表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
PR
102/138

第98話:【無限湧きするナンパ男】


「はぁぁぁぁ……長かった……。マジで溶けるかと思ったわ……」


長い長いバスの旅を終え、ようやく大会の宿泊施設兼・特設会場に到着した私は

バスのステップを降りるなり地面にドロドロに溶け落ちそうになっていた。

隣の席からは永遠と話しかけられ

周囲の席からはチラチラと謎の視線を向けられ続け……

HPは減っていないが、精神力(MP)はすでにレッドゾーンである。


「あはは、大げさですよ、お姉さまは」

私の横で、千晶ちゃんがコロコロと鈴を転がすように笑う。

「いや、大げさじゃないのよ。

私のHP(精神的な意味で)はもう風前の灯火なの……」


ぐったりしながら周囲を見渡すと、会場の広大なエントランスには

私たち『エシュ学園』以外にも

様々な制服を着た他校の集団が続々と集結していた。


『おい見ろよ、あの銀髪の子、めっちゃ可愛くないか?』

『どこの学校だ? 制服からしてエシュ学の生徒っぽいな』

『うわー、あんな美少女がいるなんてエシュ学の奴らが羨ましいぜ……』


(……うわぁ。なんかヒソヒソ聞こえてくる。めんどくさい、超絶めんどくさい)

私はうんざりしながら、引率の担当教諭の元へと向かった。


「先生、これからどうすればいいんですか?(早く部屋でゴロゴロさせてください)」

「お、高橋。今、他の先生が受付で手続きをしてるから

もうしばらくここで待機してくれ。それが終わったら荷物を下ろして

ミーティングが終わった後は自由時間だ。

ただし、明日は開会式だからハメを外しすぎるなよ?」

「わかりましたー」


適当に返事をし、私は千晶ちゃんと雑談しながら周囲の人間観察をすることにした。

すると案の定というか何というか

他校の男子生徒の集団がニヤニヤしながらこちらに近づいてきた。


「やあ。君たち、エシュ学の生徒だよね? 俺は【獅子王学園】の

豪徳寺ごうとくじ たけるっていうんだ。どうだい?

もしよかったら、この後一緒にどこかへ出かけないか?」

いかにも自信過剰といった感じの、派手な顔立ちの男子が声をかけてきた。


(……豪徳寺 猛。たしか、千晶ちゃんのお兄さんから見せられた

『他校の要注意選手リスト』の上位にデカデカと書いてあった名前ね)

私は心の中で舌打ちをしつつ、顔には完璧な【営業スマイル】を貼り付けた。


「お誘いありがとうございます。ですが、

私たちこの後すぐに用事がありますので、ごめんなさい」

マイナス50度の絶対零度を孕んだ笑顔で断る

。しかし、豪徳寺の隣にいた取り巻きらしき男子生徒が

しつこく食い下がってきた。


「いいじゃんいいじゃん! 別に君たち、選手なんだろ?

これからすることなんてないだろ? な? 行こうぜ!」

「いえ、私は選手の『サポート』ですし、それに『生徒会活動』のお手伝いもあって

これからめちゃくちゃ忙しくなることが確定しているので、物理的に無理ですね」


適当な理由を並べてあしらおうとするが、

血の気の多いスポーツマン(?)特有のノリなのか、男子たちは全く諦めようとしない。

(あー……ウザい。本気でウザい。)

私が笑顔の裏で物騒な考えがよぎった、その時――。


「あら。うちの大事な生徒に、一体何をしているのかしら?」


絶対的な覇気と圧力を伴った、冷ややかな声。

振り返ると、そこには腕を組み、冷ややかな視線で男子たちを見下ろす

生徒会長・東雲理沙の姿があった。


「げっ……東雲理沙……」

豪徳寺が少し顔をしかめる。

「ちょっと仲良くなろうと声をかけただけだろ?

これから戦う者同士、礼儀ってやつは必要だろ?」


「そう。それが選手同士の交流なら百歩譲って目をつぶっていたけれど……

『サポート』の生徒に執拗に声をかけ

少しでも敵校の妨害をしようとする姑息な行為は

生徒会長として無視できないわね」

理沙さんが一歩前に出ると、ビリッ、と空気が震えた。


「はっ、被害妄想がひどいな? こっちは丁寧に声をかけただけなのによ」

豪徳寺も負けじと魔力を少しだけ漏らす。

完全に一触即発のバチバチ状態である。


(……よし。会長が来てくれたことだし、ここは一つ、大人の対応をとるべきね)

私は「あとは任せた!」とばかりに気配を消し

そーっと、そーっとその場から千晶と共に抜け出した。


そのままロビーをぶらぶらと歩いて時間を潰そうとしたのだが……。


『ねえ君、これから暇?』

『俺たちと一緒にお茶しない?』


(なんでこう、歩くたびにエンカウントするのよ!?

この会場、ナンパ男の無限湧きスポーン地点か何か!?)

私は心底うんざりし、「忙しいんで!!」と全員を冷たくあしらうと

早歩きで千晶ちゃんと共に荷物置き場へと逃げ帰った。


「お、お姉さま、大変ですね……。

でも、それだけ皆がお姉さまの素晴らしさと魅力に

気づいている証拠ですね! 私も誇らしいです!」

千晶ちゃんが、純度100%のキラキラした瞳で全肯定してくる。


「……違うわよ千晶ちゃん。あいつら、私が可愛いから声をかけてるだけ。

もっと言えば、目線が私の胸とか脚ばかりに釘付けだったわ。ただの欲望の塊よ」

私がこの世の真理(愚痴)を吐き捨てていると、ようやく先生から声がかかった。


「おーい、ルームキーを渡すぞー。……高橋は、隣にいる特別枠の佐々木千晶君と同室だ。

 これが鍵な」。あとこの後ミーティングがあるから集合するように。」

と先生から、2枚のカードキーが手渡された。



「や、やったぁぁぁっ! お姉さまと同室!! 神様ありがとうございます!!」

千晶ちゃんが両手を握りしめて天を仰ぎ、歓喜の声を上げる。


「はいはい、それじゃあさっさと部屋に行って休むわよ」

私は千晶ちゃんと一緒にエレベーターへと向かった。


しかし、その短い移動の間にも、

すれ違う他校の男子たちからチラチラと視線を向けられ

声をかけられそうになる始末。


(ああ……こんなことなら、物理的にも精神的にも全てをヘイトを集める

うちのパーティーの『盾(修平くん)』を無理やりにでも連れてきて

肉の壁にすればよかった……っ!!)


これからの長い一週間を思い、私は部屋に着く前から

激しい後悔と共に深い深いため息をつくのだった。め息をつくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ