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第43話・建て直すの日々・劫火の魔女⑤

第43話・建て直すの日々・劫火の魔女⑤


==========

ー焦天蓋・灼天神殿完成まで残り55分ー


「行きます、変化ー《神域の聖騎士》!」


葵は一歩前に踏み出し、その言葉に応えるように《変化の魔法》が発動した。


アニメの魔法少女のような服装が眩い光に包まれる。


光が収まった瞬間、彼女の姿は一変していた。


銀白色の騎士鎧に、蒼い紋章が刻まれたマント。


両手には蒼い宝石をあしらった騎士剣と、彼女の体躯より大きな大盾。


残桜とはまた異なる、堂々とした聖騎士の威容だった。


固い意志を宿した瞳で、葵は騎士剣を高く掲げる。


「これはうちが制御できる特性、かの神域の聖騎士だけが見た世界――《夜明けのない世界、星に見守りの巡礼》。魔女さん、うちはあなたをその火の中から連れ出します!」


すべての変身が完了した後、黄昏の空は流転一変した。


満天の星空が広がり、まるで永遠の夜が訪れたかのようだ。


あれは星の位置と星座が違って、双子の月が輝ける異界の夜空。


それも当然だ。彼女が選んだ物語の世界では、空は夜明けを知らず、星々が永遠に巡り続ける。


オレは空を見上げ、少し前のことを思い返した。





*





葵がこの聖騎士を思い出した時間に巻き戻る。


「それはいいのね!ルカは何を考え出したの?」


「その、あれは謎の作家が創作した『世界の間に旅行するドラゴンが見た色々な世界』というテーマの小説シリーズです。うちが選んだキャラはそのシリーズの一冊、《終わりの世界、終焉の巡礼》の主人公です。そのあらすじは『信仰した神は消えた、守りたい人々も失った、異質な力を持つことで自分の存在すら世界に「拒絶」された、最後の一人、神域の聖騎士ヴェルメル。この夜明けのない、終焉に向かう救えない世界の果てを目指す、救世のための最後の巡礼。』あの世界で最強の力を持ちながら、守護に誓う聖騎士が、手元にいる人も救えない……僅かな希望を持ちながら人助けを続け、憂鬱な物語です。結構面白いから、みんなさんにおすすめです!」


どんどん感情が高ぶるように早口になり、葵の頰も興奮で赤く染まる。


「うん、ルカちゃんのオススメなら、時間があればわたしは読みますね」


「その、何だかバッドエンドみたいだから、マイスターの趣味と合わないかも~」


「……別にいいけど、対策できる方法は先の説明でぼくはわからない。」


「あ、そのシリーズわたくしも読み済みです……そっか、だから聖騎士の章をー」


何かに気づいた奏が葵の言葉に反応した。


「はい。物語りのヴェルメルの強さは選択原因の一つだけど、最も重要なことは世界から『拒絶』されたことに狙いましたです。本に書かれた流れで判明した、その異質の力を使えば『拒絶』は自然現象のように発生する、その表現は『世界に影響できない代わりに、世界内の影響を受け入れない』こと……まあ、これは力遣いがラインを超えると、『拒絶』が止まるまで彼は何もできない、ただ目の前の惨劇を見えるだけ、救えないのが元凶ですか。今の状況なら、これで火の障壁を乗り越えられると思ったー……でも」


「でも?」


「その、先輩はうちと訓練であのような共闘して、うちの魔法ってよく知っているでしょう?うちは魔法で変身した対象の戦闘経験も一緒にコピーするから、普通の高校生であるうちもプロの戦闘員のように戦えます。けれど、うちに選んだ対象はほとんどゲームの操作キャラって、性格はないから影響されないけど……うちは感覚って、物語りのキャラに変身するなら、その感情と性格にある程度同調するから……うちは彼の心の中の憂鬱に耐えられるかなって心配です。」


うん、魔法少女姿の葵はデフォルトだから性格は変わらないけど、別の変身は全部ゲームキャラで影響が薄いから、それは家で試した頃に知っていたはずだ。


「みんなさんに一つ頼み事がある、もしうちがあの誰にも救えない聖騎士の心をコピーして異常な行為をするなら、教えてください」





*





「ルカさん、大丈夫かな?」


事前に頼んでおいたから、オレは彼女に声をかけた。


「……」


返事の代わりに、複雑な感情を湛えた目でオレ……いや、全員を見つめる。


儚くて、憂鬱で、壊れそうで――そして、仲間がまだ生きていることに信じきれない激情と、ほんの少しの安心感が混じっていた。


「……ルカさん?」


「え、あー!いいえ、その、大丈夫です!ちょっとだけ、感情が引っ張られるだけです。ほら、時間制限があるでしょう?この変身を維持するのに魔力の消費が激しいから、ぼーっとする場合はない、行こう!これは設定集しか存在していない、聖騎士は使えない異質の力をアクティブに起動するスキル《■■・■■■(世界に拒絶されしもの)》」


なんだか誤魔化すような言動だったが、彼女の言う通り時間はあまりない。


スキル発動の言葉ははっきり聞こえたのに、完全に理解できない。


すると、葵の身体に波紋のような「何か」が現れ……正確には、体の中から滲み出る方が正しい。その波紋は白と黒、神聖さと冒涜、矛盾だらけのイメージが混ざった感じだった。


変身と共に改変された夜空は、長時間撮影で描かれる星の軌跡(スタートレイル)のような同心円を描く。


「次はこう、《神域はここに》」


葵は大盾を地面に叩きつけると、青色の円環が周囲に展開した。


「円の中に受けたダメージは無敵状態のうちが代わりに受けるようにされる、みんなさんはこの円から出ないでください。さあ、行こう!うちについてきてください!」


「「おおー!」」


準備万端整った、オレたちは最初の炎の柱へ発進した。





*





この策略は明確な効果をもたらした。


聖騎士状態の葵のカバーのおかげで、オレたちは熱風の中に溶け込みながら、跡形もなく変貌した廃墟を順調に進んでいた。


先ほどまで不気味なほど沈黙を守っていた魔女は、オレたちがある程度接近した瞬間、やっと反応を見せた。


「まだ幻視が――!マイスター、そこに止まれ!」


「ふえー?は、はいー!うわー!?」


一瞬のフラッシュと共に軽い頭痛が走ったが、オレはすぐに警告を叫んだ。


次の瞬間、炎の柱の中から太い熱線が襲来。


彩音の一歩前の地面が貫通され、大穴が抉り取られた。


もし葵のカバー範囲から一歩でも外れていたら……いや、なかったことにしよう。


「これは危なかったー、助かるよ暁ー。どうやらマイスターたちは攻撃範囲に入ったみたい、敵性対象に認定されたかな。とりあえず先ほどのような楽な進軍はここまでだね」


「自分も同意見だの。ここからはもっと危険だろうの。」


突然の襲撃で足が止まったその隙に、相手も黙っていない。


炎の柱の中から、無数の「何か」が動物の形を模して次々と生まれ出る。


蛇、鼠、蝶、鳥、リザード――赤い炎の軍勢は、もはや赤色の波のように迫ってきた。


「ねね、あれに心当たりあるかな?」


表情をわずかに引きつらせたドクターが楽奈に尋ねるが、楽奈は小さく首を横に振った。


「……知らない。もしこのような力があれば、ぼくたちは一緒に脱出できただろう……あれを食い止めるしかない。」


情報が期待できない以上、残桜は急いで指示を飛ばす。


「白雪は燃費が悪い空間系魔法だから、魔法の使い時機は回避に間に合わないメンバーを強制転移するの。フランは攻撃範囲が広い祈りをするの。今はルカの変身で強制的に星空に改変された以上、シャドウはある程度に程度に戦いするだろうの。聖騎士の力を発動するデメリットで干渉できないルカはそのまま待機する。マイスターは……うん、頑張ってください。可燃の弱点がある限り、無理ならルカと共に待機するのも良い。」


「わかりました」


「はい!面なら、《お願い、敵に光の槍で串刺しにしてください》」


「……この夜のフィールド、なかなか良い。地面の火光を打ち消し」


雪菜は全員を視界に入る隊列の後ろへ移動させ、警戒を続ける。


奏の祈りと共に光の槍が地面から突き上がり、先頭の炎の動物を貫く。


残された光の槍が柵のように足止め効果を発揮した。


光の柵を超えた敵は、夜空から多種多様な影の武器が精密に叩き潰す。


二人の連携が赤い波を足止めした。


「ああー、とりあえず絵を描くに試すっか~」


「……まだ、見るだけ。このままじゃ、まだ全部失う……」


待機組の彩音は燃える前に高速で創作を試み始め、ただそこに立つ葵の精神状態はどんどん憂鬱になっていく。


「最後は暁、お前が侵食されない全力で戦える時限は5分だけだから、今回は魔弾だけで支援するの。」


うん、残桜の言う通りだ。


普段の魔人化だけならギリギリ制御可能だが、戦闘に参加すると感情がコントロールできなくなり、魔力侵食が一気に加速する。

オレは素直にその指示に従った。


「あれれ、残桜ちゃん。僕はどう行動するだろう?」


「はあ、先輩は好きにして、いいの……くっ、この攻撃はもう見えました、舐めるな、ルファー『滅魔斬』!」


『了解しました、仰せのままに。』


残桜の指示が完了したのと同時に、先ほどのような太い熱線がディスコのレーザーのように連続で放たれた。


こちらに命中しないものは無視して、残桜は一歩前に出ると輝く聖剣ル・ルファを振るう。


まるで全員の盾となるように舞う銀白色の軌跡が、単発けど強力な熱線を次々と切り落としていく。


「熱線の方は自分が何とかなる、お前たちは動物形の火の数を消し去ってくれの!まだ来るー、ルファ『滅魔斬』!」


『はい。』


威力が勝てないから、次は威力を落とした細い糸のような熱線が乱射される。


残桜の剣舞は無駄のない剣閃で宙に銀白色の軌跡を描き、目を離せないほどの絢爛な光景で熱線の雨を食い止めた。


「綺麗……」


誰かが無意識に漏らした言葉は、全員が思っていたことだった。


「これは……どうやら、わたしの剣術はまだ向上できる余地があるようだ。」


どれほどの時間が経ったかわからないが、残桜の体力が心配ないけど、どんどんイライラを募らせていた。


「あ、面倒い、の!腕が錆びってないで良かった、の!あの火の動物はもうすぐたどり着くから……先輩、何とかしての!」


「はいー!なら、後輩のために魔女と意志対抗冒険するが『横暴な簒奪』、あれー?」


ドクターは両手を前に伸ばして精神の衝撃を受ける覚悟をしたが、その結果は想定外だった。


彼女は呆れた顔で、指揮のような手を振ると、熱線は全部曲がりくねって魔女の方向へ撃ち返された。


「全然、抵抗はない?魔女なのに感情はない、とっても興味深い、あやしい状況でした……でも、もしかして、ここは僕に活躍する場か!もう一回『横暴な簒奪』」


ドクターは次々と熱線を魔女の手から奪い続け、行き先を変えて返す。


暴虐な破壊性の雨が止まり、火属性の熱線だから返すの攻撃のダメージは期待できないだろう。


「は、はあー疲れたの……出来るなら早くしてくださいのよ、先輩。」


「それは僕も結構意外だぞ?もしかして魔女、久那は特殊な状態で魔女になったのかもしれない!でも、今回は僕たちに有利だから、このままどんどん前に行こう!」


今回の危機が一時的に解決したが、前に移動しようとした時、葵はそのまま立ち止まり、ネガティブな独り言を零した。


「……まだ救えはしない、うちも、誰もそのままー」


そのままじゃダメだと、オレは彼女へ手を伸ばす――


「ルカさん……これは、『拒絶』!?」


しかし、オレの手はそのまま通り抜けた。まるで幽霊のように。


「……え、あー……うちはまだ感情が引っ張られた?」


自分の体が誰かに穿透されたことで、葵の意識が正気に戻された。


「この景色は聖騎士と遭遇したものと似ているから、感情の共鳴が上がるみたい……あの時うちは地平線まで埋めた魔獣の大軍へ、民を守るために突撃する……けれど手加減が失敗で、ただ数十万の魔獣を殺すだけで、まだあの幽霊のような世界に拒絶された状態で、民の惨殺を傍観するだけ……」


「ルカ!!」


まだ自分じゃない記憶に迷う葵を、オレは大声で呼び覚ました。


「え、その……あれはうちの記憶じゃない、」


「ルカさん、良いから聞け。オレたちはこのように戦えているのは全部ルカさんのおかげだよ。ルカさんの神域がいないとオレたちは熱風の中でまともに戦うこともできない。キミは今までもオレたちを守り続けてくれている事実は、ちゃんと覚えてください。」


オレの言葉を咀嚼するように葵は頭を下げ、短い沈黙の後、顔を上げた。


「うちは、傍観じゃない……そ、そうです、うん、うちは聖騎士ヴェルメルじゃない……うちはもう平気だ!前に進もう!」


彼女の表情に覆っていた雲が消え、スッキリとした顔になった。もう大丈夫だ。


熱線を奪い合うドクターを除き、こっそり観察していたみんなも安心した様子を見せる。


それじゃ、オレたちは次の障害、「動物形の火の群れ」へ挑む。

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