第32話・建て直すの日々・新な魔法少女
第32話・建て直すの日々・新な魔法少女
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「本当、災難だった……」
ようやく力が戻ったオレは、あの地雷原のような研究室から出た。
変身条件の実験はまだ続けたいと言われたが、オレの体調を考えてドクターは渋々諦めてくれた。
代わりに「次に変身したら絶対連絡してね!」と約束させられた。
「一応、ドクターと通信IDは交換したけど……」
そろそろ葵の検査が終わる頃だ。
第一応接室に戻る途中――
『ウォンッ』『ウォンッ』『ウォンッ』
通信端末が止まらない。
全部ドクターから一連の質問メッセージが殺到している。
何百という質問に簡潔に答え続け、ようやくメッセージ攻撃が終了した。
「好奇心強すぎだろ、あの人……原初の魔法少女って性格の強い人が多いのは、一度死んだからが原因か……いや、残桜さんは生きてるから、本来そうなのかもな」
気がつけば、オレは応接室の前に戻っていた。
「あ、先輩!おかえりなさい!」
葵が明るい声で立ち上がり、制服の裾をぎゅっと握りしめながら軽くお辞儀する。
北条先生はタブレットを閉じ、疲れた笑顔で手を振った。
「邪魔はしないわよね?オレは外で待ってる必要ある?」
「今は検査結果の説明中だから、全然大丈夫よ~。葵ちゃんは君の小隊に入るんだし、結論は後で伝えるから、聞きに来てくれてもいいわ」
「そうなら安心しました。お邪魔します」
オレが椅子に腰を下ろすと、北条先生は説明を再開した。
「健康診断の詳細な数値は省くわね。何と言うか――」
その言葉で、葵は緊張で肩を縮こまらせ、膝の上で指を絡め合う。
「もしかして……うちが知らない間に病気とか……」
「いいえ、君の身体はとっても健康よ。むしろ覚醒した後で、持病は魔力の影響でほとんど治ってるから安心して。けれど――」
「けれど……?」
「変身前の葵ちゃん、君の身体能力は全部16歳女性の平均値と完全に一致。1ミリも誤差がないの。もしかして、君は魔法少女になる前から別の異能を持っていた?それとも、何らかの存在に影響を受けていた?」
「え、そうなんですか!?うちは普通の高校生だから、特別なことは何も……そんな異能なんて持ってないはず、です」
葵は慌てて首をフルフルと振り、制服の裾を強く握りしめる。
「あ、そう?偶然かもしれませんが、なら続ける。健康状態と身体能力は問題なし。変身後の魔力消費も正常範囲内。そして、戦闘テストの結果――」
北条先生はタブレットを操作しながら、しばらく内容を確認する。
「変身したデフォルト状態は『魔法少女モード』と呼ぶわね。遠近両用でバランスのいいモード。推測のプロトタイプは魔物対策局が作ったアニメ『ラブリー♡ハート』の主人公。次に『スナイパーモード』。遠距離狙撃が優秀で、近距離もCQCで戦える。プロトタイプはPCサバイバルホラー『ギャラクシー・テラー』の主人公。それ以外にも別の変身モードが使えると推測されるわ」
そこまではオレたちもわかっている内容だ。
「最も重要なのは原作と同じ戦闘経験がシンクロ出きるね。一ヶ月の基礎訓練を受ければ、すぐに任務参加できるレベルよ」
その言葉を聞いた瞬間、葵の顔がぱっと輝いた。
目を大きく見開き、制服の裾を握っていた手が緩む。
「え?ほ、本当ですか!?」
「良かったですね、弓月さん」
オレも、魔法少女に憧れる少女の夢が叶う姿を見て、自然と笑みがこぼれた。
全ての検査が終わり、登録で最後に残されたのは――
「では、弓月葵。君の魔法少女名は何にする?」
「はい!うちは……」
こうして、新たな魔法少女が誕生した。
*
魔王城前の観光区。
オレと葵は並んで歩きながら、約束していた昼食を兼ねて散策する。
「ここはうちの夢じゃないみたいですね……」
「安心してくれ、弓月さん。これは現実だよ」
葵は新しく発行されたIDカードを両手で大切に持ち、指で何度も表面を撫でる。
そこには彼女の名前と、新しい魔法少女名、「魔法少女・ルカ」が刻まれている。
「葵でいいから、先輩」
「わかった。葵、これからよろしくね」
「……!なんか、変な感じ……ちょっと恥ずかしいです」
葵は頰を赤らめ、慌てて頭を少し横に逸らす。
制服の裾を指で摘まみ、照れ隠しのように軽く揺らす。
「そういえば、『ルカ』って名前に特別な意味があるの?」
「は、はい……笑わないでくれますか……?」
「約束する。絶対に笑わないよ」
「なら、言うね。これは……うちが小学生の時に書いてた物語の主人公の名前、です」
「そっか。大事な名前だね。教えてくれてありがとう」
「いいえいいえ、そんな……あ、あそこに先輩が言ってた魔王城饅頭が売ってますよ!食べましょう!あはは……」
「はいはい~。今日は葵にとってめでたい日だから、好きなだけ食べようね」
こうして、予定の用事が終わったオレたちは、中央区を食べ歩きしながらのんびり散策した。
*
同じ頃――
魔王城の影が落ちる魔物対策局本部の奥、機密会議室。
残桜は重いため息をつきながら、部屋に入った。
「はあ……まだこの会議室に入るって……憂鬱なの」
無人の円卓の席に腰を下ろし、巫女服の裾を優雅に整える、疲れた表情で天井を見上げる。




