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第58話:【絶好調男の異世界ピクニック】

「うーん……今日はどのクエストにして

 俺の無双っぷりを世に知らしめようかなぁ」


覚醒者協会のロビー。

俺はタッチパネル式の端末を操作しながら

今日も今日とて絶好調な脳内お花畑を展開していた。

隣には、俺の専属ヒロイン(と勝手に認定している)

美少女、御園凛華みその りんかがちょこんと立っている。

ふふっ、周囲の野郎どもの嫉妬の視線が心地いいぜ。


「剣斗さん、コレがいいんじゃないですか?」

凛華が白くて細い指で、ある依頼を指し示した。


「ん? 『E級探索依頼・第7区に発生した新規ダンジョンの調査』か。

……よし、凛華が良いって言うならそれにしよう!」

俺は即決し、鼻高々で受付へと向かった。


受付のお姉さんは書類と端末を素早く操作しながら説明を始めた。

「こちらの依頼ですね。発生したばかりの新規ダンジョンですので

できるだけダンジョン内の環境データを持ち帰ってください。

モンスターの写真、植物、土、風景……なんでも構いません。

情報量が多く、かつ早く提出されたパーティほど報酬が高くなります。

早い者勝ちですので、頑張ってくださいね」


「わかったわかった、任せとけって。

俺たちのスピードなら一瞬で終わらせてやるよ」

俺は爽やかに(ドヤ顔で)ウインクを飛ばし、颯爽と手続きを済ませた。


「行くか、凛華」

「はい、剣斗さん!」


***


第7区・新規ダンジョンゲート前。

すでに協会や国による簡易的な管理施設やバリケードが構築されていた。


「へー、発生したばっかなのにもう簡易ゲートができてるのか。

はえーな、協会の連中も仕事熱心で何よりだ」

俺が感心して周囲を見回していると、隣で凛華がボソッと呟いた。


「……さすが人間、侮れん」


「ん? なにか言ったか凛華?」

俺が聞き返すと、凛華はパッと愛らしい笑顔を作って首を振った。


「いえ? 協会の皆様の仕事の速さに驚いていただけです」

「だよなー。まあ俺の討伐スピードの方がもっと速いけどな!」


手続きを済ませてゲートをくぐり、ダンジョン内へと足を踏み入れる。

中は鬱蒼とした『森』のフィールドだった。


「よし、仕事すっか」

俺はスマホを取り出すと、そこら辺に生えている珍しい色のキノコ、

奇妙な形をした葉っぱをパシャパシャと写真に収め

手当たり次第にアイテムボックスへと突っ込んでいった。


「おっ、あっちに新種のゴブリンっぽいのがいるな!

 凛華、ちょっと被写体になってくれ!」

「わかりました!」


俺がのんきにスマホで動画を回す中

凛華が鋭い踏み込みでゴブリン(新種)の懐に潜り込み

一閃。見事な剣筋で魔物を両断する。


「いいねー! 凛華、今の太刀筋すごく良かったよ!

ただ、踏み込む時に少しだけ右に重心が寄りすぎてるから、次はそこを意識してみな?」

「はい! ありがとうございます、剣斗さん!」


(くぅ〜! 頼れるベテラン先輩の俺、カッコよすぎ!

凛華の好感度も爆上がり間違いなしだな!)

俺は調子に乗って適当なアドバイスを飛ばしつつ

サクサクと調査と撮影を進めていった。


新規ダンジョンとはいえ、出てくる魔物はせいぜいE〜D級程度。

俺の圧倒的なステータスの前には雑魚も同然だった。

時折、横から奇襲をかけてくる魔物たちを俺が涼しい顔で切り捨てながら

俺たちは順調に森の奥地へと進んでいった。


***


「ふぅ。結構データ集まったな。この辺で少し休憩しようぜ」

開けた場所に出たところで、俺たちは倒木に腰を下ろして息を吐いた。


「はい。剣斗さんのおかげで、すごくスムーズに進めました」

凛華がペットボトルの水を飲みながら、キラキラした瞳でこちらを見てくる。たまらん。


「ははっ、これくらい余裕だって。俺の背中についてくれば、どんなダンジョンだって――」


俺が完璧なキメ顔でイキり散らそうとした、その時だった。


――ブゥンッ!


「……あん?」

俺の足元、ちょうど立っていた場所を中心にして

幾何学模様の禍々しい『魔法陣』が突如として広がり、強烈な光を放ち始めた。


「なんだこれ!?」

俺は慌てて飛び退こうとしたが、足が地面に吸い付いたように動かない。

空間全体が歪み始めているのが分かった。


「剣斗さん!!」

離れた場所にいた凛華が、驚いたように叫んで手を伸ばす。


「凛華ァァァッ!!」

俺も必死に腕を伸ばしたが、光は容赦なく俺の全身を包み込んだ。

悲劇の主人公のような劇的な別れの叫びを響かせながら

俺の視界は完全に暗転した。

視界が暗転する直前、凛華がニヤリとした邪悪な笑みを浮かべていたのがみえた。

***


「……っ、痛てて……」


次に目を覚ました時、俺は薄暗く湿った『洞窟』のような場所に尻餅をついていた。

周囲を見回す。さっきまでの森とは明らかに違う、禍々しい空気が漂う空間だ。


「なんだここ? 転移の罠でどっかに飛ばされたのか?」

俺はゆっくりと立ち上がり、パンパンとズボンの土を払った。


「……ま、前世ではたまにあったからな、こういう強制転移の罠。

まさか現代のダンジョンでも存在しているなんてな。懐かしいぜ」

のんきにそんなことを呟いていると。


グルルルゥゥ……ッ!!


暗闇の奥から、無数の赤い眼光が浮かび上がった。

現れたのは、通常のダンジョンではお目にかかれないような

凶悪な角を生やした大型の魔獣たちだった。涎を垂らし、俺を完全に「エサ」として包囲している。


「あ?」

俺は腰の剣を抜き放ち、肩を回した。


「雑魚がいくら群れて来たって、この俺様に勝てるわけねえだろ。

……ちょうどいい、憂さ晴らしのサンドバッグになってくれや!!」


俺は地面を爆発的に蹴り出し、魔獣の群れへと突っ込んだ。


「オラァッ!!」

一閃。ただそれだけで、先頭の魔獣の分厚い装甲が豆腐のように両断され、血しぶきが舞う。


女神からもらったチートな身体のおかげで、敵が鈍く見える。

「遅え遅え!! 止まって見えるぜ!」


ギャンッ! キャインッ!

ステータスに任せたゴリ押しの超絶剣技が炸裂する。

数分後、俺の周囲には無数の魔獣の死体が山築きになっていた。


「ふぅ……。まあ、準備運動にもならねえな」

俺は剣の血を払い、ドヤ顔で鞘に収めた。

さーて、どうやってここから脱出して凛華の元に帰るかなと考えていると――。


「……ん? なんだ?」


ふと、洞窟の奥の方から、くぐもった『声』のようなものが聞こえてきた。

魔物の鳴き声ではない。明らかに人間の争うような、複数の怒声と……爆発音だ。


「誰かいるのか? まさか俺以外にも転移の罠に引っかかった間抜けがいるとか?」


俺は面白半分で、その騒ぎが聞こえる方向へと悠然と歩き出した。

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