初級と中級
翌日の訓練場。
昨日の模擬戦の噂は、
思ったより広がっていた。
「レオンとやり合ったらしいぞ」
「しかもCクラス」
「中級覚えたばっかだろ?」
視線が多い。
かなり嫌だ。
「……帰りたい」
「今来たばっか」
横からリア。
今日は珍しく昼の訓練場だった。
「ユウト!」
ガルドが走ってくる。
「聞いたぞ!」
「何を」
「レオンに一本取りかけたって!」
「取ってない」
「でも惜しかったんだろ!?」
どこから漏れてるんだ。
絶対レオンじゃない。
「盛られてる」
「レオンが普通に認めてたぞ」
「……は?」
その時。
「ガルド」
低い声。
本人だった。
「うわ出た」
「お前最近失礼だな」
レオンは呆れた顔をしてから、
こっちを見る。
「模擬戦の続きだ」
「また?」
「今日は魔術あり」
周囲がざわついた。
「マジか」
「レオン本気じゃん」
リアも少しだけ目を細める。
「……見たい」
「最近そればっかだな」
「気になるから」
逃げ道がない。
◇
訓練場中央。
今度は木剣だけじゃない。
魔力も使う。
「始め!」
同時に。
レオンの炎槍が飛ぶ。
速い。
でも前より見える。
風。
横へ流す。
そのまま火球三重。
同時展開。
「また増えてる!?」
ガルドが後ろで叫ぶ。
レオンが炎槍で二つ落とす。
でも三つ目。
軌道を水で押す。
「っ」
レオンが避ける。
その瞬間。
距離を詰める。
剣。
炎。
風。
全部同時。
「……!」
レオンの目が少し変わる。
剣がぶつかる。
熱。
でも今は押し返されない。
「中級に慣れてきたな」
「まあ少し」
「だが――」
次の瞬間。
レオンの炎が膨れ上がる。
「っ!?」
熱量が違う。
火属性中級二重展開。
初めて見る。
「これが……」
「Aクラス上位だ」
炎槍が四本。
一気に飛ぶ。
「うわっ!」
土。
壁。
でも一瞬で砕かれる。
風。
加速。
避ける。
熱風が頬を掠めた。
「ユウト!」
リアの声。
でも不思議と、
頭は冷えていた。
炎槍。
軌道。
魔力。
全部見える。
「……そうか」
思わず呟く。
レオンが眉を寄せた。
「何」
「中級って」
火球展開。
一つ。
二つ。
三つ。
さらに炎槍。
「初級の延長なんだ」
一瞬だけ。
レオンの目が止まる。
その隙。
火球を風で加速。
炎槍へぶつける。
爆ぜる。
視界が揺れる。
「っ――!」
踏み込み。
剣。
レオンがギリギリで受けた。
でも今度は押し込める。
「……なるほど」
レオンが笑う。
昨日より、
少し楽しそうだった。
「お前、本当に初級から繋げてるのか」
「多分」
「多分でやるな」
剣が離れる。
互いに距離を取る。
息が熱い。
でも。
今までよりずっと、
身体が自然に動いていた。
「やっぱ変」
リアが小さく呟く。
「でも――」
少しだけ。
リアが笑った。
「前より、ちゃんと強い」




