古い魔法陣
静かだった。
さっきまでざわついていた魔法書庫が、
一瞬で止まっている。
「……なんだ、これ」
誰かの声。
でも誰も近づかない。
開かれたページ。
そこに浮かぶ魔法陣は、
今まで授業で見たどれとも違った。
複雑。
なのに妙に綺麗だった。
「四属性反応……?」
「いや、そんなの……」
教師達まで困惑している。
俺自身も意味が分からなかった。
ただ。
魔法書へ触れた瞬間から、
妙に感覚が静かだった。
火。
水。
風。
土。
全部の魔力が自然に流れている。
その時。
ドクン。
もう一度、魔法書が脈打った。
「っ……!」
身体へ熱が流れ込む。
でも熱いのに苦しくない。
むしろ、
今まで噛み合わなかった何かが、
急に繋がる感覚だった。
「ユウト!」
リアの声。
気づくと、
周囲へ四属性の魔力が漏れていた。
赤。
青。
緑。
茶。
空気が震えている。
「離れろ!」
教師が叫ぶ。
生徒達が後退する。
でも俺自身は、
なぜか不思議と落ち着いていた。
「……流れてる」
思わず呟く。
今までよりずっと自然だった。
無理やり繋いでいた感覚がない。
その瞬間。
魔法書のページへ、
文字が浮かび上がる。
『適合確認』
空気が止まった。
「適合……?」
「なんの?」
ざわめき。
教師達も動けない。
その中で。
年配教師だけが、
妙に険しい顔をしていた。
「……まさか」
小さな声。
でもその瞬間。
魔法書が閉じた。
バンッ、と重い音。
同時に、
周囲の魔力が静まる。
「……終わった?」
ガルドの声。
でも誰もすぐ動かなかった。
静寂。
そして。
「ユウト・アークレイ」
教師がゆっくり口を開く。
「前へ」
「……はい」
少し緊張しながら前へ出る。
「確認する」
教師の目が、真っ直ぐこっちを見る。
「今、何を見た」
「え?」
「魔法書だ」
少し考える。
「……魔法陣、です」
「属性は」
「分かりません」
嘘じゃない。
本当に知らない。
でも。
「ただ」
「……ただ?」
「なんか、全部繋がってる感じがしました」
教師達の空気が変わる。
ざわつき。
「全部……?」
「四属性を?」
でも俺自身は、
まだ整理できてなかった。
その時。
「ユウト」
横からリア。
「目」
「え?」
「光ってる」
一瞬だけ空気が止まる。
「は?」
思わず変な声が出た。
レオンまで少し眉を寄せる。
「……本当だな」
「いや怖い怖い怖い」
ガルドが後退る。
「なんなんだよお前!」
知らない。
本当に知らない。
でも。
身体の奥に、
今までなかった感覚だけが残っていた。
まるで、
何かが“始まった”みたいに。




