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第33話・建て直すの日々・残桜:ワルプルギスの夜

第33話・建て直すの日々・残桜:ワルプルギスの夜


==========

一人だけの機密会議室で、自分は円卓に腰を下ろした。


重厚な椅子の背もたれに体を預け、巫女服の裾を優雅に整える、深いため息を吐く。


「はあ……まだこの部屋に入るたびに、憂鬱になるの……」


これはただのテーブルではない。


魔女集会のアーク・ウィッチが作り上げた魔道具――翻訳、情報共有、幻影投影……様々な魔法が刻まれた円卓。


自分の魔力を円卓に流し込むと、約束の時刻に合わせて参加者たちの幻影が次々と浮かび上がる。


狩龍集会の方位には、白い騎士のような鎧を纏ったメガネの男。


魔女集会の方位には、怯えた魔女っ子のような少女。


ヒーロー連合の方位には、自信たっぷりの金髪碧眼の軍服幼女。


ユグドラシル攻略組の方位には、白いローブを被った少女。


パラディンの方位には、黒い布で目を覆った聖女のような少女。


自分を含めて、この会議に参加するのはこの六人だけ。


「会議にご参加いただき、時間を割いていただきありがとうございますの。今回の議題は、先に送った資料に書いた危険組織のことですの~」


最初に口を開いたのは狩龍集会の騎士――ベルバート。


「私は狩龍集会の参謀、ベルバート。先に謝罪する。うちのボスは相棒の白龍と共にアフリカ大陸を支配する《力》の真龍へ挑戦しているから、私はその代理として参加する。はあ……ボスがまた負けたら帰ってくるだろう。その時にこの情報を伝えて対策を練ろう」


「NO.5・龍帝・《力》マルスティアね、わかりましたの。あいつに挑戦するなら命は無事だろうの。自分もあちらで一回喧嘩されたことがあるの。自分は負けたけど、あいつはこう言ったわ。『お前は弱い、妾は強い!弱いものは大人しく強いものに守られ、だから妾の元へ来い!』って。当然、自分は断ったけど、あいつは『え、なんです?もしかして妾の力がお前に安心できないのか!?自分の力不足なら帰ってもっと鍛錬しろ!』って言って消えたの。真龍の中でも、何と言うか……筋肉脳だけど人類に対して脅威のない、大分珍しいタイプですの」


すると、魔女集会の少女も慌てた様子で発言した。


「あの、わ、わたしはアーク・ウィッチ様の『一番』弟子、ルルアンナです!わたしが代理として会議に参加しました!アーク・ウィッチ様はこの情報を見ると、すぐに戦闘道具を整備に行きました!あの危険組織に襲いかかって実験資料を奪う予定です!素晴らしいだよねー!わたしも準備しないといけないので、先に退席します!」


一連の言葉を早口でまくし立てると、ルルアンナの幻影はそのまま消えた。


「魔女集会はいつもそうだの……。もし後で新たな結論が出たら、ベルバートに伝えてくれませんの?」


「はあ……同じヨーロッパの仲間だから、かしこまりました」


メガネの下で疲れた目が一瞬見え、参謀らしい苦労人の気配が漂う。


同意されるのも予想通りだった。


「うむ、わかりましたの」


横から、次の声が響いた。


ここにいる中で一番年下に見える軍服の幼女――ヒーロー連合の会長、S級ヒーロー・ライトニング。


彼女は現役の原初の中でも最も古いの戦闘系魔法少女だ。


千雷、万雷、光の化身など、様々な異名が持つの化け物。


本名は知っているけど、ここは魔法少女名に呼べの方が良い。


「資料は見ました。簡単に言うと、悪いものが現れた、探して殴ればいいんだな!いいね、邪悪な組織があるならヒーローが輝く!この硬い話題より……残桜!私の孫娘彩音ちゃんはどうだろうか?相変わらず元気いっぱいに生活し、時々魔物をぶっ殺してるか?」


やっぱりこうなる……ここは慎重に……


「はい、彩音ちゃんは元気いっぱいに生活していますの。いつも通り13区の天城小隊で魔法少女として輝いているの。彩音のご両親のことは残念です……」


謝罪の言葉を続けようとしたが、ライトニングが手を上げて止めた。


「まあ、よせ。魔物に殺されたようなものだ、あれは天災みたいなものさ。あのワイルドガールは私と似ていて、娘だけど一人前のヒーローだから、いつも戦死の覚悟だろう?特に大事な家族を守るための犠牲……娘は最後までヒーローだった。まあ、何よりかわいいかわいい孫娘は両親の仇を討ったんだろ?あの子は自分の英雄譚を創り上げたんだ、もう立派なヒーローだよ。私の心の中も葛藤してるけど……残桜にいつもの頼み事をする。『彩音ちゃんを注意しつつ、過度な干渉はやめとけ』って、頼めるかな?そうしないと、また私の娘と同じように別国に逃げちゃうかもしれないからな」


幻影なのに、重い威圧感が伝わってくる……戦闘系はサポート系の自分に威圧しないでほしいの……


「はい、それなら大丈夫ですの。いつも通り彩音ちゃんのことを注意しておきますの。そう言えばライトニングさん、最近彩音ちゃんが出撃した映像資料があるよ。後でメールにあげるの~」


その言葉を聞いた瞬間、重い雰囲気が一気に和らいだ。


「おお!今回はどんな英雄譚を作ってくれるかな、期待するぞ!あの子は定期連絡で話すけど、説明だけじゃ画面が足りないんだよな!」


ライトニングは前かがみになって喜び、機嫌が直ったようだった。


これで最大の危機は乗り越えた、次に進もう。





*





自分はユグドラシル攻略組に話しかけた。


「ユグドラシル攻略組の方は何が質問するの?」


白いローブを被った少女が、静かに頭を下げる、冷静沈着の声で答えた。


「私はユグドラシル攻略組のメンバー、ヴァルハラ所属、ワルキューレ支援隊の隊長、ヴァルキリーと申します。前線で第五世界攻略のリーダーの代わりに会議に参加しました。事情はわかりましたけど、真龍『NO.9・九世界・《創世》ユグドラシル』を止めないと、世界は終末に向かいます。だから、こちら全体の意見は――支援はできない、です」


「うん、これは予想内の結論だの。こちらは自分が作った符を再度送りますの……第五世界?前回の会議ではまだ第二世界に攻略するはずだったのに、なかなか順調な良い情報ですの~」


けれど、自分の発言に対して、ヴァルキリーのローブの下の顔は嬉しそうには見えない。


むしろ、苦渋の表情が浮かぶ。


「それが……私たちがこの会議で質問したいことでした。私たちは第二世界のボスを討伐した後で見えたのは、第三世界と第四世界はすでに滅び、第五世界は半壊……鋭くて、光を反射するガラス破片のようなものがあちこちに突き刺さり、切り刻んでいました。あそこに残されたのは、ガラスのようなものに覆われた残骸だけ……その現象は分かるでしょう?この中で唯一、真龍『NO.6・魔王・《選定》アウグロス』を討伐した、魔物対策局の勇者?」


『勇者』!?自分はそういうものじゃないの!


「勇者って言うな!あれはあの野郎に無理やり付けられた称号と力!それより、あの遊び気分で先輩たちを殺した野郎は自分が倒すじゃない!単純にあの野郎が勇者魔王のごっこ遊びを満足させて、譲っただけ!あれは勝利じゃないの!」


思わず叫んでしまった。


自分は慌てて咳払いし、冷静を取り戻す。


「ごめん、失態しましたの。次は勇者って言わないでくれますの?」


「こちらこそ、すみません。次は言葉を注意します」


鏡面のようなガラス――それはよく知っている現象だった。


「『鏡の谷』……この新都外に存在する謎の場所ね。外の人はほとんどあそこに住むから、新都方面は定期的に救援してるの。いまの戦力では中心部の防御を突破と探索は不可能、その場所の中心部は今まで謎だらけの。あなたが言うのは、『鏡の谷』を支配する存在がユグドラシル、《創世》の真龍に攻撃したってこと?悪いけど、こちらもこのことは知らないの。けど、あそこに知るかもしれない人がいますの」


自分は視線を移す。


先ほどから微笑んで観察していた、黒い布で目を覆った聖女のような少女――先見の聖女・ナキア。


「自分はパラディンに連絡するけど、まさか親衛隊じゃなくて、上司としてのあなたが来ましたのね、先見の聖女・ナキア。何が面白い予言を見ましたの、預言者?」


ナキアは穏やかな笑みを浮かべ、黒い布の下で小さく首を傾げる。


鈴のような声が、静かに会議室に響いた。


「残桜ちゃん、冷たい言葉は言わないで欲しいです。私たちはお友達でしょう?パラディンの皆様は魔物討伐でお忙しいから、私は代わりに参加するだけですよ。そうね、今までの会議内容は既に見えましたわ。最近は……面白くない未来が見えましたよ」


ナキアは軽く手を胸に当て、黒い布の端を指で優しく撫でる。


「ユグドラシル攻略に使えるものは見えませんでした、ごめんねヴァルキリーさん。私は見ましたのは......残桜ちゃん、あなたに関係するものでした」


「自分?いいや、この新都に災いが来るの、ナキアちゃん?」


自分は彼女に尋ねると、ナキアの笑顔が一瞬、無表情に変わった。


「そうね、さすが残桜ちゃん、正確です。今、予言できるのは『鏡面が動き、新都に災いをもたらす。そして、見たことのない真龍が新都に降臨する。けれどこれは些細なことでした。新都は危機を乗り越え……最後の最後は、灰燼の行軍で……』。はい、予言はここで終わります」


なんだか妙だな。


ナキアの予言はこんな中途半端なものじゃないはず。


違和感が胸に残る。


「ナキアちゃん、これで終わりですの?なんか、あなたらしくない予言でしたの」


ナキアは黒い布の下で小さく微笑み、指で布を軽く押さえる。


「はい、これだけです……今回は未来を見ると途中で止められたんです。見たことのない竜人が私の魔法に入ってきて、『未来の運命を定着する前に止まれ』と言いました。あのお方を見た瞬間に大量の情報が頭の中に入って、仕方なく私は予言を止めたんです。一週間、頭痛でベッドから起きられなくて……今もこの黒い布で目を覆って、予言できない状態です。だから、暇で会議に参加してるんですよ」


「そうっか。てっきり頑固なあなたがファッションの心を目覚めさせて、わざわざ付けたアクセサリーかと思ったの。予言をくれてありがとうの」


「いいえいいえ、同じ人類の仲間だから、このくらいは当然のことです。でも、今の私はしばらく予言できないから、違法組織のことは力になれなくて、ごめんなさい」


「あなたを邪魔する竜人が……龍の身体部位が付いた、まさか未知の真龍かもしれないの」


「そうかもしれませんです。いま魔法が使えないの私には対策できません。頑張ってね、同じマスコット仲間の残桜ちゃん。三つの真龍の手の中に生き延びることを祈ります。もしできなければ、私の元へ逃げても良いです?」


「やめとけ、あなたは仲間がいるからこうなるの。自分はここで最後まで生き残った原初だから、逃げませんの」


「そうっか、残桜ちゃんはいつもそうです」





*





例行的な情報交換の後、会議はそろそろ終わる。


「うちのボスはボロボロで巨龍に運ばれて帰ってきました。お迎えしないと……私はここで」

ベルバートの幻影が消える。


「都市がでっかい蜘蛛モンスターに襲われた。私もそろそろヒーローたちに加勢しないと、バイバイ」

ライトニングの幻影が消える。


「情報共有は完了しました。私も物資を整理しないと、失礼します」

ヴァルキリーの幻影が消える。


こうして、この円卓に残されたのは自分とナキアだけ。


「本当に大丈夫ですか?もし必要があれば何なりと言ってください。お友達だから。辛い時は他人に話すのも選択の一つですよ。今回の頭痛で聖女のお姉様たちにいっぱい甘えました。ストレス排除に対してかなり有効なことです」


「はいはい、わかりましたの。あなたも早く休んでくれ、微笑んでるけど頭痛は直らないでしょうの?」


「あ、バレてしまいましたか。なら私はここで。またね」


こうして、機密会議室は自分だけになった。


静寂が部屋を包む。


「誰に話すか……」


ナキアの残した言葉が、頭の中で何度も響いていた。

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