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戦う考古学者と卵の世界  作者: いくさや
第四章 オド・ネメニファーラ大空洞
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123/179

120 一撃必殺

 120


 狙うは遠距離からの一撃必殺。


 青柳君の系統を参考にするならば、長距離ライフルによるヘッドショットなんかが思い浮かぶのう。

 いかにも得意そうな知り合いを思い出して懐かしくなる。


 しかし、ヘッドショットはできんな。

 技能云々ではない。

 守護者の奴、頭が四つもあるからひとつ潰しても意味がなかろう。

 全部潰せば倒せるかもしれんが、その前に儂のロープが尽きる。

 あれを弱点とは呼べんな。


 ならば、定番としては内臓狙いが妥当か。

 心臓とは言わん。

 体の内側を砕けば、大抵の生物は死ぬ。

 異形生物もその法則は変わらんかった。

 どれだけ化け物じみていても生物なら限界はあるだろう。


 しかし、内部破壊というのも難しい。


 少なくとも腸砕き、は無理じゃな。

 陸に上がれば技を放つ余裕なんてないじゃろうし、放てたところであの外皮と筋肉で衝撃が殺されるのがオチだろう。


 となると、やはり模造武装レプリカアームズ――砲弾カノンしかないのう。


 儂が持ちうる最大の一撃。

 問題はそれでも尚、威力が足りぬという点か。

 あと速度にも不安が残る。

 この距離では回避される可能性も考えないとなあ。


 近づければ問題は解決なんじゃが。

 試しに横の移動ではなく、守護者へと近づいてみる。


「――はっ、っぅ!」


 素早く水面に顔を出して、一度の呼吸さえも半端になりながら潜った。


 連続した衝撃に襲われる。

 今までよりも強い。

 揺れる水中に翻弄されながらも潜行するが、脇腹に一発岩が掠めていきよった。

 思わず息を漏らしそうになり、手で口を押えて、深みへと逃げる。


 傷は痛むが、耐えられる。

 液状マナのおかげじゃな。

 掠めただけでこの威力と思うとぞっとするのう。


 しかし、状況が悪化しておる。


 反応が速くなっているのは間違いない。

 こりゃあ、次に顔を出したら一秒も時間はないぞ。

 近くに行けば、それだけ発射から着弾の時間も短くなってしまうし、威力も増すのだから、もっと条件は厳しくなってしまう。


 元の辺りまで戻りながら、打破する手段を考えるが、どんなに考えても儂には模造武装レプリカアームズ以上の解答は用意できん。

 これで奴をぶち抜く以外はない。


 そして、チャンスは一度きり。

 六割強のロープを出し惜しみしては倒せず、使えば確実に半分以上は消耗して、気絶してしまうだろう。


 覚悟を決めた。


 まずはボロボロになったシャツを脱いで、体から余計な力を抜けば、自然と体が浮かんでいく。

 どうやら液状マナは人体より重い性質があるらしい。

 これなら気絶して湖底に沈む心配だけはなさそうじゃのう。


 姿勢は仰向け。

 オド・ネメニファーラ大空洞を満たすマナの輝きに揺れる水面が近づいてきた。

 浮上まで残り十秒といったところか。


 頃合いじゃ。

 開いた足先の方向へ右腕を伸ばし、液状マナの中で糸を構成していく。

 描き出すのは今まで最も巨大な竜砲の図式。


 だが、少し大きくした程度では足りんと直感が告げておる。


 だから、その銃身の部分に工夫を。

 弾丸発射の図式を三段階にする。

 一層目で発射、二層目で加速、三層目でさらに加速。

 これだけ重ねれば相当な威力と速度が稼げるはずじゃろう。


 残り三秒。

 脱いだシャツをロープで横の方へと放り、水面へと持ち上げる。

 水面に浮かぶと同時にシャツに岩が直撃した。

 うっすらと見えた射線の方向は変わらん。

 奴は動いていない。


「――喰らえ」


 水面に浮かび上がった。

 液状マナの波の向こう側。


 守護者が手を向ける。

 岩が放たれるまで一秒もない。

 当たれば死ぬ。

 だが、半秒足らん。


 儂は狙いを定めると同時に撃ち放つ。


 模造武装レプリカアームズ――徹甲弾ライフル


 閃光が奔った。

 青白い一条の残光が儂と守護者の間を結ぶ。

 地底湖と大気に満ちたマナを巻き込み、貫き、拡散し、波紋となって広がり、渦を巻いて乱れていく。

 遅れて空気が破れる音が衝撃となって抜けた。


「あ、がっ――!」


 ロープが全て焼け落ちた。

 かつてないフィードバックに襲われる中、必死に意識を繋ぎとめて、成果を見定める。


 守護者は動かない。

 岩が飛んでくる様子もない

 両手をぶらりと下げたまま、立ち尽くしている。


 胴体。

 その中央。

 水月の位置。

 巨大な穴が開いている。


 そこに弾丸は命中し、皮膚を破り、肉を抉り、内臓に届き――止まっていた。


 守護者がゆっくりと動き出す。

 ダメージは甚大。

 持ち上げる両腕は震え、今にも足は崩れ落ちそうだ。

 だが、岩の一撃を放つぐらいはできるのだろう。

 勝利を確信したように笑っているように見えるのはうがちすぎだろうかのう。


 儂は指の一本さえも動かせない。

 意識を保っているのさえ奇跡に近い。


 だから、言ってやる。


「終わりじゃよ」


 次の瞬間、守護者の腹の内から白い炎が噴き上がった。


 壮絶な悲鳴が守護者の口から洩れる。

 守護者の体内から放たれた白炎が、その内側を焼き尽くしているのだ。

 心臓も、肺も、消化器官も。

 化け物であっても鍛えられるわけはない。

 容赦なく白炎は飲み込んで、灰燼に帰していく。


 どんなに強靭な生物でもこうなれば生存はできん。

 腕が落ち、触手が崩れ、口腔から白い炎を吐き出し、ゆっくりと後ろに倒れて、動かなくなった。


「はあ……」


 急速に意識が遠のいていく。


 残っていた六割のロープ。

 その全てが燃え尽きたのだ。

 初めての全損。

 耐えられるわけもない。


「生き残ったわい」


 三割は発射のために使った。

 三段階の加速の図式。

 だが、これでは半分だけ。

 では、残りの半分は何か?

 簡単な話じゃな。


 弾丸生成。

 弾頭内に模造武装レプリカアームズ――焼夷弾フレイム――白炎の図式を刻んでおったわけじゃ。


 一度使えばフィードバックで気絶確定の一撃。

 さしずめ、模造武装レプリカアームズ――炸薬弾エクスプロージョンといったところかのう。


 波に揺られながらそんな事を考え、儂の意識は遠のいていった。

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