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第104話:【VR障害物競争】

「香澄ちゃん、頑張ってね! 危なくなったら『あれ』を使うのよ!」

「ええ、任せて!」


有希の頼もしい(?)見送りを受け、私は選手控え室に設置された

最新型のVR(仮想現実)カプセルへと滑り込んだ。

視界がふっと暗転し、脳神経へのダイブ感覚が走る。


次に目を開けた時、私は巨大なスタジアムの中央

【魔法障害物競争】のスタート地点に立っていた。


「……うわぁ。いつ見ても凄いわね、このコース」

私はどう見ても高校生の部活動の範疇を超えている地形を前に、思わず感嘆の息を漏らした。


すると、上空に浮かぶ巨大モニターに実況席が映し出され

テンションMAXの実況ボイスが会場全体に響き渡った。


『さあさあ皆様! まもなく【魔法障害物競争】の予選が始まります!

予選は1レース10人、全20レースの計200人が参加!

各レースの順位ではなく、全出場者の中で【

規定回数を周回しゴールしたタイムの上位30名】が

決勝ラウンドに進出できます!』


なるほど、タイムアタック形式ね。他のレースの記録が分からない以上

とにかく最速を目指すしかない。


『レース前にルールの確認です! 本競技はVR空間のため

どれだけ派手に吹き飛んでも現実の怪我の心配は一切ございません!

そのためルールは至ってシンプル!』

実況の声が、どこか邪悪に弾んだ。

『ダメージを食らっても血は出ません!

その代わり、ダメージの度合いによってVRアバターの

【その部位パーツがポリゴンとなって消滅】します!

足が吹き飛ぶなどして走れなくなった(リタイア)場合は

その時点で失格となります! 以上がルールです!』


(……相変わらず、エグいルールね)

腕が一本なくなろうが、首から下が無事なら走れってことだ。


『まもなくレース開始です! 出場選手は位置についてください!』


スタートラインに並ぶ他校の9人の選手たちが、ギラギラとした目で互いを牽制し合っている。

(いよいよだわ。出場選手もコースのギミックも

事前の情報通り。有希のアドバイスもあるし……あとは、突っ走るだけ!)

私は深く息を吸い込み、姿勢を低くした。


『3、2、1……スタートォォッ!!』


号砲と共に、選手たちが一斉に爆発的なスピードで飛び出していく。

しかし、私は【わざと少し遅れて】スタートを切った。


(まずは様子見よ。先頭集団に突っ込んで無駄に消耗するより

他人にトラップを解除させた方が効率的だわ)

私は、冷静に集団の最後尾を追走した。


最初の難関は、ほぼ垂直にそびえ立つ【崖登り】だ。

「もらったァ!」

崖に取り付こうとした瞬間、右斜め前を走っていたライバル選手が

私を蹴落とそうと妨害の炎魔法を放ってきた。


「甘いっ!」

私は走りながら指先を弾き

圧縮した水魔法ウォーターバレットをピンポイントで放ち

炎の軌道を空中で撃ち落として相殺した。

「チッ!」

舌打ちをしたライバルは、私を諦めて崖を駆け上がり始める。


私も魔力を足裏に集中させ、垂直の崖を忍者のように駆け上がる。

しかし中腹に差し掛かった時

今度は下から登ってくる後続の選手から、鋭い風のカッターが飛んできた。


「みえみえよ!」

私はわざと壁面の脆い岩を魔法で砕き

崩れ落ちる巨大な岩の破片を空中で【足場】にして

アクロバティックに蹴り跳んだ。

風の刃を華麗に回避し、そのまま一気にジャンプして崖の頂上へと躍り出る。


「ふぅ……!」

崖を登り切った先は、広大な荒野エリアだった。

私は走り続けながら、地面のわずかな違和感――土の色が違う【特定箇所】を視認する。

(あれは……地雷トラップね。踏まないように走り抜けないと)


状況を確認する。

前方に2人。後方に3人。少し距離は開いているが、魔法の射程内だ。

「邪魔よっ!」

前の2人が振り返りざま、私に向けて牽制の土弾を乱れ撃ちしてきた。

私はポーチからナイフを引き抜き、魔力を纏わせて飛来する土弾を真っ向から斬り裂く!


パァンッ!

砕け散った土の破片が、四方八方に散弾のように降り注ぎ

あろうことか、私の足元のすぐ近くに埋まっていた【地雷】の

起爆スイッチにクリーンヒットした。


(――ヤバッ!?)

頭でそう思考するより【先】に。

私の身体(本能)が、勝手にバネのように飛んだ。


ドゴォォォォンッ!!

凄まじい爆発が起こり、土煙が舞い上がる。

私は空中で身を捻り、爆風をギリギリでやり過ごして無傷で着地した。


「よしっ! 一人脱落だな!」

先頭を走る2人が、爆音を聞いて私が自滅したと思い込み

ニヤリと笑って先へ進もうとした。


(……油断大敵よ、おバカさんたち)

私は着地と同時に、前方の2人の足元――彼らが慎重に避けて通ろうとしていた

地雷のど真ん中に向けて、渾身の【水魔法】を叩き込んだ。


ドバァァンッ!!

「「ぎゃあぁぁぁっ!?」」


強烈な水圧が地雷の連鎖爆発を誘発し、先頭の2人が爆炎と共に宙を舞う。

彼らのアバターの腕や肩のパーツが、VR特有のポリゴンとなってポロポロと崩れ落ちた。


「な、なんだと!? てめぇ、あの爆発でまだ生きてたとはな……!」

ポリゴン欠損で痛手ダメージを負いながらも

なんとか体勢を立て直した2人が、悪鬼のような顔で私を睨みつける。


「ふふっ。これでも私、結構しぶといのよ?」

私は優雅に微笑みながら、両手に水の魔力を顕現させた。


後続の3人も追いついてきて、状況は一触即発。

ただ走るだけの平和な障害物競争は開始数分で終わりを告げ

血で血を洗う(血は出ないけど)、壮絶な【大乱戦】の幕が上がるのだった。

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