私の苦労が始まりました。
私の中でゴチャゴチャと言っているフロスことフローレンスと一つの体で同居しながら、これから暮らしていかなければならない。これからの事を考えると頭が痛くなりそう。そうでなくても色々な心配ごとがあるのに。
もし、このまま部屋に戻って私とフローレンスとの会話をしたとしたならば、私が独り事を言っているように見られる。きっと、私は頭がおかしい子だと思われる事になり兼ねない。
私はそれだけはイヤだ!なぜなら私に付いた別名「怪異姫」の通り「頭の可笑しな姫」になる。絶対に、それだけは避けたい!
口が裂けても「私はもう1人のフローレンスと話している」なんて言えるわけがない。
もし、もしもバレでもしたら面倒なことが起こるのは目に見えてる。
部屋に戻る前に、これからの事を話し合って二人だけの「ルール」なるものを作り、フローレンスに従って貰わなければ一緒に生活をする事は難しいと思う。
(フローレンス。出てきて。話しがあるのよ。)
『何ですの?琴子さん。部屋に戻るのではなかったのかしら。』
(あのね、このまま部屋に戻ったら先生やアンに怪しく思われるかもしれないのよ。それに暫らくは一緒に暮らすんだから「決め事」を作りたいの。いいね!)
『... それは強制ですの?』
(当たり前よ!私のためなんだから拒否は出来ないよ。)
『琴子さんのためなのですか?...まぁ、仕方がないですわね。でも、琴子さんってワガママですわね。』
(ワガママ?...それも、これもフローレンスが悪いんじゃないの!...まぁ、いいわ!それよりも、これから部屋に戻るのだけど、部屋に戻ったら絶対に私に話しかけない事。私に話しかける時は皆が眠った後のみ。それに、勝手に私を起こさない事。
私は南庭園に行く事もあるだろうから、私の体を使ってあっちこっち行かない事。私以外に各国の姫さん達も大勢来ているから、本物のあなたと悟られない事。今、ここでは私がフローレンスなんだから。そうそう、ドミトルさんとラグ陛下を昔から知っていても「知らない」と通す事。これは、各国の姫さん達との集まりとアンや先生がいる時よ!忘れないでね。そうでないと私が虐められるからね。良いわね!そして...)
『琴子さん。まだあるのですか?承知いたしておりますわよ。わたくしだって琴子さんにご迷惑をかけるのはイヤですもの。』
(まぁ~良い心がけじゃない。じゃあ、そういう事で、ヨロシクね。)
『ええ。分かりましたわ。わたくしのほうこそ宜しくお願い致しますわ。』
私達のルールも決めたし、一応は大丈夫。...だけど、本当にこの子は大丈夫なんだろうか?
私としては、一抹の不安も覚えるんだけど。
『琴子さん、お話しも終わりましたでしょう。早く、お部屋に戻って下さいませ。琴子さんったら。』
(分かったわよ!本当に五月蝿いんだから。)
そして、私達は庭園の出口のところまで来たらアンが何やら浮かない顔をしている。
私の事を心配してくれていたんだ。ごめんね。アン。
「アン!どうしたのですか?何かあったの?」
「お、お嬢様~~!ご無事で...ご無事だったのですね!よくお戻りになられました。申し訳御座いません!わたくし、お嬢様を1人にして...走って逃げてしまいました。本当に申し訳御座いません!」
「... ...アン。良いのよ。わたくしだって可笑しな事を言ってあなたに迷惑をかけたわね。ごめんなさいね。」
「いえ!わたくしは...わたくしは侍女失格だと思っております。それなのに、お嬢様はわたくしを許して下さって...わたくし、このアンはお嬢様に見捨てられるのかと思っておりました。」
「...大げさね~。アンは。」
「いいえ!わたくしは、お嬢様に何所までもお供を致しますわ!」
「...ありがとう。」
『琴子さん。これがアンなの?わたくしの知っているアンと違うような...』
(ちょっと!出てこないでよ~!これが何時ものアンなの!)
そして、私はアンと部屋に戻った。
やっぱりアンは私に「亡霊」はどうなったのかと聞きたくて私の顔をチラチラ見ている。
だけど、アンは黙っているだけ。
私はアレが「ウソ」だとは言えず如何したものかと考えているのよね。
その時、フローレンスが私の口を使って『大丈夫よ。アンは心配症なんだから。亡霊なんて初めからいないのよ。』
「お、お嬢様。本当に大丈夫で御座いますか?わたくし、心配しておりました。もしも、お嬢様に前后様の亡霊が...失礼致しました。お嬢様がそのように仰るのですから...でも、安心致しました。」
『ええ。有り難う。アン。早く部屋に戻りましょう。』
(... ...)
『これで良いでしょう!琴子さん。アンも安心したみたいだわ。』
(ちょっと!勝手に話さないでよ!今、さっきルールを決めたでしょう!何、勝手にアンに話しかけているのよ!まったく!)
『何を仰っているの。わたくしは琴子さんを助けてあげたのですわ!』
(助けて頂かなくても結構よ!自分の事は自分で解決するわよ。)
『まぁ~!何て言い方をされるのかしら。それに、これからはわたくしの助けも必要になりましてよ。琴子さん!』
(うるさい!)
本当に、大丈夫なのか?私達。今から不安になってきたわよ。
そして、私達3人は部屋に戻った。
「さあ、お嬢様。セスチャ様がお待ちですわ。」
アンはそう言って部屋のドアを開けた。
先生はと言えば、ドアの中で先生は腕組をして、薄目で私を見て口の口角が少し上げて「フローレンス様。お帰りなさいませ。遅かったのですね。如何でしたか?東庭園での散策は。」
「...先生。散策は...散策は楽しかったですわ。(ニッコリ)」
「そうですか。それは良かったこと。」
先生はそれ以上、何も言わなかった。だけど、怖い。私は先生と目が合わせられない。
「そうそう、フローレンス様。陛下から、お茶会の書簡が届いています。」
「エッ!... ...お茶会ですか。」
「お嬢様~!今から楽しみですわね。ウフッ!」
お茶会... ...また、あの姫さん達と顔を合わさなければならないのか。
また、あのカルロッティナさんと顔を合わさなければならない。今度もイヤミの一つでも言われるのだろうか。あの姫さんって人を見下したような感じだから嫌いなのよね。
また、お菓子とお茶が頂けることは嬉しいけど。勿論、友達になったマリアさんとエルミナさんと会えるのも嬉しいんだけどね。
また、アンは頑張るのだろうな。「女は綺麗でないと!」とか言って、ドレスや髪型や装飾品にこだわって私を着飾るんだもん。着慣れないドレスを着て、ずっとイスに座っているだけで何もできないから苦痛なのよね。それも「お姫様」の顔をして。
そりゃ私も女。綺麗な物は大好きだけど、豪華なドレスだけは勘弁してほしい。
大食いの私にしてみたら、例えクッキーでもポロポロと粉がドレスに落ちる。お茶も溢すかもしれないじゃない。紅茶といえどもドレスに溢すと色は付く。と言う事は、染みになる。
染みの付いたドレスを着ていると、あのカルロッティナさんに「まぁ~!本当にはしたないですわね。フローレンス様!」って言われかねない。
お茶会の事を考えると、今から憂鬱になってくる。
「先生。お茶会は何時ですか?」
「フローレンス様。ご自分でお読み下さい。」
ど、どうしよう!私ってまだ完璧にここの文字が読めないのよね。
先生から渡された書簡。中を開くとやっぱり前と同じ文字。
アンは私に書簡を読んでもらおうと目を輝かせているし、先生はまるでダンボの耳のように大きく開いているようにも思える。
私といえば、前と同じ状況に陥っているわけよ。
その時、本物の彼女が『琴子さん。如何されたの?お読みになられないのですか?』と言ってくる。
私は...私は「読むわよ!」と彼女に言いつつも読めないっては言えないのよね。
『琴子さん...あなた、もしかして文字が読めないの?』
(... ...)
『琴子さん。わたくしが読んで差し上げましてよ!フフフ・・・』
(... ...)
この子の言い方ってイヤミだわ!私が読めないからって、そんな馬鹿にした言い方をしなくてもいいじゃないの。本当に腹が立つ!だけど、こんな事を言っている場合では無いのよね。
(フローレンス。読んでくれる?)
『あら~琴子さん。ご自分でなんとかされるのでは?』
(...フローレンス。お・ね・が・い。読んで。)
『わたくしにお願いをなさいましたの?宜しいですわよ。本当に琴子さんはワガママですわね。』
悔しいけど、この場合は彼女にも協力してもらわなければならないわけで私のプライド?なるものは今は、どうでもいい事にしておく。私だって、本当はフローレンスには頼みたくなかったわよ!
それに私がワガママだって!ワガママはオマエだ!フローレンス!
「お嬢様?如何されたのですか。大丈夫で御座いますか?」
『ええ...では、読みますわよ。3日後に北棟、サロンにおいて茶会を催す。時間は午後1時。』
「3日後ですか。3日間もあればドレスも髪型も選べますわね。お嬢様~♪」
やっぱりアンは前回に続いて私を「お姫様」に変身させてくれる。でも、苦痛だ!
『まぁ~お茶会ですって!琴子さん、3日間しかないのですよ。急がないといけませんわね。』
(なんで急ぐ必要があるのよ。3日間もあるのよ。意味わからん。)
『まぁ~!琴子さんはご自分を美しく飾りたくはないのですか!お肌のお手入れも急がないといけませんわね。それに、ドレス選びでしょう。ネックレスや...そうそう、髪型も決めないといけませんわよね!』
(うるさい!ドレス云々ってどうでもいいのよ!私は、お菓子とお茶が頂けたら満足なの!)
『お菓子とお茶?わたくしには、琴子さんの仰っている意味がよく分かりませんわ!』
私は、本当に気が重い。それに、もう1人のフローレンスがゴチャゴチャ言い出してきそうな予感。いったい私は如何なるの?




