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第131話:【魔法障害物競争・決勝】

私と香澄ちゃん、そして翔先輩の3人で待機していると

ガチャリと控室のドアが開いた。


入ってきたのは、見慣れたエシュ学の制服を着た生徒たちだった。

どうやら、同じく決勝に進出した他学年(2年生・3年生)の選手とサポート担当

そして同級生である1年生の選手たちらしい。


「おお、翔じゃん。相変わらず余裕そうだな」

2年生のサポートらしき男子生徒が、翔先輩を見つけて声をかけた。


「まあな。俺は暇だからな」

翔先輩が軽く手を挙げて応じる。


「お前のとこ、優勝いけそうなのか?

1年生はデータが少ないから対策が難しいってのに、よくやるよな」

「多分いけるんじゃねえの。まあ、事前にいろいろと『情報』は集めてたからな」


翔先輩と同級生たちがニヤニヤと『裏工作』の匂わせ会話をしている間

私の元へは3年生のサポート担当の上級生が歩み寄ってきた。


「こんにちは。君が高橋有希ちゃんだね。

僕は3年のサポート担当の神崎かんざきだ。よろしくね」


爽やかなイケメンである。私はとりあえず無難な営業スマイルを浮かべた。

「はい、高橋です。よろしくお願いします。

 神崎先輩の担当選手の方は、調子はいかがですか?」


私が尋ねると、神崎先輩は周りを少し気にするように声を潜めた。

「今年は少し厳しい戦いになりそうでね。他校の上位選手が

 軒並み決勝に上がってきているから、一筋縄ではいかないよ」

「そうですか……情報ありがとうございます」


私も小声でお礼を返しつつ、視線を香澄ちゃんに向ける。香澄ちゃんも

同じく決勝に進出した1年生の別クラスの選手と和やかに会話を楽しんでいた。

エシュ学の生徒同士、ピリピリせずに情報交換できるこの雰囲気は悪くない。


『――魔法障害物競争・決勝に出場する1年生は

ポッドへ向かい準備を行ってください』


アナウンスが流れ、香澄ちゃんを含む1年生の選手2人が

「いってきます!」と部屋を出ていく。


「俺たちの出番はまだ先だし、しばらくここで後輩の走りを見学していくか」

3年生の選手たちがそう言って、控室の巨大モニターの前に陣取った。


数分後。


『お待たせいたしました! これより魔法障害物競争・決勝・1年の部を開始いたします!

皆さま、温かい声援をお願いいたします!』


実況の声と共に、画面上に【3・2・1】とカウントダウンが表示され

――スタートのブザーが鳴り響いた!


一斉にスタートダッシュを切る選手たち。

先行したのは香澄ちゃん……と思いきや、他校の男子生徒だった。


「さすがに決勝ともなると、みんな出足が速いわね……」


私がモニターを見つめながら状況を分析していると、いきなりレースが大きく動いた。


「『爆炎波エクスプロージョン』ッ!!」


なんと、トップを走っていた選手が、後ろを振り返るなり

いきなり超広範囲の大規模魔法をぶっ放したのだ。


「ええっ!? スタート直後でもうあんな大魔法撃つの!?」

私は驚愕して目を剥いた。


凄まじい爆発が後続集団を飲み込む。

さすがに決勝進出者だけあって一撃でリタイアする選手はいなかったが

防御にリソースを割かされたせいで全員のスピードがガクンと落ちる。

その隙を突き、トップの選手は集団を大きく引き離して完全に独走態勢に入った。


「なるほどな。あのトップを走ってる奴……

俺と同じで『マップ情報』を手に入れてやがるな」

翔先輩が腕を組みながら、鋭い目で分析する。


「え、どうして分かるんですか?」

「コース構造とトラップの位置を完全に把握してないと

あんな序盤で魔力を大きく消費する真似はできねえ。先の安全が分かってるからこその『ぶっぱ』だ」


画面の中では、香澄ちゃんがなんとか3位につけて食らいついているが

トップや2位の選手からの執拗な牽制魔法で足元を狙われ、思うようにスピードが乗り切れていない。


(まずいわね……足場を崩されてスピードが出せてない。インカムでアドバイスを……!)


私がマイクに手を伸ばそうとした瞬間、翔先輩に「まだ早い」と手で制止された。


「ここで口を出せば焦りを生む。香澄のタイミングを信じろ」


翔先輩の言葉に従い、グッと我慢して見守っていると――。


シュバァンッ!!


突如、香澄ちゃんの体に青い魔力光が走ったかと思うと

異常なスピードで加速し、牽制魔法の雨をすり抜けて第2集団から完全に抜け出した!


「(ああ……以前おしえた加速魔法を使ったのね!)」

私はホッと胸を撫でおろした。精霊を介さないことで

ノータイムで一気にトップギアに入れたのだ。


そのまま、トップ集団(上位3名)は第1関門のトラップ地帯へ突入するが

全員が危なげなく難所を突破していく。


「さすがに事前に裏情報を得てる連中は、難なく突破しやがるな。

こりゃ最後の関門まで大きな動きはなさそうだな」

翔先輩の予想通り、後続の第2集団がトラップや激しい戦闘で次々と

人数を減らしていく中、トップ集団の3人は一定の距離を保ったまま黙々と走り続けた。


そして――いよいよ【最後の関門】。


広大なエリアの中央に『超巨大モンスター』が鎮座し

その周囲を無数の雑魚モンスターが埋め尽くしていた。


「ええと、事前の資料によると……『巨大モンスターは倒さなくてもいいが

雑魚モンスターを一定数倒さないとゴールへのゲートを入れない』……ふむふむ」

私が手元の裏資料を確認していると、トップの2人が一斉に広範囲魔法を放った。


しかし!


バチィィンッ!!


なんと、雑魚モンスターたちが一斉に光の盾を展開し

魔法を完全に弾き返したのだ。


それを見た香澄ちゃんが、腰から『短剣』をチャキッと抜き放った。

そして――身体加速を限界まで乗せたスピードでモンスターの群れへ突撃し

すれ違いざまに物理攻撃で一匹一匹、目にも留まらぬ速さで斬り捨てていった!



トップを走っていた2人も、魔法が効かないと悟るや否や

慌てて武器を取り出して物理攻撃で倒しながら走り始めた。


「なるほどな……」

翔先輩がニヤリと笑う。

「マップの構造はバレても、モンスターの『特性』までは調べられなかったみたいだな。

上位陣の精霊魔法が強すぎるから、運営も『魔法無効』の敵を置いて

一気に倒させないように調整したってわけだ」


「……魔法戦なのに、トップ層が全員『武器』で

 殴り合ってる異様な光景になってますけどね」

私が呆れ半分にツッコミを入れる。


他校の選手が不慣れな近接戦闘に手間取る中

香澄ちゃんだけは水を得た魚のようにモンスターを屠り

ついにトップ集団との距離を完全にゼロにした!


「よし、追いついたわ……!」


画面を見つめる私たちの前で、ついに『魔法戦(物理)』のトップ争いが

激しい火花を散らして動き始めたのだった。

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