↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
49/70

第49話・建て直すの日々・幕間・その1

第49話・建て直すの日々・幕間・その1


==========

第49話・建て直すの日々・幕間・その1


==========

火の柱が夜空を貫いたと同時に、新都全域に火属性の魔物が大量発生した。


「どうしよう……街の混乱を聞いてしまったら、身体が勝手に出撃しちゃいます……残桜ちゃんにどんな言い訳をすればいいかしらー」


双剣を携えた桜色の幼い騎士が、街の最も混乱の激しい場所へと駆け出す。


彼女の姿は、わずかな鎧を纏った白いドレスに、優美な騎士剣を持つ可憐な姫騎士そのものだった。


同じく騎士のような変身形態でも、コンダクターが王子の騎士なら、彼女はまさに救世の姫騎士──原初の魔法少女にして「正義の魔法少女」、九条如月。


魔物災害が始まったばかりの時代、魔力に染まった覚醒された少女たちの中、彼女は日本で最初に自らを定義し、「魔法少女」と名乗り活動する。

手に届ける範囲で人助けする、あの頃差別され、迫害された魔法少女を集結されする。

原初の魔法少女のリーダー、「正義の魔法少女」九条如月。


魔王との決戦で一度命を落とし、今は式神として蘇った第二の人生。


たとえ魔力が弱体化していようと、その魔力の輝きは周囲の魔物に見逃しはしない。


赤毛の狼魔物の群れが牙を剥き、咆哮と共に飛びかかる。


普通なら、華奢な身体など一瞬で引き裂かれるはずだった。


しかし──狼の爪は彼女に届かない。


「偶然」に、互いの喉を掻き毀し合う。


血飛沫が舞う中、如月は静かに微笑んだ。


「ふふっ……思考の途中ですのに、邪魔をしないでくださる?『刻み・悪人の標記』」


双剣が剣舞のように閃き、すべての狼魔物に浅い斬撃を刻み込んだ。


「......あ、そう!『私はたまたまあそこにいたから、仕方なく対応しただけだよ。』うん、ばっちり!」


如月が再び駆け出す頃には、彼女に襲撃の魔物は「偶然に」互いの攻撃に巻き込まれ、彼女たちはじきじきに双剣で浅い剣痕を刻める。


廃墟の中心に辿り着くと、そこには炎を纏った巨大な槍を持つ火炎の巨人が立っていた。


巨人が大槍を振り下ろす瞬間──「偶然」に、側に停まっていた車が爆発。


飛び散った瓦礫が槍の軌道を歪める。


「その攻撃、ぬるすぎますわ。ユグドラシル支援作戦で遭遇した火炎巨(ムスペル)人と比べれば、足元にも及びませんもの!刻み、です!『刻み・悪人の標記』」


如月は双剣で巨人の一撃を受け流し、同じ浅い剣痕を刻み込んだ。


標記された魔物たちは、次々と如月の元へと集まってくる、殺到直前。


「これで準備万端。遠くで戦う残桜ちゃんに負担をかけないよう、速戦即決しますわ!私の正義は揺るがない、迷いもない──『審判の天秤』!」


右手の剣を腰の鞘に収め、左手を前に伸ばす、黄金色の天秤が虚空に現れ。


「さあ、お前たちに罪の鋭さを感えろ──『永劫の裁き・断頭台』」


天秤が完全に傾いた瞬間、標記されたすべての魔物の首が、音もなく飛んだ、空気中の魔力へと還元されていく。。


『永劫の裁き・断頭台』、それは首を切るまで永遠に止められないの裁き。その鋭いさは相手の罪と彼女の主観的な認定で変動する。


「ふう……これでこの場所の危険は排除できましたわね。人助け、行きますわよ!」


周囲を見回し、魔力感知の範囲内に魔物の気配がないことを確認すると、如月は拳で瓦礫を砕いた。


下敷きになっていた男性を優しく引きずり出す。


「ああああ、俺の足が────!!」


「まあ、完全に折れてしまっていますわね。動かないでください。簡易固定しますから、救援を待ちましょう」


近くに落ちていた木の棒を拾い、器用に副木を作って足を固定する。


そのまま、視界の良い広場へと男性を運んだ。


次は双剣で障害物を切り払い、避難経路を塞がれていた家族を救出する。


「あ、ありがとうございます、魔法少女さん!ほら、魔法少女のおねえちゃんに感謝しなさい」


「うん!助けてくれてありがとう、魔法少女のおねえちゃん!ママ、私も魔法少女になりたい!」


如月は柔らかく微笑み、頭を優しく撫でた。


「気にしないでください。私は正義の魔法少女ですから、このくらいは当たり前のことですわ。……ただ、魔法少女になる夢は……その、できれば別の夢も探してみてくださると嬉しいですの。皆さんはあの広場で救援を待っていてくださいね」


彼女は次々と被災者を救い出し、広場へと誘導していった。


「さて、次は本部へ連絡……弁解はどうしましょ……あわわ!?」


通信端末が震えた。


如月は慌てて応答する。


「あ、もしもし~?正義の魔法少女です。ああ、残桜ちゃんの副官の方ですか?私は勝手に行動したわけじゃなくて……ええ!たまたまここにいただけですの!残桜ちゃんには言わないでくださ──え?残桜ちゃんが私に指揮を任せたですって!?……うん、喜んで受け取りますわ!そうそう、避難が間に合わない市民を助けています。増援をお願いします。ここは……うん、ちょっと破壊しすぎて場所が分かりにくいですわね。あとで座標を送りますから待っていてください!」


通信を切ると、如月は大きく伸びをした。


「許可が出たなら、市民の安全を確保して……久々に、魔法少女として全力で人助けしますわよ!」





*





一方、赤い鱗に覆われた蜥蜴型魔物の群れに包囲された幼女がいた。


しかし、討伐されたのは魔物の方だった。


その中心に佇むのは、原初の魔法少女・ドール。


透き通るような白い肌に、紫黒色の長い髪と瞳が神秘的に輝くゴスロリ風のモノクロドレスを纏った少女。


運動不足の細い四肢にはほとんど筋肉がなく、先天性の疾患により自力で動くことができない。


魂だけの式神として蘇生された今も、その身体は変わらない。


彼女が活動できるのは、自分自身の《傀儡の魔法》によるもの──周囲に浮遊する四つの十字型コントローラーから伸びる半透明の糸が、自らの身体を操る。文字通り、人形のような幼女だ。


「はぁ~……つまらない……」


退屈そうにため息をつきながら、ドールは両手の指先から半透明の糸を放った。


一番近くにいた蜥蜴魔物を瞬時に傀儡化し、同士討ちを誘発させる。


最後は操られた魔物を自らの糸で締め上げ、絞殺した。


彼女の魔糸は、ドクターのそれとは根本的に違う。


ドクターの糸は繋がるの「通路」、繋がる相手を改造する為に意志対抗を必要とする。

ドールの「傀儡糸」は意志など関係なく、強制的に相手の操作権を奪う支配の糸だった。


建物の影に潜んでいた最後の赤鱗蜥蜴が、隙を突いて襲いかかる。


「はあー……糸はもう周囲に張ってあるから、奇襲はバレバレだ。バイバイー。『糸切り』」


軽く手を振るだけで、高速振動する魔糸が魔物を六等分に切り裂いた。


肉片が飛び散る中、ドールは小さく首を傾げた。


「こんな大騒ぎ、魔法少女後輩のみんなだけじゃ対処しきれないわね……。集団殲滅はコンダクターの得意分野でしょ。まあ、残桜ちゃんが不在なんだから、その分私が働かないと……。司令部、次の座標をちょうだい」


『了解しました。次の魔物群の座標を通信端末に送信します。ついでに報告します。現在、新都防御戦の総指揮は「正義の魔法少女」に任命されました。』


「そっか……当然よね。あのお人好しが、この状況を見逃すはずないしょ。次の座標へ移動するが。『人形・馬』」


地面に魔糸を伸ばし、手を横に振る。


瓦礫と岩が無理やり引き寄せられ、馬の形をした人形が瞬時に形成された。


四つの十字コントローラーが彼女の身体を優しく持ち上げ、馬の上へと乗せる。


「……行きますよ」


人形の馬は軽やかに駆け出し、次の戦場へと疾走した。


ドールの紫黒の瞳には、戦いの興奮よりも、ただ淡々とした義務感だけが浮かんでいた。





*





混乱に満ちた新都の街中に、荘厳で古典的なメロディーが響き渡った。


それは原初の魔法少女・コンダクター、二ノ宮音羽。


「やあー、皆さん!私のコンサートへようこそ!混乱する街と優雅な楽章が織りなす、ちょっと不思議な風情も悪くないけど……こういう緩い曲じゃ物足りないわよね。もっと熱く、激しくいきましょう!『アパッショナート』!」


指揮棒を優雅に振り下ろすと、流れる音楽が一変した。


高速のリズムに合わせて、無数の音符が輝く矢となり、広範囲を襲う攻撃へと姿を変える。


重厚な低音が、亀のような硬い甲羅を持つ魔物の内部を直接震わせ、粉々に砕き散らす。


鋭い音符の連打が野獣型の魔物を八つ裂きにし、高く尖った高音が飛翔する魔物を貫き、無数の穴を穿つ。


このコンサート公演に、邪魔は一切許さない。

反撃など、最初から存在しない。


完全に彼女一人の独奏(ソロ)による、圧倒的な音楽の嵐だった。


魔物たちが次々と魔石だけを残して消えていく中、助けられた人々が彼女へと視線と感謝の言葉を向ける。


音羽はそれに応えるように、舞台女優のような大仰な仕草で観客へ手を振り、微笑んだ。


「ふふっ……皆さんの視線が集まるこの感じ……やっぱり魔法少女は最高ね!」


白く長い髪をなびかせ、モノクロのタキシードを優雅に翻しながら、彼女は心の中で小さくガッツポーズをした。


宝塚系の凛々しい美貌に、満足げな笑みが浮かぶ。


戦場を自らの劇場に変える──それが、コンダクター・二ノ宮音羽の戦い方だった。





*






同じく混乱に包まれた新都のとある一角。


そこに、白髪に金色のハイライトを入れた三人組の姿があった。


青年一人と、瓜二つの双子少女二人。


歯車の紋様があしらわれた銅色と茶色の装束──青年は長めのローブ、双子は可愛らしいスカート姿だ。


「ねえねえ~α兄貴!この混乱に乗じて、戦争しよっか!?」


超甘いクレープを頰張りながら、ショートカットの少女が元気いっぱいに青年へ質問を飛ばす。


その言葉に答えたのは、向かいに座るもう一人の少女・βだった。


「そのバカみたいな提案は兄様に言うまでもないわ。戦術ユニット(ジェネラル)の私ですら即答できる。戦争は利益のために起こすものよ。それを起こして私たちに何のメリットがあるの?せっかく機械の身体から肉体(頭脳体)に移行できたんだから、黙っておやつを食べなさい。……熱い……辛い……」


長い髪を除けばγとよく似た容姿のβは、辛いソースのたこ焼きを頰張りながら続ける。


「えー、しないの?本当にβの言う通りだよね、α兄貴?」


二人の間に座る青年・αは、静かに頷いた。


「戦略統括機関(コマンダー)としてもβの答えに同意する。戦争は発動しない。……どうして同じ『オ・ライウム』の三つの首なのに、こんなに性格が違うのだろうな。今思えば、役割の区別が原因か。多様な視点は戦争に有利だから……はむっ、これ美味しい。」


魔物の襲撃で店員と客が避難したレストランの外、αはトレイに盛った激辛カレーを悠々と食べ続けていた。


「なるほど。じゃあ、私たちを包囲してる魔物だけ戦っていい?」


そう、彼らがそこに立っている理由は単純だった。


まだ食べ終わっていない食事を続けながら、周囲を大量の火属性魔物に包囲されていたのだ。


しかし魔物たちは本能的に、彼らが圧倒的な上位存在であることを察知し、動けずにただ観察している。


「それは問題ない。良い機会だ。俺たちが遊びで食べた分の資金をもう一度貯める必要がある。魔物を討伐して魔石を対策局に換金する。ただし本体は呼は禁止。出力は魔法少女程度に抑えろ。戦闘ユニット(ソルジャー)・γ、一部戦闘解禁を許可する。」


許可を得た瞬間、γは残ったクレープを一口で平らげ、やる気満々で前に飛び出した。


「それはいいよ、いいね、最高だ!戦前準備、『量産指令:パーツ・低級』!」


権能を発動すると、彼女の周囲に金属部品が雨のように降り注いだ。


「力加減はこれで!『指令:武器組み立て・爪』!」


地面に落ちた部品が磁石のように集まり、γの手に精密な機械爪を形成する。


彼女の小柄な身体には大きすぎる黒い金属爪は、まるで合体ロボットの追加武装のようだった。


「ふふん~!まだ警戒して迷ってるの?魔物なら本能のままかかってきなよ!来ないならこっちから行くよー!」


γは笑いながら戦場へ飛び込み、機械爪を振り回して魔物を次々と虐殺していく。華麗で残虐な舞踏だった。


「βからγへの戦場観測報告。行動パターンから予測するに、ターゲット集団に逃亡の兆候を確認。南方位へ移動して逃げ道を封鎖するわ。『戦術指令:戦場封鎖』」


βはたこ焼きを片手に持ちながら右手を掲げ、γをサポート。


周囲のパーツが指令に従い、鋼のドーム状の壁を形成して魔物の退路を断つ。


「仕方ない……早く片付けるわ。『最終指令──』」


αが静かに参戦したことで、この一方的な戦いはわずか数分で終了した。


……



…


「ごちそうさまでした。また来ます。」


αは空になったトレイを店のカウンターに置いた。


店外は至る所に弾痕、爪痕、焼け跡が残っているが、魔石は既に回収済みで、魔物の痕跡は綺麗に消えていた。


「人間の普通の男性は魔力を運用できないらしい。我々の正体をバレないよう、ここでは俺は手を出せない。さあ、この人間の生活圏で活動するために必要な食費を稼ぐぞ。魔物狩りだ、β、γ。」


「承知致しました。」


「はいー!先の戦いはまだ心臓(コア)が不完全燃焼だよ!次の戦場へ行こう!」


こうして、三人は「野生の双子魔法少女とその保護者」という名目で、金策を口実に新都内で魔物狩りを始めた。


その結果──思いがけず、たくさんの人々を救うことになったのだった。






*





深い海の底、漆黒の闇を巨体が悠然と巡遊していた。


その正体は、進化の権能で過剰に改造された魔物──「智慧」の監視から逃れるための「進化」の移動要塞、獣艦。


肉と骨で構成された船室の一つで、アケピリアスは静かに佇んでいた。


六星久那の戦い──その始まりから終わりまで、すべてを目撃していた。


「僕が用意した肉人形(オモチャ)も燃え尽きたけど……想定外だったな。けど、あれはつまらない結末だ。せめて何人か黄泉の道連れにするつもりだったのに、全部生存させて96番すら助けるなんて……まあ、こちらに影響はないから放置するけど。なあ、契約者はこれを見るかい?」


彼は近くのテーブルに視線を向けた。


そこでは、狂気に取り憑かれた男が、ある一冊の本を熱心に研究していた。


「……しない」


「そっか、そっか。まだその本の解読中なんだね?お前の師匠、『智慧』の図書館から奪った異界の禁術を記した『異界の魔典』だ。あれはさすがに僕も死ぬ覚悟をした災難だったよ。超怒った『智慧』の追撃から、ようやく逃げ出したんだ。もう一度彼女の目の前に現れたら、絶対に殺され本に作れるの自信がある。」


「黙れ」


「冷たいなあ。まあ、お前が僕の方針──『進化により次の世代へ改変する、旧物種の終末』と同じ道を歩むなら、この契約は解消しないよ。お前が望む『全人類を魔物に恐れない、この世界に適合した新たな物種に進化させる』未来を、一緒に実現しようじゃないか。」


アケピリアスは二匹の蛇が絡み合った杖を軽く回し、毒々しい色合いの髪を揺らしながら笑った。


その笑みには、純粋な好奇心と、どこか人間らしい親しみが混じっていた。


獣艦は再び静寂を取り戻し、深海の闇へと沈んでいった。





*





そこは無数の赤い糸が絡み合い、蠢く異界。


彼女だけが支配する世界(龍域)。


運命の赤い糸を織り続けるその中心に、一匹の蝶が囚われていた。


ここから逃れることはできない。


運命を織り始めたその瞬間から、糸は彼女自身をも絡め取り、結末はこうだ──両方の翅はすでに赤い糸に固く縛られ、わずかな振動さえが無数の運命を震わせる。


無心に、無自覚に、世界の可能性を干渉し続ける自縛の蝶。


全ての希望を諦めきっていた彼女に、初めての変化が訪れた。


一つ、もつれた運命の赤い糸が──切れた。


それは、死ぬはずだった命が生き延び、運命に抗った結果だった。


その小さな変化が、すべてを放棄していた彼女に、再び生気を取り戻させた。


なぜなら、彼女はついに見つけたのだ。


運命を切り裂くことのできる「ハサミ」を。


「……ふふっ」


淡く、しかし確かに笑みが浮かぶ。


蝶の翅が、わずかに震えた。


だから彼女は、再び動き始めた。


運命の赤い糸を、新たな意図を持って織り始める。


この世界の終わりを、彼女の望む形へと変えるために──。





*





各々がそれぞれの思惑で暗躍する頃──


新都郊外、「鏡の谷」と呼ばれる龍域の核心部にある小さな小屋。


白い髪が硝子のような透明物質に覆われた、頭上に万華鏡を思わせる虹色の光輪を浮かべた神秘的な少女が、珍しく表情をわずかに動かしていた。


「困惑。龍域の拡大は……どうやって?」


長年、維持するだけで使っていなかった機能。操作方法はすっかり忘れてしまっていた。


「試す。こう……これではない。これは眷属に体操をさせる命令。」


「再び試す。こう……これも違う。これは眷属にストリートダンスをさせる命令。」


「再び……これは建物を生成する……?」


……


…


鏡の谷で最も大きな街。


すべての建物が水晶のような硝子でできた、幻想的な円形の都市。中央にそびえる巨大な時計塔を中心に、硝子の騎士たちが巡回している。


彼らは住民に敵意を向けず、魔物が顕現すれば即座に集結して討伐する、信頼されるガーディアンだった。


「ねえ、ママ見て!硝子の騎士たちがダンスしてるよ!」


「あらまあ、本当に……優雅に踊っているわね」


「そこに今までなかった建物が現れたぞ!見てくれ!」


最初に異変を発見したのは一人の子供だった。


次々と住民たちが集まり、驚きの声を上げる。


その時、一人の老人がにこやかに言った。


「そういえば、時計塔を見るともう六月か。一年の半分じゃのう。なら、この舞踏と新しい建物は、それを祝うためのものじゃろう?」


「なるほど!なら、私たちもそうしよう!今夜は祝祭じゃ!私は作物を収穫に行ってくる」


「俺も行くぜ。あ、覆い被さった硝子は綺麗に砕けろよ!」


「言われなくても分かってるよ!」


こうして、鏡の谷の住民たちは一斉に今夜の祭りの準備を始めた。


新都の混乱とは正反対に、ここは穏やかで、どこか温かな空気に包まれていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。