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第99話:【過密スケジュールへの絶望】

「はぁぁぁ……やっと休める……」

あてがわれた二人部屋に入るなり、私はベッドにダイブした。


荷物を解きながら、同室の千晶ちゃんが私の太ももにある『空間ポーチ』を見て

目をキラキラさせていた。

「お姉さまのそのポーチ、本当に便利そうですね。すごく羨ましいです!」


「ふふ、千晶ちゃんならそのうち買えるようになるわよ。優秀なヒーラーは引く手数多だからね」

私は先輩風を吹かせつつ、真剣な顔で忠告する。

「ただ、これだけは覚えておいて。有名になると

色んな人から物をたくさん貰うようになるわ。

でも、タダより高いものはないの。

貰った分だけ『面倒ごと』が雪だるま式に増えるから

自分の意思をしっかりと持つようにね!(※私の面倒ごとを押し付けられた時のためにも!)」


「はい、分かりましたお姉さま!

私、一日でも早くヒーラーとして一人前になって

お姉さまの役に立てる(面倒ごとを引き受けられる)ように頑張りますっ!!」

胸の前で両手をギュッと握りしめ、健気に意気込む千晶ちゃん。


(ああ……なんて純粋で素晴らしい子なんだろう。

私がサボるための完璧なデコイ(身代わり)に育ってくれそうね……!)

私が感動で胸を震わせていると、コンコン、と部屋のドアがノックされた。


「有希、いるー? そろそろミーティングの時間よ」

香澄ちゃんの声だ。移動中のPTのグループチャットで

男女で階が分かれていることや各自の部屋番号は共有済みだった。


「はーい、今行く! 千晶ちゃん、行くわよ」

「はい!」

私たちは部屋を出て香澄ちゃんと合流し、エレベーターホールで

男子階から上がってきた雄一先輩と花梨とも合流して大広間へと向かった。



大広間には、すでにエシュ学園の生徒たちが集まり

好きな場所に座って雑談していた。

「私たちも適当にあの辺に座りましょ」

私が壁際の目立たない席をキープしようとした瞬間。


「あら有希。あなたは何を一般生徒に混ざろうとしているの?」

背後から、生徒会長の東雲理沙さんに首根っこ(襟首)をひょいっと掴まれた。

「有希は『生徒会側』の枠で来てるんだから、こっちの前の席よ」


「えぇー……私、生徒会の仕事なんて何も知らないんですけど」

「大丈夫よ。あなたは『置物担当』だから。座って優雅に微笑んでいればいいわ」

理沙さんが隠す気ゼロでぶっちゃける。


(もうちょっとオブラートに包んでくれてもいいんじゃない!?

……まぁ、仕事しなくていいなら楽だからいいや)

私は抵抗を諦め(スルーし)、理沙会長の隣の席にちょこんと座った。


やがて担当教諭が前に立ち、パンパンと手を叩く。

「よし、静かに! 明日からいよいよ競技が始まる。

各自、悔いの残らないようにな!

それでは、各種目につくサポーターの名前と、日程を発表する!」


読み上げられたスケジュールは、以下の通りだった。

1年生は基本的に上級生がサポートにつくのだが、

私は【PTメンバーが出る競技の主なサポート】に回ることになった。


【1日目】午前:香澄(魔法障害物競争・予選)/ 午後:花梨(ソロバトル・予選)

【3日目】午前:修平(ダンジョンラッシュ・予選)

【4日目】香澄(決勝 ※予選通過なら)

【5日目】修平(決勝 ※予選通過なら)

【6日目】花梨(決勝 ※予選通過なら)

【7日目】学校対抗戦(※私も出場)

【8日目】閉会式


こういう日程になると頭で考えていると担当教諭が

「以上だ。あとは各自、サポーターと意見交換をしておくように!

 あと高橋は、自分のサポートが終わったら

 他の競技者のところへできるだけ顔を出すようにしてほしい。」

と名指しでたのまれてしまった。

皆の前で頼まれた以上断るという選択肢がなくなってしまったため

わかりましたと返事をする。


ミーティングが終わり、広間がガヤガヤと騒がしくなる。


(……いやいや。今の日程に加えて

神代会長に頼まれてる『各国の顔合わせ』の出席と

千晶ちゃんの面倒が加わるの?

私の自由時間(お昼寝タイム)、どこにもないじゃない……)


私がうへぇとうんざりしていると、担当教諭が私たち生徒会役員の席へやってきた。

「会長、すまないが急な変更だ。今回の『学校対抗戦』の形式が変更になった」


「はぁ?」

理沙会長と、その隣にいた生徒会副会長のあおい先輩が、同時に顔をしかめた。

「聞いてないんですけど。どういうことですか、先生?」

勝気な葵先輩が詰め寄る。


「俺も昨日、運営から聞いたばかりなんだ。

理由は、『精霊協会』側から『ずっと同じ形式では盛り上がりに欠ける』と

強い要望があったらしくてな。個人戦や多人数戦ではなく

【3対3のPT戦形式】に変更になった」

「3対3……つまり、理沙、私

そして高橋さんの3人でチームを組むってことね」

葵先輩がチラリと私を見る。


(おっ。ということは、理沙会長と葵先輩が前衛で大暴れして

私は一番後ろでバリアを張って適当にバフをかけておけばいいってことね?

むしろ楽になったわ!)


「急なルール変更で文句も言いたいでしょうが

まあ、やるっきゃないですよ。暇な時に3人で連携確認でもしましょうか」

私がニコリと『聖女スマイル』で提案すると

理沙会長と葵先輩は「そうね」「さすが有希、肝が据わってるわ」と感心してくれた。

(よっしゃ、うまく言いくるめた!

とりあえず後で適当に合わせるフリだけしておこう)


生徒会の仕事として、理沙会長が千晶ちゃんを呼び

当日の注意事項やヒーラーとしての動きの確認をしてくれている間

私は自分のPTメンバーの元へと向かった。


まずは花梨だ。

「有希ちゃんが私のサポーター!? あああっ、神よ(※有希のこと)!

この身に余る光栄、死んでも報います!!

私、有希ちゃんに褒められるために、明日の予選は敵を全員5秒で消し炭にしてきますねっ!!」

「いや、死なないでいいし、ルール守って戦ってね!?」


うれし泣きしながら狂喜乱舞する熱狂的信者を必死になだめ

私は初戦の相手の情報の資料を渡した。

「おーい、花梨。テンション上がりすぎて魔力暴走させるなよ」

そこへ雄一先輩がやってきて、的確なアドバイスとツッコミを入れ始めた。

(……なんかこの二人、最近やけに仲いいわね?)

私は少し微笑ましく思いつつ、二人をスルーして香澄ちゃんの元へ向かった。


「香澄ちゃん、明日の障害物競走の準備はどう?」

「バッチリよ。競技のコースやルールは大体調べてあるわ!」

自信満々に答える香澄ちゃんに、私は集めておいた出場選手の資料を渡した。


「遅れてすまん!」

そこへ、息を切らせてやってきたのは佐々木翔先輩だった。

「あれ? 翔先輩。サポートとして登録されてたのは知ってましたけど

行きのバスにいませんでしたよね?」

「ああ、ちょっとやることあって、別行動で遅れてきたんだよ」


(なるほど。じゃあ、香澄ちゃんのサポートは翔先輩に丸投げでいいわね!)

「あとは任せましたよ、先輩!」

「おう、任せろ!」

二人のいい感じの雰囲気を邪魔しないよう

私はそそくさとその場を離れた。


最後は修平くんだ。

彼はダンジョンラッシュの出場者とダンジョンに

潜っていたおかげで連携は完璧らしいが

競技ダンジョンラッシュ自体のコツが分からず悩んでいた。

すると、そこへ3年生の先輩がやってきた。


「よう、1年。ダンジョンラッシュはただ突っ走るだけじゃダメだ。

罠の解除と、ライバル校からの妨害デバフへのヘイト管理が鍵になるぞ」

「あ、ありがとうございます! 先輩は……?」

「俺は去年優勝したから今年は不出場だ。

まあ、エシュ学の看板を背負うんだ、気合い入れろよ」

先輩からのありがたいアドバイスに修平くんは「はいっ!」と深く頭を下げていた。


私は出場者の資料の束を修平くんに渡し

全てのサポート業務(丸投げ)を完了させた。


「よし、これで私の仕事は終わり!」

私はスマホを開き、過密な日程をカレンダーアプリに入力する。

そして、神代会長宛に『顔合わせはいつですか?』と短いメールを送信した。


その後、約束通り理沙会長・葵先輩と3人で軽く連携の確認

(※私は後ろでバリアを張る位置の確認だけ)を済ませた私は

諸々の打ち合わせを終えた千晶ちゃんを誘った。


「千晶ちゃん、お疲れ様。明日から地獄の一週間だから

今のうちに息抜きしに行かない?」

「はいっ! お姉さまとお出かけ、嬉しいです!」


私たちは現実逃避をするように、二人で宿舎を抜け出し

大会会場に併設されたショッピングモールへと

束の間の平和(お買い物)を満喫しに出かけるのだった。

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