中級魔術
魔法書閲覧は途中で中断になった。
理由は当然、
俺だった。
「四属性同時反応なんて聞いたことないぞ……」
「しかも魔法書が勝手に……」
教師達がずっとざわついている。
俺は別室へ連れて来られていた。
長机。
硬い椅子。
妙に静かな部屋。
「……なんかやらかした?」
「自覚ないのか」
向かいの教師が頭を押さえる。
でも本当に分からない。
魔法書へ触れた瞬間から、
急に感覚が変わっただけだ。
「確認する」
年配教師が口を開く。
「身体に異常は」
「特にないです」
「魔力暴走感覚は」
「ないです」
「……そうか」
教師達が顔を見合わせる。
そこで。
「失礼します」
扉が開いた。
レオン。
リア。
ガルド。
三人とも普通に入ってくる。
「なんでいるの」
「心配だからだろ!」
ガルドが即答する。
「いやお前、急に目光るし!」
「俺も知らない」
リアが静かにこっちを見る。
「……魔力は安定してる」
「分かるの?」
「少し」
リアは少し近づいてくる。
そのまま、
俺の手へ触れた。
「……?」
一瞬だけ、
リアが目を見開く。
「どうした」
レオンが聞く。
「流れが変わってる」
「何が」
「魔力」
また難しい話だ。
「前より自然」
リアが続ける。
「四属性がぶつかってない」
教師達の空気が少し変わる。
「……まさか」
年配教師が小さく呟く。
「ユウト」
「はい」
「初級を使ってみろ」
言われた通り、
火球を作る。
小さい火球。
慣れた感覚。
でも次の瞬間。
「……え?」
火球が揺れない。
妙に安定していた。
軽い。
今までより、
ずっと自然だ。
「水も」
水球。
風。
土。
全部が滑らかに繋がる。
「おいおい……」
ガルドが引いた声を出す。
教師達も黙っていた。
そして。
「……中級を試せ」
一瞬だけ部屋が静まる。
「え?」
「今なら流れる可能性がある」
心臓が少し跳ねた。
中級。
ずっと届かなかったもの。
「でも俺――」
「いいからやれ」
レオンが静かに言う。
その目が妙に真剣だった。
「……分かった」
息を吐く。
火属性。
今までなら、
途中で引っかかっていた感覚。
でも今は違う。
流れる。
自然に。
「っ――」
熱。
火球じゃない。
もっと圧縮された炎。
赤い槍の形。
空気が揺れる。
「……成功した」
教師が呟く。
部屋が静まり返る。
俺自身も、
まだ理解が追いついていなかった。
「マジかよ……」
ガルドが固まっている。
レオンは黙ったまま、
炎槍を見ていた。
リアだけが、
少しだけ安心した顔をしていた。
「……おめでとう」
小さな声。
一瞬だけ止まる。
そしてやっと、
実感が湧いた。
中級魔術。
ようやく、
届いた。




