混成班
混成班訓練の日。
高等部第二訓練場には、既に何人か集まっていた。
Aクラス。
Bクラス。
そしてCクラス。
ローブの色だけで空気が違う。
「……居づら」
小さく呟く。
「逃げる?」
横からリア。
「逃げない」
「残念」
全然残念そうじゃない。
リアはいつもの無表情で訓練場を見る。
その時。
「遅い」
レオンだった。
既に木剣を持っている。
「まだ集合十分前だろ」
「俺は来てる」
「真面目か」
「真面目だ」
即答だった。
ガルドが後ろで小さく笑う。
「なんか最近ちょっと分かってきたわ」
「何が」
「コイツ、性格こうなんだなって」
「どういう意味だ」
「堅い」
「ガルド、お前後でやるか?」
「怖っ!」
そのやり取りを見て、リアが少しだけ目を細めた。
前より空気が軽い。
少なくとも最初みたいな、
完全な壁は減っていた。
「揃ったな」
教師が前へ出る。
今日は実戦担当だった。
「混成班の目的は連携確認だ。特に下位クラスは、上位クラスの戦闘についていけ」
露骨な言い方だった。
周囲でも何人か苦笑している。
「では第三班」
教師がこっちを見る。
「前へ」
俺達四人が出る。
「内容は簡単だ」
教師が木製標的を指す。
「制限時間十分以内に全破壊」
標的は全部で十二。
しかもバラバラに配置されている。
「魔術だけでも、剣だけでも厳しい配置だ」
つまり連携しろってことだ。
「始め!」
同時に。
レオンが動いた。
速い。
火属性中級。
炎槍。
一撃で標的が砕ける。
「うお……」
ガルドが少し引いていた。
でも次の瞬間。
「右!」
レオンが叫ぶ。
標的が三つ。
位置が離れている。
中級一発では間に合わない。
「ガルド!」
「お、おう!」
火球。
でも少しズレる。
「遅い!」
「うるせぇ!」
空気が少し荒れる。
まずい。
「リア!」
「分かってる」
水弾。
標的の軌道をずらす。
そこへ俺が走る。
風。
加速。
火球二重。
片方を水で押す。
「またそれ!?」
ガルドの声。
火球が曲がる。
二つ同時に命中。
さらに踏み込み。
剣。
三つ目破壊。
「残り五!」
教師の声。
レオンが少しだけこっちを見る。
「ユウト」
「何」
「左取れるか」
「多分」
「なら任せる」
短いやり取り。
でも少しだけ驚いた。
レオンが、
俺へ役割を振った。
昨日までならなかった。
風。
土。
足場。
加速。
標的へ飛び込む。
剣。
一つ。
火球。
二つ。
最後。
少し距離が遠い。
「ユウト!」
リアの声。
水流。
背中を押される。
一瞬だけ身体が軽くなる。
「っ!」
踏み込み。
届く。
剣が最後の標的を砕いた。
静かになる。
「……終了」
教師が口を開く。
「記録、上位」
周囲がざわついた。
「第三班ってC混ざってたよな?」
「今の連携やばくね?」
ガルドが息を切らしながら笑う。
「やっば……!」
「お前うるさいな」
「だって今ちょっと気持ちよかっただろ!?」
否定は出来ない。
その時。
「……変な奴だな」
レオンが小さく呟く。
「何が」
「お前」
レオンは少しだけ目を細める。
「戦闘中、楽しそうだ」
一瞬だけ止まる。
「……そう見える?」
「少なくとも、怖がってる顔ではない」
言われて少し考える。
でも自分ではよく分からなかった。
ただ。
魔力を流して、
剣を振って、
全部が繋がる瞬間だけは――
少しだけ、
頭が静かになる気はした。




