魔法書庫
魔法書閲覧の日。
高等部の中央塔。
普段は閉ざされている大扉の前に、生徒達が集まっていた。
空気が妙に静かだった。
緊張。
期待。
不安。
色んな感情が混ざっている。
「……すげぇな」
思わず呟く。
塔そのものが、少し魔力を帯びている気がした。
「初めて?」
横からリア。
「うん」
「私は二回目」
「そうなの?」
「去年は反応しなかった」
少し意外だった。
でもリアはそこまで気にしてる感じじゃない。
「静粛に」
前方。
年配教師が口を開く。
一気に空気が締まる。
「これより、魔法書閲覧を開始する」
教師の後ろ。
巨大な扉へ魔力が流れる。
重い音。
ゆっくりと開いていく。
「……」
中は暗かった。
でも奥だけ、微かに光っている。
「一人ずつ前へ出ろ」
教師が続ける。
「魔法書に触れ、適性を示せ」
列が動き始める。
最初はAクラス。
前へ出る。
触れる。
反応する者。
しない者。
空気がその度に揺れる。
「レオン・ヴァルセイド」
名前が呼ばれる。
レオンが前へ出た。
静かな足取り。
魔法書へ手を伸ばす。
一瞬。
赤い光。
周囲がざわつく。
「おお……」
「やっぱレオンか」
魔法書が開く。
炎の文字。
レオンは静かに目を閉じた。
数秒。
そして本が閉じる。
「適合確認」
教師が告げる。
ざわめきが広がった。
レオンは何も言わず戻ってくる。
「おめでとう」
リアが言う。
「ああ」
短い返事。
でも少しだけ、
肩の力が抜けていた。
次々と名前が呼ばれていく。
リアも反応した。
淡い水色の光。
去年は駄目だったらしい。
でも今年は違った。
「おめでとう」
「……うん」
リアは少しだけ嬉しそうだった。
そして。
「ユウト・アークレイ」
空気が少し変わる。
視線が集まる。
Cクラス。
初級しか使えない男。
ホブゴブリン。
色んな噂。
全部混ざっている。
「……」
前へ出る。
心臓が少しうるさい。
魔法書を見る。
古い。
でも妙に圧があった。
「触れろ」
教師が言う。
ゆっくり手を伸ばす。
触れた。
一瞬。
何も起きない。
ざわめきが漏れる。
「……やっぱ」
「まあな」
聞こえる。
でも次の瞬間だった。
ドクン。
魔法書が震えた。
「――っ!?」
空気が変わる。
光。
いや、
一色じゃない。
赤。
青。
緑。
茶。
四つの光が、同時に浮かび上がる。
周囲が静まり返った。
「な……」
教師の声が止まる。
魔法書が開く。
ページが勝手にめくれていく。
一枚。
二枚。
三枚。
止まらない。
「おい……」
「なんだこれ……」
誰かが呟く。
魔法書が震えていた。
まるで、
探しているみたいに。
そして。
ピタリと止まる。
開かれたページ。
そこに浮かんでいたのは――
誰も見たことのない、
古い魔法陣だった。




