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『初級魔術しか使えない俺が、なぜか最強に近づいている』  作者: 北こたろう


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出発前

学外演習当日。


 まだ朝早い時間なのに、高等部の正門前には既に人が集まっていた。


 ローブ。


 剣。


 荷物。


 いつもの学園とは空気が違う。


「……なんか本当に行くんだな」


 思わず呟く。


「今さら?」


 横からリア。


「いや、まだ実感薄い」


「私は少しある」


 リアは周囲を見る。


 少し警戒してるみたいだった。


「おい!」


 ガルドが走ってくる。


 今日は珍しく荷物が多い。


「持ちすぎじゃない?」


「実戦だぞ!?」


「いや分かるけど」


「あと保存食も持った!」


「遠足じゃないんだから」


「うるせぇ!」


 でも少しだけ緊張してるのは伝わった。


 ガルドは分かりやすい。


「揃ったか」


 レオンが来る。


 相変わらず無駄がない。


 荷物も少ない。


「お前それだけ?」


「必要十分だ」


「なんか腹立つな」


「ガルド、お前が多すぎる」


 リアが即答する。


「リア最近俺に厳しくない!?」


 周囲から少し笑い声が漏れる。


 でも。


 皆どこか落ち着かない。


 それだけ学外演習は特別だった。


「静かに」


 教師の声。


 一気に空気が締まる。


「これより東部森林地帯へ向かう」


 教師が周囲を見る。


「目的は実戦経験だ。無理な戦闘は禁止。単独行動もするな」


 そこで少し間を置く。


「特に今年は上位種報告が増えている」


 空気が少し重くなる。


「気を抜くな」


 短い言葉だった。


 でも十分だった。


     ◇


 移動は徒歩だった。


 街道を抜け、

 少しずつ森が増えていく。


「……静かだな」


 ガルドが珍しく小声で言う。


 分かる。


 学園と違う。


 空気そのものが違った。


「魔力濃い」


 リアが小さく呟く。


「分かるの?」


「少し」


 リアは森を見る。


「魔物近いかも」


「怖いこと言うなよ……」


 ガルドが顔を引きつらせる。


 でもレオンは静かだった。


 周囲を見ている。


 足跡。


 木。


 風。


 全部確認してるみたいだった。


「レオン」


「何だ」


「慣れてる?」


「少しな」


 少し、のレベルじゃない気がする。


 その時。


 ザッ。


 音。


 全員が止まる。


 レオンの目が変わった。


「……いる」


 一瞬で空気が張り詰める。


 森の奥。


 気配。


「ゴブリンか?」


 ガルドが小さく聞く。


 リアが首を横へ振った。


「違う」


「え?」


「もっと大きい」


 空気が静まる。


 その瞬間。


 木々の奥から、

 低い唸り声が響いた。


「――グルルル」


 重い音。


 木の間から現れた影を見て、

 ガルドの顔が固まる。


「……おい」


 灰色の毛。


 大きな身体。


 鋭い牙。


「……グレイウルフ」


 レオンが低く呟く。


 ガルドの顔が引きつる。


「嘘だろ……」


 普通種より一回り大きい。


 しかも目が鋭い。


 完全にこっちを見ていた。


 レオンが静かに剣を抜く。


「下がるな」


 低い声。


 空気が変わる。


 その瞬間。


 グレイウルフが地面を蹴った。


 速い。


「来るぞ!」

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