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第127話:【VRダンジョン戦】


翌朝。すっかり体調が回復(※ただし魔法使用制限付き)した私は


朝からピシッと制服に着替え、千晶と一緒にホテルの食事広場へと向かった。


「あ、いたいた。おはようございまーす」


既にテーブルに揃っていた花梨ちゃん、香澄ちゃん、修君、そして雄一先輩の席へと加わる。


「おう、有希! 今日は修平の試合の日だな。準備はどうだ?」

雄一先輩がトーストを口に放り込みながら尋ねると、修君は力強く拳を握りしめた。


「昨日みんなで作戦会議をみっちりやりましたからね。あとは全力でやるのみっす!」

「いい意気込みだ!」

「ふふ、後で控室に応援に行くわね」

「私も行きますっ!」


香澄ちゃんと花梨ちゃんも笑顔で応援を約束する。


食事が終わると、担当教諭から本日の競技日程についての説明が入った。


『えー、本日の午前中は1年生から3年生の「ダンジョンラッシュ」

午後は同じく各学年の「魔法戦予選」を行う。

なお、本日の競技はすべて【VRシステム】を使用するため

現実に怪我を負う心配はない。

昨日ような突発的な事故も起きないので思う存分暴れてもいいぞ。

万が一トラブルが発生した場合

サポートの生徒は速やかに我々教諭か、協会職員へ連絡するように!』


「VRなら安心ね。それじゃあ修君、また後でね! 準備が整ったら控室に行くから」

「おう! 待ってるぜ!」


ひとまず解散となり、私と千晶は一旦自分たちの客室へと戻った。



「ふぅ……」

部屋に戻ったものの、サポート役の私には特に事前準備もないため、ベッドでゴロゴロと体を休める。


「お姉さま……昨日みたいには、ならないですよね……?」

千晶が心配そうに、子犬のような目で見つめてきた。


「さすがに今日は大丈夫だと思うわよ。

まあ、何かあったら千晶よろしくね?

ようやく回復魔法も多少は効くようになってきたし」

「わかりました! いざという時は、この千晶にお任せくださいッ!」


ポンと胸を叩く千晶に癒やされつつ、出発の時間が近づいた。


「よし、たまには香澄ちゃんを迎えに行こうかな」


お隣の香澄ちゃんたちの部屋へ行き、ドアをトントンと叩くと――


「は、はいっ! どなた――ふぁっ!? ゆ、有希ちゃん様ッ!?」


出てきた花梨ちゃんが、私を見た瞬間に目を輝かせて

「きゃあぁあ!」と限界化(熱狂的信者モード)を起こした。

「どうぞどうぞ! お入りくださいっ!

有希ちゃん様の踏んだ床になりたいですっ!」という謎の歓迎を受けつつ

部屋の中へお邪魔する。


「あら有希。たまには迎えに来てくれたの?」

鏡の前で髪をとかしていた香澄ちゃんが、振り返って声をかけてきた。


「ふふん、たまにはお迎えに行かないとね」

私がドヤ顔を決めると、横で花梨ちゃんが

「尊い……! ドヤ顔有希ちゃん様尊い……!」とハァハァと興奮していたが

そこは華麗にスルー。


千晶と一緒にふたりの支度が終わるのを待つ。


「お待たせ、有希」

「お待たせしました、ゆきちゃん!」

少し冷静さを取り戻した花梨ちゃんは、いつも通りに戻っていた。



少し早めに競技会場に到着し、1年生の控室へと顔を出す。


「修君、調子はどう――って、ガチガチじゃないの」


覗き込むと、修君はパイプ椅子に座ったまま、ロボットのように直立不動で震えていた。


「さ、さすがに緊張してるんだね……」

「……当たり前だろ! 初めての大きな大会なんだぞ……?

もし失敗したらと思うと、胃が痛くて……」

情けない弱音を吐く修君。


「大丈夫だよ、修君。あれだけ練習したんだから。

それに、ここまで特訓したんだからどんな結果になっても悔いはないでしょう?」

「う……それはそうだけど……」


「よしっ! 予選突破したら、放課後一緒に会場を回ろっか?」

「!? ほ、本当か!?」


修君の目が一瞬でギラリと光る。

「うん。修君たちのチーム5人と、私と香澄ちゃんとだけどね。

花梨ちゃんはまだ聞いてないから分からないけど」

「それでも全然いい!! よっしゃああ!

必ず予選突破してやるぞおぉおお!!」


単純すぎるほど分かりやすく気合が爆発する修君。

すると、横にいた3年生のサポートの上級生が苦笑しながら寄ってきた。


「やる気を引き出させるのが上手いな、有希ちゃん。

だが、男のやる気をあんまり煽りすぎると、後で面倒なことになるぞ?」

「あはは……そうですね、気を付けます」


『――ダンジョンアタックに出場する1年生は

速やかにポッドへ入り準備を行ってください』


アナウンスが響き渡る。


「それじゃ、行ってくるぜ!!」

「いってらっしゃーい!」


気合十分の修君率いる5人チームが、力強い足取りで控室を飛び出していった。



私たちは控室の巨大モニターの前に座り、画面越しに観戦を開始した。


『さあ始まりました! ダンジョンアタック・1年生の部!

今回のルールは至ってシンプル! 全チーム一斉スタートで

マップ内に配置された「3つのコア」を確保し

ゴールまでのタイムを競います! VR空間のため

どれだけ激しい戦闘になっても現実の身体に怪我を負うことはありません!

チーム全員が退場すれば敗北! 1人でも残ってゴールすれば記録成立です!

それでは……スタート!!』


ブザーとともに、一斉に走り出す全チーム。


道中の雑魚モンスターを完全に無視して突き進むチーム、

1匹ずつ丁寧に倒すチーム、戦闘と探索で役割を分けるチーム……各校の作戦が色濃く出始める。


(修君たちの作戦は……あ、あれね)


画面を見ると、修君が単身でモンスターの群れへ突撃

、ヘイト(敵意)を一手に引き受けてソロで敵を撃破。

その間に他の4人が別行動でコアを探索し、コアを見つけ次第

修君が爆走して合流する――という、タンクの修君に過度な負担がかかる超・無茶な作戦だった。


「なるほど、考えたな」

サポートの先輩が感心したように腕を組む。

「修平のやつ、タンクだから本来は防御特化だが……

カウンター狙いで一撃の攻撃力を徹底的に鍛え直したみたいだな。

自分を引き付けてカウンターで即死させる戦法か」


「へぇ~! 修君、裏ですごく頑張ってたんだね」


私が感心している間に、修君チームは早くも『1つ目のコア』の部屋に到着していた。


ドゴォン!!


部屋の中央に降臨したのは、巨大な二刀流のスケルトンナイト。


「行けっ!」

合流前の4人が先行して強力な攻撃魔法を叩き込む――が!


バチバチッ!

「なっ、魔法無効化マージックキャセルのパッシブ持ち撃ちか!?」


魔法が弾かれたのを悟った4人は即座に物理攻撃に切り替えるが

相手の圧倒的な二刀流の連撃に阻まれ、間合いにすら入れない。


そこへ――!


「だらぁあああッ!! 待たせたな!!」


死に物狂いで疾走してきた修君が、間一髪で乱入!


ガキィイインッ!!


スケルトンが振り下ろした1本目の大剣を

修君は左手の巨大な大盾で正面からガッチリと受け止める!

そして、間髪入れずに襲いかかってきた2本目の大剣に対しては――


「『土壁アースウォール』ッ!!」


修君は右足で地面を激しく踏み抜き

足元から突如生やした強固な土魔法の壁で2本目の攻撃をガッチリと受け止めてみせた!


両手が完全に塞がり、硬直する巨大スケルトン!


「今だッ! 一斉に叩けぇ!!」


修君の叫びに応え、味方4人が一斉に飛びかかって物理乱打を叩き込む!

敵がグラリとひるんだその瞬間――


一撃離脱カウンター破ぁあああッ!!」


修君が渾身の力で盾を叩きつけ、スケルトンの頭部を一撃で粉砕した!


『見事! 1年Aチーム、巨大スケルトンを撃破し1つ目のコアを獲得!!』


見事な連携で1つ目のコアを手に入れた修君たち。

しかし――画面のタイム表示を見ると、他のトップチームにほんの少しだけ遅れをとっていたのだった。

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