 妙に周囲が分かる。


「やっぱりか」


 レオンが小さく呟く。


「長老が言っていた通りなら、多分それは本物だ」


「でも加護ってよく分かってないんだけど」


「俺も詳しくは知らん」


 レオンは腕を組む。


「ただ、フェンリルの加護なんて聞いたことがない」


 その時。


 子フェンリルが、

 急に窓の方を見る。


「グル……」


 低い声。


 一瞬で空気が変わる。


 レオンが振り向く。


「……誰だ」


 窓の外。


 寮の屋根の上。


 月明かりの中に、

 一つの影が立っていた。

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