早朝訓練
朝。
まだ空が白い時間。
高等部の訓練場には、人影がほとんどなかった。
「……眠い」
「来ておいてそれか」
レオンが呆れた顔をする。
「朝弱いんだよ」
「学外演習で寝起きは関係ない」
真面目だ。
本当に。
でも今日は、
少し空気が違った。
いつもの張り詰めた感じが薄い。
「リアは?」
「まだ来てない」
「ガルドは?」
「起きれないだろ」
「納得」
それはそう。
木剣を構える。
冷たい空気。
静かだった。
「始めるぞ」
レオンが炎槍を展開する。
赤い熱。
前より分かる。
魔力の流れ。
圧縮。
「……綺麗だな」
「お前、最近よく言うな」
「実際綺麗だし」
レオンは少しだけ眉を寄せる。
「お前の魔力の方が変だ」
「またそれ?」
「四属性が流れてる時点で異常だ」
否定できない。
最近、自分でも少し変だと思い始めてる。
「来るぞ」
レオンが踏み込む。
速い。
でも見える。
風。
身体を流す。
剣。
受ける。
「っ――!」
重い。
でも前より押されない。
「……また強くなったな」
「そう?」
「昨日より踏み込みが深い」
言われても自覚は薄い。
でも。
身体は軽かった。
その瞬間。
炎槍。
二本。
飛ぶ。
火球三重。
ぶつける。
爆ぜる。
熱風。
視界が揺れる。
その中へ踏み込む。
「――!」
レオンの目が少し開く。
剣。
届く。
ギリギリで受けられる。
「近いな」
「今のいけたと思った」
「思っただけだ」
「厳しい」
でもレオン、
少し笑っていた。
前より楽しそうだった。
「……やっぱり」
後ろから声。
リアだった。
「いたのか」
「少し前から」
リアは静かにこっちを見る。
「ユウト、戦い方変わった」
「そう?」
「前より中級使ってる」
言われて少し考える。
確かに。
前までは、
初級を繋ぐことばかり考えてた。
でも今は違う。
中級を軸に、
初級を混ぜている。
「自然に切り替わってる」
リアが続ける。
「普通、中級覚えた直後はそうならない」
「……やっぱ変か」
「かなり」
即答だった。
その時。
「おいお前ら!」
訓練場入口。
ガルドだった。
「朝から本気でやんなよ!」
「遅い」
レオンが即答する。
「まだ集合十五分前だぞ!?」
「俺達は来てる」
「だから真面目すぎんだよ!」
騒がしい。
でも少しだけ、
いつもの空気に戻る。
その時だった。
訓練場の奥。
校舎側。
誰かが立っていた。
ローブ姿。
年配。
距離が遠くて顔は見えない。
「……?」
でも次の瞬間。
その人影は、
静かに去っていった。
「どうした」
レオンが聞く。
「いや……誰かいた気がして」
でももう、
そこには誰もいなかった。




