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第45話・建て直すの日々・劫火の魔女⑦

第45話・建て直すの日々・劫火の魔女⑦


==========

ー焦天蓋・灼天神殿完成まで残り16分ー


「その、オレはもう大丈夫だから。手、放れても良いですよ」


干からび状態から回復するため、温存していた半魔人化に移行する。


この魔力が濃い空間で魔人の再生能力が何度も働いたおかげで、オレは円盤の上にひとまず休憩することができた。


オレは何度も大丈夫だと言うのに、もう一度変身状態になった楽奈の手はずっとオレの服の裾を掴んだまま、べったりと離れない。


何とか記憶が徐々に鮮明になった楽奈は冷静になったみたいだけど……


その無表情の顔は相変わらずでも、透明感のある白い肌が明らかに赤くなり、深くフードを被ってぶつぶつと呟いている。


「……あれはぼくじゃない、別人……そう、悪魔の魔物に憑依されただけ……ぼくは兄さんが意識がある時に、そのようなエロいことをしていない、はず……どうしよう、きっとエロい子に誤解される……仲間だから、口止めはできないなら……こうなると、結婚でぼくが責任を取る……」


なんかその言葉に裏がある気がするけど、錯覚かな?


まあ、彼女のその状態で後の戦いに影響が出たら困るから、今は彼女を落ち着かせる。


「まあ、気にしないでください。あれは普段の魔力供給時の暴走行為だから、落ち着け、冷静にしてください。シャドウちゃんの初暴走だから、恥ずかしく思う必要はないよ……むしろ、小隊中に他の子はなかなか自由に欲望のまま暴走するから、本当に気にしないでください。」


うん……別の子たちは普通に暴走するから、今さら気付いたけど、楽奈は本当に一度も魔力供給で暴走しなかったみたいだ。


彼女の自己管理が強いのが原因の一つだろう。

だから今の失態は彼女にとってとんでもない恥ずかしさだったらしい。


でも、あれは本当に凄かったな。

暴走の最後で悪魔の尻尾だけじゃなく、漏れた魔力がカッコいい悪魔の翼に具現化された。


その結果、楽奈はやりすぎて、周囲で戦えるみんながチラチラと彼女を見て落ち込んでいる。


ちょうど良いタイミングで魔女の攻撃の隙に、小隊のみんながここに近づいてきた。


「……なに、ぼくに用がある……」


「シャドウちゃん~マイスターはそう思った、あの暴走は野性的で悪魔的でしたよ~あー、そうそう!その暴走は芸術的に感じましただよ!恥ずかしくないよ!」


彩音は親指を立て、心からの笑顔で励ます。

まあ、彼女なりに楽奈を元気づけようとしたつもりだろうけど……それは逆効果じゃないか?


「その、わたくしも最初は暴走に恥ずかしくて……いいえ、前回の暴走も爆発のように恥ずかしくて部屋に数時間寮で引きこもりになりましたけど……だから、気にしないでください、慣れるから」


奏は前回の暴走を回想すると、死んだ目で楽奈の肩に手を置いた。


「あわわー……すごい過ぎって、うちはそんなこと知らなくて、理解が超えたー」


葵もその衝撃的な画面を見ると、変身状態の精神影響から一時的に抜けて本来の性格が浮上する。


大盾と騎士剣を放り、両手で顔を覆うけど、指の隙間から楽奈の方向へチラチラと見ている。


そして、最後に近づいてきたのは雪菜だ。


「こちらへようこそ!良い体験だったでしょう?この事件が解決後の打ち上げパーティーでその感想を教えてください!」


その言葉が最後の一撃となり、楽奈を撃沈させた。


楽奈は頭を深く下げて、身体がプルプルと震える。


「……ん。この悲憤でぜーんーぶー、戦って発散する。ん、そう決める。んー。」


限界を超えた結果、楽奈は顔を真っ赤にして円盤の上から立ち上がり、泣きそうに目が潤んでいた。


「なんか、関係が良いパーティーだの」


「『横暴な簒奪』、そうだね~昔の旅頃の僕たちに思うたな~あ、そろそろ目標地点にたどり着いた、いよいよ決戦だな!」


一番前で熱線射撃を防御する残桜とドクターが、後ろの騒動を遠い過去の記憶のように振り返っていた。





*





オレたちは騒がしいままドクターの円盤の作動限界を迎え、ゆっくりと地面へ沈んだ。


オレと楽奈は地面に降り立つ。


「ああ~やっぱりこの《全地形浮遊ボード(フロート・ボード)》は長く起動できないのがメリットだな~回収、回収っと!暁くん、あのようなドレインされちゃうのは疲れるだろう?どうだ、身体の状態は?」


手袋をはめた手で円盤を触って収納し消し去ったドクターが、オレの体調を気遣って尋ねてくる。


その言葉でオレは自分の身体を確かめた。


「心配させてありがとう、もう大丈夫みたい……オレが良いのは何なんですが、魔人の再生能力はすごいな。特にこの魔力が濃い場所って、たとえそれが半魔人のオレであっても、頭が切れるも平気なみたいで怖い」


「まあ、それは興味深いお言葉だな!今すぐ実験したいけど、もし錯覚なら大惨事になるからやめとこう!結果的に元気は何よりだぞ!それじゃあー、決戦に向こうが!残桜ちゃんと白雪ちゃん、それとシャドウちゃん!準備できた~?」


ドクターの言葉に、残桜と雪菜は力強く頷き、楽奈も強い意志を宿した瞳で応えた。


「いつでも大丈夫です。最善を尽くします!」


「……うん、ぼくは大丈夫。むしろ早く戦えないと、心が耐えられない……」


「もちろんの、全力に行こうの!ルファ、奥義を準備するの。」

『かしこまりました。《奥義・極光輝斬》の解放呪文を詠唱してください』


「え、その制限がまだ残されたの!?」

『はい、魔王様がそれを「選定」で私のキャラクターに設定されました。理由はまだ覚える、確かに「せっかく余一生一度、幕落ち大決戦!派手ないとどうするが!ガハハハッ、良いセリフが思い出した、こう聖剣に刻まれよ!……さすが余、完璧だな!まるで聖典(ゲーム)に掲載されたかっこいいセリフ……ククク、クハハハーー!!!」だそうです。』


「あの野郎!!何を考えているのだ!だからあの野郎の世界はゲーム風格……何やってんの、今さらあのマッチョ悪魔ドラゴンの悪夢集合体はゲームにハマって知りたくないの!ああもう、ほんとに!ムカつく、の!」


『はい、魔王様は生来から「魔王」の役割に与えたで迷い時に、廃墟からとあるRPGゲームの宣伝ポスターが見えたのがきっかけの原因、だそうです。』


「もういい、この話題はやめやめーの!」


『了解しました。もし聞きたいならいつでも教えてください。』


イライラが収まらない残桜は気分転換するように聖剣を掲げた。


すると、周囲に聖なる印象を持つ光の玉が虚空から現れ、聖剣の刃に集う。火光に照らされたこの場所を、より暖かい光が満たした……なんだか、明かりが強すぎて楽奈が凄く嫌な表情になっている。


「……む、眩しい……影が作れない」


「先からずっと熱線射撃するから、その火の柱の中に隠された位置は既に把握しているから、覚悟しなさいの……はあ、やる気はないけど、詠唱始めよが『魔を滅ぼす裁きの光よ~、闇を穿つ極光の刃となりて~、今こそ顕現せよ~、《奥義・極光輝斬》』、えいーー!」


うわ、全然やる気のない無気力の棒読みで熱血漫画みたいなセリフを言い出した……ほんとに心中から言い出せないみたいだ。


でも、そのやる気が全然ないのとは逆に、前に振り下ろされた光の斬撃は勇者全力の一撃に相応しい光の奔流となり、天すら切り裂くような勢いで火の柱を横断した。


そして、オレたちは小さな人影が見えた……あ、飛び出す斬撃はまだ葵の夜空を壊し、宙に深く斬撃の跡が残され、異界の夜空に黄昏の光がその切れ目から輝く、自然が見当たらない壮大な絶景となる。


炎の柱がゆっくりと、確実に魔女をもう一度閉じ込めようとするが、その前にずっと魔力を温存していた雪菜が前へ――


「ここからわたしに連携する!炎の柱から剝離されて魔力隠蔽が消えたなら、――向こうの魔力が捕捉しました!こちに『来い』、『一突』!!」


全力に発動する魔法は、魔女との距離を消し去った――銀白色の閃光のような刀が、目の前に現れた人影の心臓を狙って刺し貫いた。





オレたちはこの作戦が始めからの最初に、その魔女の正体を目撃していた。


あれはオレが見た幻視と酷似した姿だった――


炎に包まれて浮かび上がったのは、楽奈によく似た、強引に覚醒されたから背の低い黒髪の幼い影。


その小さな体を包むのは、火そのもので織られたドレスだった。


絶え間なく燃える青白い炎と深紅の劫火が激しく絡み合い、周囲の空間を熱の揺らめきで歪めている。


炎に転化した繊細で白い四肢が、ドレスの裾と袖から覗き、指先や爪先が溶けるように火を滴らせていた。


虚ろな赤い瞳には、一切の感情が宿っていない。


まるで胸に深く刺さった雪菜の刃の痛みすら感じ取れないかのように、ただ淡々とこちらを捉えていた。


何より異様なのは、その頭上で回転する巨大な炎の輪。


あってはならないはずの歪んだ聖性を帯び、ゆっくりと回り続けていた。


高密度な魔力の重く淀む威圧感を周囲に撒き散らし、『魔女・久那』が確かに顕現したという実感が全身を震わせた。


「……!?」


僅かな、ほんの少し驚いた反応で口を小さく開けただけ。


自分が引っ張られたことは、彼女の予想外だったらしい。


「白雪さん!切れ味は!?」


「ない!!全然切れた感覚はない、完全元素化が判明しました!魔法攻撃でー」


「雪菜!」


刀の攻撃が無効と判明した瞬間、驚きの状態から回復した魔女・久那が反撃した。


雪菜はその振りかざされる火に纏われた手が命中する前に刀を抜き、魔法で距離を取る。


「ぐう、『後退』!!危なかった……もしためらうなら燃やされちゃう。」


彼女の無事を確認すると、オレは楽奈に声をかけた。


「無事で良かった!シャドウちゃん、たとえ友達でも、救いたいなら手加減はー」


しかし、彼女の姿はもうそこにはなかった。


魔女・久那の後ろからその胸に黒い影刃が貫いた。


そうしたのは、姿を消し去った楽奈だった。


今回は雪菜の時とは違い、影刃の傷口から血のように火と魔力が噴き出す。


「……ぼくは、自分より強い相手に手加減する、そのような傲慢はない……やるべきことは、傷つけて、魔力を消耗する、だろう……同じ元素系なら、ぼくは出来る」


「――『炎嵐』」


魔女・久那はその影刃を握り潰し、楽奈の拘束を解くために自分の周囲に火の嵐を巻き起こした。


明るすぎて影が不足し、楽奈は足捌きで素早く離脱する。


「交代だの!その嵐、自分で断ち切るの!『滅魔斬』」


残桜は跳んで豪勢な斬撃で魔力を滅し、その嵐を消去する。


魔女・久那は元の場所から動けない。相変わらず虚ろな目でこちらを見つめている。


この時、楽奈は少しずつ彼女へ歩み寄った。


「……久那ちゃん、ぼくだ、67番だ。今は影崎楽奈という兄さんからもらった名前……あなたの六星久那と同じ、ぼくだけの名前をもらいました。……あなたのおかげで、ぼくは幸運に逃げられた。……ずっとあなたを見つけられなくて、遅くなってごめんなさい。今はあなたを迎えに来た。……だから、あなたを救うために、ぼくも全力に」


手を翻し、その両手のひら中から影のナイフを具現化して掲げ、素早い足さばきで魔女・久那へ駆け出した。

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